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プレミア支配はただの金満に非ず。問われる「1強リーグ」の在り方

2019.06.26

喫茶店バル・フットボリスタ ~店主とゲストの蹴球談議~

毎号ワンテーマを掘り下げる月刊フットボリスタ。実は編集者の知りたいことを作りながら学んでいるという面もあるんです。そこで得たことをゲストと一緒に語り合うのが、喫茶店バル・フットボリスタ。お茶でも飲みながらざっくばらんに、時にシリアスに本音トーク。

今回のお題:月刊フットボリスタ2019年7月号
『18-19 欧州総括』

店主 :浅野賀一(フットボリスタ編集長)
ゲスト:川端暁彦

ヨーロッパで実感した「ボーダーレス」

川端「今回は僕がフランス、店長が日本という形の遠隔対談でお送りします。2人のスケジュールをにらめっこした結果として、日本は昼で、フランスは夜明け前というシチュエーションです(笑)。インターネットバンザイ」

浅野「便利な世の中になりましたね。もはやバル、英語で言うと『バー』の意味合いからはかけ離れているシチュエーションですが(笑)」

川端「いやいや、酒を片手にディスプレイに向かう、あるいはVRで繋がる。それこそ未来の『バル』の形になるのかもしれませんよ」

浅野「最近はオンライン飲み会とかもあるみたいだし、VR飲み会もそのうち現実的になるんでしょうね。それにしても欧州サッカーは閉幕しましたが、U-20W杯にUEFAネーションズリーグ、コパ・アメリカとオフシーズン感がまるでないですね」

川端「女子W杯もやってますしね。で、この流れで何が言いたいかというと、インターネットの登場も大きな影響を与えているボーダーレス化、グローバル化は現代社会を語る上でのキーワードですけれど、あらためてヨーロッパはその強烈な先進地帯だなと感じました。今回はポーランドでU-20W杯、フランスでトゥーロン国際大会を観て、途中でポルトガルでリスボン国際トーナメントに一回浮気しつつ、また準決勝からトゥーロン国際大会に戻ってきたという流れなんですが、本当に『国内旅行』ですからね」

浅野「パスポートチェックとかないからね。鉄道でも車でも、いつの間にか国境を越えちゃう」

川端「電話もポルトガルで買ったSIMカードを入れておくと普通に何の手続きもなしにフランスで使えますからね。あらためてそのイージーさたるや……、まあ、当然お金はかかって財布が燃えている点は強い気持ちで忘れた上で、ですが(笑)」

浅野「特にリスボンへ行ったのは、物好きとしか言いようがない(笑)。というか、何でリスボン国際トーナメントに行ったんですか? U-20W杯とトゥーロンだけで十分じゃない?(笑)」

川端「もちろん、ポルト派である奈良クラブGM林舞輝の打倒を考えた時、ポルト最大のライバルであるリスボンに行くしかないなと思ったからですよ」

浅野「林さんの留学先は確かにポルトだけど、彼の受けたモウリーニョ講座はリスボン大学が主催しているんですよ。そもそもモウリーニョもリスボン大学出身ですしね」

川端「俺の旅の前提がいきなり壊れている……。いやまあ、実際はU-20W杯のラウンド16敗退を受けての傷心旅行ですよ(笑)。もっと上まで行けるチームだったと今さらでも思いますが」

浅野「U-20かあ……。敗れたラウンド16の韓国戦は完全に勝てたゲームだっただけに、なおさら悔しいよね」

川端「まあ、振り返るとそれが良くなかった気はします。『勝てる感』が変な余裕の持ち方を生んでいたというか。それが攻撃にも出ていたし、失点シーンも別に油断したわけじゃないですけど、慎重さを欠いていたのは間違いないので。終わった後に齊藤未月も言ってましたけど、まあサッカーってこういうスポーツだよな、という」

