REGULAR

ゲームモデルサッカーのお披露目 W杯で見える「世界の壁」の正体

2018.06.16

喫茶店バル・フットボリスタ ~店主とゲストの蹴球談議~


毎号ワンテーマを掘り下げる月刊フットボリスタ。実は編集者の知りたいことを作りながら学んでいるという面もあるんです。そこで得たことをゲストと一緒に語り合うのが、喫茶店バル・フットボリスタ。お茶でも飲みながらざっくばらんに、時にシリアスに本音トーク。

今回のお題:月刊フットボリスタ2018年7月号
「W杯開幕直前。32カ国の最終決断

店主 :浅野賀一(フットボリスタ編集長)
ゲスト:川端暁彦

ハリルに続き、ロペテギも…「ボリスタの呪い」?

川端「いやあ、W杯も開幕ですね。なんかこのタイミングで監督を代えてきたチームもあったみたいですが(笑)」


浅野
「巷では『ボリスタの呪い』と言われているようですが、優勝候補の本命として表紙に抜擢したスペインのロペテギ監督がW杯開幕前日に解任されるという衝撃の展開。『開幕直前の緊急決断』というコピーを掲げてセンターにロペテギが陣取る表紙が趣深いことになってしまいました」


川端
「ロペテギさんを表紙にする決断というのもなかなか凄いなと思っていたんですが、それが解任されてしまうという編集長の持ってる感。まあでも、これはさすがに予測できない(笑)。ハリルホジッチさんが解任された時の比じゃない唐突感でしたね」


浅野
「ハリルホジッチの2カ月前解任も凄かったですが、『さすが世界は広いな!』と。上には上がいる(笑)。しかもB組だから初戦の2日前で、その試合がポルトガルとの決戦という(笑)。『スペイン代表の48時間』という映画が作れそうですね」


川端
「後任がレアル・マドリーのレジェンドであるフェルナンド・イエロSDというのがまた映画向き(笑)。監督任免に関する権限を持つダイレクターが後任監督というのはどこかの国でもありましたけれど、『時間がないので』という理由は、開幕1日前だと同じ理由でも説得力が違う(笑)。本誌のスペイン代表に関する記事も皮肉になってしまった」

急きょスペイン代表の指揮を執ることになったフェルナンド・イエロ


浅野
「『日本代表とは違い、スペインはロペテギ監督の契約を延長して雑音をシャットアウト。本大会に集中して臨める』みたいなことを書いたら、まさかその契約延長がとんでもない爆弾になるとは……」


川端
「この流れを仕組んだ代理人は、またしてもメンデスさんだそうですが、裏側のドロドロした部分は知りたいような、知って幻滅したくないような複雑な気持ちです」


浅野
「レアル・マドリーがあのタイミングで発表したのは、ちょっと謎だよね。国を代表するクラブが代表の足を引っ張るという」


川端
「しかしまあ、『バルサにいなくてもバルサを代弁する男』シャビも発言していましたが、今回はロペテギ側が悪いですね。レアルの次期監督が代表監督となれば、非レアルの選手たちはやりづら過ぎでしょう。例えばレアルの選手がスタメンに指名されて自分がベンチという時があったとして、ある種の想像をしないでいられる選手がいるかどうか。まあ、無理ですわ(笑)」


浅野
「しかも代理人はメンデスなので、余計に複雑。『メンデスの顧客になっている選手が重視されるのでは』と選手たちが疑心暗鬼になってしまったモウリーニョ時代のマドリーと同じ状況になりかねない。それでも主力選手たちはロペテギの留任を進言したらしいです」


川端
「でも逆の報道も出てますよね。どっちの立場の選手かにもよるんでしょう」


浅野
「当然そうでしょうね。これでロペテギは無敗で解雇された伝説の監督になったわけですが、非常に強力だったスペインの優勝の目はこれでなくなりましたね」


川端
「事前に無敗街道を歩んで、本大会ではいいところなくこけたら、これはまさに『無敵艦隊』時代と同じでは(笑)。ボリスタの予想大会では16名による予想で『優勝2、準優勝5』というブラジル、ドイツに次ぐ本命候補でしたが、みんな予想大会やり直したくなっていることでしょう(笑)」