浅野「しかし、韓国のその後の躍進と準優勝という結末を考えるとなおさら悔しい」

川端「実のところ、負けた瞬間から『その後』もイメージできちゃったんですよね。俺らと同時にフランスもこけていたので。フランスめっちゃ強かったんですけど、やはり短期決戦は何でも起こり得る」

日本は惜しくもベスト16敗退となったU-20W杯はウクライナの初優勝で幕を閉じた

浅野「そもそも、リスボンってどんなチームが出てる大会なの?」

川端「リスボン国際トーナメントに出ていたのは2年後のU-20W杯を目指すU-18日本代表チームです。ポルトガルとノルウェーとアメリカのU-18代表の4カ国対抗戦だったんですが、アメリカがドタキャンしやがったので3カ国対抗戦になってました(笑)。僕が観に行ったのは地元のU-18ポルトガル代表との対戦ですね。結果、レナト・サンチェスの従弟にめっちゃやられて、0-3の大敗でしたが……。あの子は遠からず表舞台に出てきますよ。素晴らしかった」

浅野「傷心旅行で傷に塩を塗られたわけですね。そんなに差があったんだ」

川端「いや、そこまで絶望的な差はないんですよ。試合内容的にも。ただ、『ゴール』周りのクオリティがやっぱり違う。あとは国際試合の経験値の差はどうしてもありますよね。日本は今回の遠征で初めてパスポートを取った選手とかも試合に出ているんですよ。単に初招集というだけでなく、海外勢と試合をやるのも初めて、という」

浅野「ああ、そういう差はデカいね」

川端「これとヨーロッパの現状とのギャップって凄まじいな、と。街を歩いていても本当に人種的な多様性がありますし、彼らは日常的に『国際試合』を重ねています。リアルな国際試合と国内での実質的な国際試合。日本も人種的な多様性は少しずつ出てきていますから、そういう意味では少しマシになったかもしれませんが、欧州の加速ぶりと比べれば」

浅野「まだまだ、だね」

川端「で、こういう話が今号のフットボリスタの欧州総括の巻頭座談会の内容にも繋がってくると思うわけですよ」

浅野「そう来たか(笑)」

「伝統」と「競争力」の二律背反

川端「プレミアリーグ勢がCLとELのファイナリストを独占した、と。その結果自体は『たまたま』の要素も大きいという結論だけれど、経済的な力でイングランド勢が完全に抜きん出ているのは間違いないですよね」

浅野「プレミアリーグの経済的優位は最近加速する一方だったけど、『その割には勝てない』と揶揄されていた部分もありました。その流れがいよいよ変わってきたなと。まあ、そのプレミアリーグでナンバー1の売上高を誇るマンチェスター・ユナイテッドが低迷しているのは皮肉ですが」

川端「ユナイテッドのことはいったん忘れましょう(笑)。やっぱり、プレミア勢が勝てるようになった理由として大きいのは、外国人監督の積極登用ですよね」

浅野「確かにそうだろうね」

川端「それもやっぱりボーダーレス化の流れを抜きには言えないと思うんですよ。90年代のイングランドで、これだけ外国人監督が幅を利かせるなんてあり得ない。やっぱりヨーロッパの国境がふにゃける中で、心理面での違和感がなくなったのも大きいと思うんです。経済的な理由だけじゃない」

CL決勝を戦ったリバプールのクロップ監督(ドイツ/左上)とトッテナムのポチェッティーノ監督(アルゼンチン/右上)、EL決勝を戦ったチェルシーのサッリ監督(イタリア/左下)とアーセナルのエメリ監督(スペイン/右下)

浅野「昔のイングランドなんて軒並み中盤フラットな[4-4-2]で、ひたすらガツガツやる均質なサッカーだったじゃないですか。それが今や明らかに戦術的にも最先端になりました」

川端「そして、それをこなしている選手もほとんどがイングランド人ではなくなった、という(笑)」

浅野「あと俺が今回感じたのはコンペティションの在り方が変化した影響なんだよね。セリエAのユベントスなんてシーズン折り返し地点前に実質優勝が見えてしまっていた。パリSGもそう」

川端「今季は自滅しかけていましたけど、ドイツのバイエルンもいつもはそうですよね」

浅野「こうしたチームって、少し前まではリーグで消耗せずにCLに集中できるメリットもあったと思います。ただ、やはり『どこが勝つかわからない』というコンペティション、同じくらいの実力を持ったチームがしのぎを削ることによって競技力が向上するという面は見逃せない」

川端「CLにおけるイングランド勢の『敗因』として語られてきた部分ですけど、長い目で見れば同じくらいの実力のチームがしのぎを削っている国のチームの方が強くなっていくということですよね。プレミアリーグはもうまさに日常が『国際試合』になっていて、しかもレベルが拮抗している。これで成長しないはずがない」

浅野「まさにそう。あとコンペティションとしての価値が、明らかにプレミアリーグだけ突出して高くなっている。それは外資が入っている金満リーグとしてだけでなく、その結果起きている現象によってです」

川端「それは間違いなく競っているリーグだからこそですね。だから世界中から投資も集まって、よりリーグとしての資金力で他と差がつくという好循環になっている。リーグとして、エンターテインメントとして面白いから」

浅野「今回のシティとリバプールの優勝争いも素晴らしかったですしね。俺は本誌の分担ではセリエAの担当なんですが、正直言うと、最後はいちサッカーファンとしてプレミアを観ていました(笑)」

ストップ・ザ・プレミア、2つの不安要素

川端「ただ、そんなプレミアリーグの1強状態を終わらせる可能性があるのって、2つあると思っているんですよ」

浅野「ほう。何でしょう?」

川端「1つは、もちろんイギリスのEU離脱ですよね。プレミアリーグを『プレミア』な存在にしているボーダーレスの体制が終わった場合、どうするんや、という」

浅野「そこまで変わるかな?」

川端「EU圏内の国籍を持つ選手を『外国人』にできなくなった法的根拠がなくなるわけで、そこだけでも変わりますよね。これは『外国人だらけ』というイングランドの現状の競技力の基盤を揺るがすでしょうし、同じく『外国人だらけ』のオーナーたちの投資としてのメリットが削られますよね」

浅野「いや、外国人枠の復活はないんじゃないかな。もはや国内リーグだけで完結していない時代なので、クラブの国際的競争力を確保する意味でも現行のルールを踏襲するんじゃないかな。同じ島国のJリーグだって大きな流れでは撤廃する方向でしょ?」

川端「どうですかね。実際にEU離脱となれば、排外的な思想や文化が徐々に強まっていくと思うんです。EU離脱自体がそういう流れの中にあると思いますし、イングランド人の指導者に話を聞くと必ずそういう話になる。U-17とU-20で世界一になって自信もあるわけで、そういう話はずっとくすぶっていますから。『どうして自国の選手にチャンスがないのか?』と」

浅野「確かにU-17W杯、U-20W杯で優勝した若手有望株が、プレミアだと出られなくてドイツに行ったりしていますからね。そこのストレスは現場にあるでしょうね。結果が出ているから、なおさらか」

川端「単純に現在のビッグクラブのオーナーたちの思惑だけで言えば当然店長の言う通り『外国人だらけ』を維持する方向性なんですが、サポーターや国まで含めて考えていく時に、じゃあどうなんだろう、と。そもそも英国の経済自体がEU離脱でダメージ受けて国としての経済力が落ちるのでは?というのもありますし」