浅野
「川端さんはスペインの評価が低い珍しい人でした。ベスト8敗退の心は?」


川端
「まあ、俺だけじゃないですか。ロペテギ解任を読み切っていたのは」


浅野
「嘘つけよ!」


川端
「いや、僕はtkqさんやさる☆グーナーさんも参加するなら、ネタ枠として負けられない、月並みな予想はしてはいけないだろうというある種の使命感があって(笑)。いくつか意外性の要素をまぶしています」


浅野
「イラン躍進を予想していて『ないだろ(笑)』と思っていたけど、俄然現実味を帯びてきた(イランはスペインとポルトガルと同組)」


川端
「W杯でサプライズのなかった大会はないですからね。今大会も俺の予想したクロアチア4強進出とかロシアの勝ち残りが現実化するかは別にして(笑)、『お前かよ』というチームが勝ち残るかもしれないですよ。まだ監督を解任していないサウジアラビアとか……いや、それはないな(笑)(※この対談は開幕戦の前に行われました)。まあでも、イランは良いチームよ(笑)。サウジとは違う」


浅野
「俺もそう思っていて、結城康平さんにオランダリーグ得点王のジャハンバクシュの原稿を書いてもらったんだけど、『マハダビキア二世』の肩書が編集部の若い奴に響かなくて残念だった」


川端
「マハダビキア、知らないだろうなあ」


浅野
「俺の中では伝説のウイングなんだけど、イランは才能に見合ったキャリアが築けない選手が多くてもったいない」

日本代表を苦しめたメフディ・マハダビキア。イラン代表として110試合13ゴールを記録。クラブレベルではボーフム、ハンブルク、フランクフルトとブンデスリーガで10年以上にわたり活躍し、ハンブルクとフランクフルトでは元日本代表FW高原直泰ともプレー。イラン人選手として欧州で最も活躍した選手の一人だ


川端
「それにしても、予想大会でガッカリしたのはtkqですよ! 何が『優勝はドイツ(キリッ)』だよ、と。お前はラストに置かれてるんだから、完全に『落ち担当』だろ!と、今度会ったら問い詰めたいですね。『主要国がプーチンへの反発でボイコット。まさかのロシアに栄冠!』くらいはやってほしかった」


浅野
「そこはフットボリスタの色に忖度してくれたんじゃないですか。地味に当てにきてましたよね(笑)」


川端
「そうそう、当てに来ていた。というか、みんな当てにきていたね(笑)。実際に予想をやってみてあらためてわかりましたが、決勝トーナメントの組み合わせは面白いことになると思います。うっかり2位抜けする主要国が出てくると『あれ?』ってことになりますよ、これ。俺のクロアチア予想もそういう前提ですからね」


浅野
「クロアチアの1位抜けはありそう。そうなると(同組の)アルゼンチンが苦しくなるね」


川端
「2位抜けすると初戦フランスが濃厚なんですよ、あのグループ。まあ、フランスがうっかり2位になる可能性もありますが(笑)。でもフランスもみんな上位予想でしたね。4強から外しているのはチヅルさんと神尾さんだけ」


浅野
「ブラジル、スペイン、ドイツの3強で、次にフランスという順番でしたね」


川端
「1位・ブラジル、2位・ドイツ、3位・スペイン、ちょっと離れて4位・フランスみたいな順番ですね。大体、みんなこの顔ぶれが4強というセーフティー予想(笑)。自分を含めてちょっと外した予想をしたい人も4つのうち3つはここになっているパターンが多い。で、5番手がポルトガル、6番手にアルゼンチンとウルグアイとコロンビアみたいな感じでしょうか。ベルギーが思っていたより推されなかった印象です」

「戦術パラダイムシフト」が代表チームにも波及


浅野
「俺の予想のところでも書いたけど、今大会のトレンドは『代表のクラブチーム化』だと思う。クラブシーンで起きている戦術パラダイムシフトが強豪国には浸透してきていて、ブラジル、スペイン、ドイツの上位3つは飛び抜けて強い。日本代表がウクライナやスイスと戦った試合でも感じたけど、『モダンサッカーvs10年前のサッカー』という構図は正直感じました。この差がデカくて、波乱が起きにくくなると思う」