浅野「それはわかる」

川端「『結局、喜んでるのは金満外国人オーナーじゃん』という感覚はくすぶっている気がします。グローバル化という大きな流れは、それに対する反発心も育ててきたわけで」

浅野「もう1つは?」

川端「今回の巻頭特集でも出ていた『欧州スーパーリーグ構想』ですね。あれが本格的に実現すれば、プレミアリーグは『プレミア』じゃなくなります」

浅野「あれが実現すれば、プレミアリーグだけでなく欧州各国のローカルリーグすべてが国際的な価値としては終わりますね」

川端「高円宮杯プレミアリーグの創設が、強豪校にとってのローカル大会の存在意義を希薄にさせたようなものです」

浅野「例がわかりにくい(笑)」

川端「各国のビッグクラブを集めての新たなリーグ戦。かねてから構想だけあったこの話がいよいよ現実化しつつある」

浅野「まさにボーダーレスになった欧州を象徴する話ではあります」

川端「欧州スーパーリーグの方は、ヨーロッパの『ほどほどのビッグクラブ』にとってみると、もしかするとCL以上のトンデモないビッグチャンスかもしれないですよね。アヤックスとか『オランダ』という国の枠組みにこだわる限り、メガクラブにはなれそうにない。でも『欧州』をステージとすると、すごい可能性もあるかもしれません」

浅野「トップクラブを囲い込むならアメリカンスポーツ型のクローズドなコンペティションになると思うので、今のプレミアのように利益もある程度公平に分配されるのかなと思います。そうなると、育成メソッドに優れるアヤックスのようなクラブにもチャンスが生まれる可能性もある。まあ、アヤックスが参加できるのかは知りませんが」

川端「それですよね(笑)」

浅野「逆に言えば、今の仕組みでは今季のベスト4のチームがアヤックスのマックスなのも確かです」

CL決勝ラウンドでレアル・マドリー、ユベントスを下しベスト4まで上り詰めるとともにリーグ優勝も果たしたアヤックス

川端「降格のない『名誉クラブ』とそうじゃなくて昇降格のある『その他クラブ』が混ざる感じになりそうだとかいう話もありますよね。もうその時点でスポーツとしてどうなんだそれ、という感じですが。完全クローズドにしないからむしろセーフというロジックなんでしょうけど」

浅野「先行者利益の塊という感じですよね。ただし、今のトップ層はより儲ける方法として可能性を感じているけど、既得権益を捨ててまでは参加したくない。こっちに混ぜてほしければ、『その他』は妥協しろというスタンスですよね」

川端「『バルセロナ』とか『リバプール』とかのブランド力あってこそ欧州スーパーリーグの巨額利益だろ。なんで中小クラブにも平等に分配するんやという論理」

浅野「そういうこと」

川端「『経営』をベースに考えると、結果のまったく見えない『カップ戦』で大きく利益が左右されるのって恐怖でしかないですからね」

浅野「そもそも中小クラブは参加できないようにするでしょうね。アヤックス、ベンフィカのCL16強クラスがギリギリどうかというところかな。ミランとかインテルとかは入りそうみたいだし」

川端「ミランとかユナイテッドみたいな競技面で失敗しまくっているけど、ブランド力はあるというクラブにとっては救いですね」

浅野「まあ、ファン目線で見れば毎週マンチェスター・シティ対バルセロナみたいなカードばかり見られるんだから、そりゃあ魅力的だよねとは思う」

川端「さっきのコンペティションの理屈で言えば、どこが勝つかわからないからこそ魅力的だし、競技レベルの向上も見込める、と。そこに参加し続けているクラブや選手はさらに突き抜けたレベルまで到達しちゃうのかもしれない」

浅野「そうそう。やってみないとわからない部分も大きいけど」

川端「ただ、毎日ステーキじゃあ、どんな高級でも飽きる」

浅野「その懸念もある」

川端「ジャイアントキリングだって、間違いなくサッカーの大きな魅力だし。でもまあ、避けられない方向性なんでしょうね、もはや」

浅野「近年のCLグループステージの魅力低下、決勝ラウンド以降の白熱度との落差を考えると……ですよね。格差が開き過ぎていて、ジャイアントキリングも起きようがなくなっている。リバプールなんてシーズン1敗で2位、シティも最後は14連勝でしたからね」