川端
「選手の移籍が激しくなって流動化が進む中で、下手なクラブチームよりも代表チームの方が長い年月を共にしていたりもしますしね。国の強化として一本筋が通っていれば、戦術というか、サッカー観みたいな部分の熟成期間、共有期間も実は下手なクラブチームより長かったりすると思います。もちろん、下手じゃないクラブチームは別ですが。スペイン代表とかドイツ代表にはそういう色を感じますよね。ブラジル代表も昔から独特かつ強固な“共有感”がありますけれど、それが欧州化とぶつかる部分があったのが、育成年代も欧州化される中で、その蓄積によってついにハマった感じがあります」


浅野
「ドイツやベルギーの変化はまさにそれですよね。イングランドも『イングランドDNA』という国のゲームモデルを打ち出して、年代を横断した一体型の強化に取り組み始めていて、近い将来多くの代表チームのレベルは飛躍的に上がってくると思います。その一端が今大会で見られるのではないでしょうか。FAの公式サイトで普通に読めます」


川端
「イングランドは昔からDNAあるけどね。別の意味で(笑)」


浅野
「ネーミングセンスが凄いよね(笑)」


川端
「U-21トゥーロン国際大会でも結構強烈でしたよ、イングランドは。半分くらいが去年のU-20W杯優勝メンバーで、そこにA代表だった選手とかが加わっているので当然なんですが。あと世界はやっぱり『両輪』を求めてるなというのもあらためて感じました」


浅野
「両輪というのは?」


川端
「トゥーロンのイングランドは結構愚直に後ろからビルドアップしていくチームで、別にそこまで特別にうまい感じはないんですよ。変化にも乏しい。でもパススピードが絶対的に速くて、正確。大男がビシビシ繋いで、中に当てつつ外に開いてそこから個人勝負というのが徹底されている。でもそこまでうまくないから、プレスに行けばいい気がするんだけど、そうすると蹴れる。もうシンプルに古式英国スタイルですよ。その強さは別に失っていないし、前線には速さ・強さのあるタレントがそろっているから普通に怖い。よって、前からやっぱり行けない。このジレンマに相手を陥れられる強さは、まさに“両輪”の賜物。日本は後ろからのビルドアップを重視するとそれ“だけ”になっちゃうところがあって、それは今のA代表にも感じますが、やっぱり“両輪”ないと戦えない、右の車輪が封じられたら左の車輪で蹂躙するようなチームが勝つ――という原稿をフットボリスタ向けに書きたいなと思っていました(笑)」


浅野
「次号でお願いします(笑)。だからこそ攻撃/攻→守の切り替え/守備/守→攻の切り替えの4局面のゲームモデルを定める、じゃないですか。要はどう攻めて、どうボールを失って、どう守って、どうボールを奪い返して、そこからどう攻めるのか。自分たちの強みと弱みを勘案して、どうその循環を回していくのか。それがピタッと定まれば日本は強くなると思います」


川端
「代表チームでそれが定まらないのも結局はタレントが足りないからという気もします。ネイマールがいるなら、それをどう使うかだし。そもそも日本のタレントが長所として持っている部分って、W杯レベルだとそこまでの“長所”じゃない現実もある」


浅野
「それは微調整の問題じゃない? 例えばグアルディオラはバルセロナではメッシの“偽9番”でウイングはサイドでDFラインのストッパーになる役目だったけど、バイエルンでは純正CFのレバンドフスキが中央でDFラインを引き付けて、サイドの1対1突破からのクロスで仕留める。シティでは高速ウイングの1対1突破を交えたグラウンダーのパスワーク中心の攻めです。でも、彼の大枠のゲームモデルは一定だと思います」


川端
「まさにそういうことで、レバンドフスキなりメッシなり、あるいはシティの高速ウイングなりといった部分から最終的な着地点が定まっていると思います。そういう着地点がないと、フワッとしちゃう。イングランドだったら、古式英国スタイルのところでは絶対に負けない自負や自信があってこそ、そこから勝つために何が足りない、何を足せばいいという逆算があって、ああいうモノが組み立てられると思うんですよね。ちなみに、大枠のフワッとした『日本らしいサッカー』とでもネーミングすべきゲームモデルは、実のところフワッとしていてちゃんと言語化されていないけど、フワッと共有はされていると思います。それは全年代で善くも悪くも。年代別日本代表のスタッフが言っていたんですが、米国代表とは各年代でよく対戦する機会がありますが、向こうのコーチから『日本は監督が代わっても常に同じゲームモデルで、同じようなサッカーを一貫して追求しているよね!』と言われる、と。『あれ? そんな一貫しているかな?』というのがこちらサイドの認識なんですが、でも『日本のサッカー』って特に意識しなくても、何となく一緒になっているんですよね。ちゃんと決めるまでもなく“空気”で何となくそうなっているあたりは、まさに日本らしさですが」