川端「リーグ戦で勝つことを最大目的にしなくなるクラブが増える現象ともリンクしますよね」

浅野「そう、極端なまでの格差拡大は、選手の価値を上げ下げすることに血眼になる極めて投機的な移籍マーケットにも繋がっていると思います」

川端「勝利を目指してコツコツ頑張るより、若手をガンガン使ってお金持ちクラブにお買い上げしてもらう方がはるかに儲かる」

浅野「今季のユーベについて『スクデット争いは終わっていない。なぜなら始まってすらいないからだ』という皮肉があったよね。正直やる前から勝負が決していて、『もう試合しなくていいんじゃない?』という究極の疑問すら出てきたくらい」

川端「ただ、ビッグクラブの目が欧州スーパーリーグなり、スーパーCLなりに向くとなると、いよいよ国内リーグのコンペティションとしての魅力が『?』ですよね」

浅野「スーパーCLが実現するとしたら2024年だけど、激動はまだまだ続きそうですね。それまではプレミア支配の傾向は続くと思うし、ローカルリーグで華やかさを保てるのはプレミアくらいになるのかもしれない」

川端「現行で有力な構想はあくまでスーパーCLですか?」

浅野「まったく別リーグを立ち上げる欧州スーパーリーグではなく、現行のCLを拡大するスーパーCLが有力ですね。例えばバルセロナがリーガから完全脱退するのではなく、スーパーCLとリーガの両方に参加するという形式。完全脱退したらFIFAやUEFAから損害賠償を請求されたり、所属選手がW杯出場権を失うリスクもありますからね。さすがに現実的ではないかなと。ただ、スーパーCLも金持ちクラブ限定のリーグ戦方式になる、という大枠は一緒です」

川端「となると、プレミアはトップ6を中心に競争力を保てるのかな」

浅野「プレミアは大丈夫でしょうね。ぎりで、レアルとバルサがいるリーガもなんとか……かな」

川端「でも、そっちにBチーム出す感じになるのでは。1試合も手を抜けない欧州スーパーCLが毎週組まれるとしたら」

浅野「おそらく現実的にはそんな感じになると思いますが、それはCLが佳境になれば今も似たような感じですからね(笑)」

川端「将来的には週末に欧州リーグ、ミッドウィークに国内リーグという組み方になる可能性もあるんでしょうね」

浅野「そこはまだわからない。ただそうなると、本当にローカルリーグの価値低下は避けられないね」

久保建英のレアル・マドリー移籍の難しさ

川端「個人的には、2024年に誕生するというそのスペシャルなリーグで戦える日本人選手が出て来てほしいというのもあります」

浅野「日本人がその怪物リーグでやるには、18、19で欧州に行くしかないのでは……。まさに堂安律や久保建英のケースがそうですが」

川端「この夏からオランダのAZへ渡る18歳の菅原由勢もそうですね。あるいは、リスボン国際トーナメントに出ていたベンフィカの小久保怜央ブライアンみたいに、『高卒即欧州組』も増えるのかな」

浅野「まあ、何にしてもその変化に対応していくしかないですね」

川端「久保のレアル・マドリー行きも決まりましたが、予想される欧州のさらなるレベルアップについていける選手が出てきてほしいし、そこ目指して育てないとダメですね」

浅野「久保のレアル・マドリー入りは快挙ですが、やっぱりまだ先物買いだとは思うんです。例えば堂安がアヤックスに移籍してレギュラーとして活躍すれば市場価値は堂安の方がはるかに高いわけです。おそらく40~50億の価値になる。レアル・マドリー・カスティージャではその価値は出ないし、これからの活躍とクラブ選択次第でしょうね」

コパ・アメリカ開幕直前の6月14日、久保建英のレアル・マドリー移籍が発表された。1年目はBチーム相当のカスティージャでプレーする

川端「久保がまず狙うべきはフェデリコ・バルベルデのコースですかね。ウルグアイ代表の」

浅野「バルベルデはデポルティーボにレンタルだっけ」

川端「1年目はカスティージャで経験を積んで、2年目にデポルティーボへレンタル、3年目はトップチームという流れかと」

浅野「なるほど。まだ18歳だし、それでいいのかもしれない。若さはアドバンテージだよ」

川端「そう、焦る必要は別にないので」

浅野「期待過剰な周りの声に惑わされないでほしいね」

川端「まあ、そういうタイプじゃないですよ、彼は」

浅野「そういう意味でも欧州で成功できるポテンシャルは十分あるな。ただ実際、このクラスの選手でもクラブの選択は難しいよね。U-17W杯でMVPになったシティのフィル・フォデンとかもスーパーな選手だけれど、シティでは出られない。サンチョみたいに外へ出ることも選択肢だけど、じゃあどこに行くべきか?」

川端「間違いなく難しい」

浅野「実際、バルサの有望なカンテラーノもそこでつまずく選手が多かったからね。久保だってトップチームで出るとしたらエデン・アザールがライバルになるわけで、これは世界中のどんなタレントにとってもキツいハードル(笑)。というか、この世代のナンバー1候補のフォデンでも厳しい」

「久保世代でナンバー1候補」と評されるマンチェスター・シティMFフィル・フォデン。18-19シーズンはリーグ戦13試合に出場し1ゴールを記録している

川端「スーパーCLになればさらに有力選手が集中するだろうから、若手の育て方も、若手側のクラブ選びもより難しくなりますね」

浅野「難しい。さっきも話に出たけど、U-17とU-20を制したイングランド代表の俊英たちが軒並み出口で行き詰まっているから。オドイとかどうするんだろう?」

川端「彼も本当に化け物でしたけどね。個人的には引退間近の選手より彼みたいなのにJリーグ来てほしいんですが(笑)」

浅野「Jリーグはキャリアの踊り場に差しかかっている若手を狙っても面白い。そいつを活躍させて価値を上げて売り直すとか」

川端「『売り直す』発想は間違いなくJリーグにはないですね。『売る』発想すら乏しいのが現状ですから。結論としてはグローバル化の最前線たる欧州やっぱり恐るべし、と(笑)」

浅野「単純に競技力だけを考えれば、グローバルで人種もミックスされて、なおかつ同じレベルの相手で競い合う方が強くなるのは間違いないなと。もちろん、金が回っていることが大前提ですが。プレミア勢の強さはまさにそうですよね」

川端「そして、それをさらに加速させるスーパーCL構想がいよいよ現実味を帯びてきた」

浅野「間違いなく競技力アップにも寄与すると思います。ただ、ブレグジット(イギリスのEU離脱)という選択がまさにそうですが、ビジネス化が行き過ぎると誰もが平等に参加できるはずのサッカーというスポーツを変えてしまうかもしれないし、そこに反発を抱く人は多いでしょうね。そのせめぎ合いはしばらく続くと思います」

川端「日本も人種的多様性はかなり出てきていると思いますし、おそらくこれからもっと加速すると思うんですよ。実質的な移民政策も本格化しそうな流れですからね。アジアではおそらくASEANがEU的な方向性を加速させるでしょうから、彼らの存在感はもっと大きくなっていくはず。いずれにしても変化に適応していくしかない」

浅野「サッカーはいろんな意味で世相を見ることができますね」

川端「ただ、こういう展望は10年後に笑われている可能性も大いにある」

浅野「何にせよ、欧州の変化はしっかり追い続けていくしかない」

川端「そして、それに対応する術策を日本サッカーも意識しておく必要があると思います」

浅野「そうですね。今回はありがとうございました!」

●バル・フットボリスタ過去記事

Photos: Getty Images

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Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。