浅野
「香川と乾のコンビネーションが典型だけど、CFの大迫や岡崎がDFラインを固定して、香川や乾なりのタイプがハーフスペースで連係してバイタルエリアを攻略してミドルシュートなり、スルーパス、ワンツーで突破というのが自然な着地点なんじゃないかな。あとはそれのみだと読まれるので、サイド突破からの横からのペナルティエリア侵入を交えるとか。そこから逆算して、密集を利用した反転のゲーゲンプレッシング、リトリートした際は4+4のブロック、みたいなものをきちんと言語化するだけでだいぶ違うと思う。今は何となくそうなっているだけなので」


川端
「そういうのは普通にやるんじゃないかな。基本リトリート時は[4-4-2]のブロックみたいですし。たぶん西野さんがホントにやりたかったのは[3-4-2-1]なのだろうけれど、主軸選手を納得させられなかったんでしょうね。あと青山敏弘が合流できなかったのは痛かった。おそらく今野もだけど」


浅野
「俺は明確にゲームモデルを言語化して設定しているのかに疑問を持っていて、選手の特徴から自然と似てきていて、あとは現場判断でアジャストさせているのではないかなと。ただ、それだと相手に応じた戦術のアジャストが難しくなる」


川端
「そうそう、相手や状況の変化に対応できなくなってしまうのが我らの弱点でもありますね」


浅野
林舞輝さんの『考えないサッカー』をテーマにしたインタビューでも出てきた話で、ハーフスペースにゴールを2つ置くトレーニングの話があって『2つのゴールを守れ』というルール設定で、選手が勝手に(ゲームモデル的に)正しいポジショニングを取るという話です。そういうゲームモデルを実現させるためのシチュエーションをたくさん発見してトレーニングを通して刷り込むのが今後の監督に求められる役割で、そうすると選手は無意識レベルで判断できるようになる、と」


川端
「それはまさに昨年のU-20日本代表を率いた内山篤監督もやっていましたよ。ハーフスペースゴールでの練習。あのチームの失点が驚異的に少なかったのはそういう部分をちゃんとやっていたからというのもあると思います。個人的な見解ですが、みんな内山さんの試合中のアクティビティに引っ張られて、あのチームを正面から評価できていない人が多いんじゃないかと思います(笑)。あと、西野さんやハリルホジッチさんに対してもそうなのだけど、何でもかんでも代表監督のせいにするのは間違い」


浅野
「代表監督は最後のアウトプットを担当する人に過ぎないからね」


川端
「その国のサッカーのアベレージが自然と反映されるものだからね。ちなみに内山さんはゲームモデルという言葉は使っていないけれど、よく強調していた“攻守の共有感”は、まさにそういう話ですね」


浅野
「ちなみに俺は内山さんのチームは凄く良かったと思っているよ。実際、U-20W杯でもトップレベルの相手にも渡り合えていた。この前、相良浩平さん(スパルタ・ロッテルダムのフィジオセラピスト)に教えてもらったストレングストレーニング(筋トレ)の最新トレンドの話もそれに通じていて、例えばバーベルを持ち上げる時、膝が内側に曲がる癖があると。そこで『膝を曲げるな』と言うのが今までのやり方で、それだと選手の意識が体に向いてサッカーに向かないから意味がないと。『じゃあ片足だけ台の上に置いてやらそう』とコーチが弱点を改善できるシチュエーションを用意すると、無意識に体の動きが改善される。無意識化にアプローチするのが分野に関わらずトレーニングの向かう方向性と言えそうです」


川端
「オシムのトレーニングとかはまさにそういう方向性ですよね」


浅野
「そうですね、今考えると」


川端
「ただ、それは当たり前の話でもあります。今日見てきた森山さんのU-16日本代表でのトレーニングもそういうルール付けでした。3対3の後方からのビルドアップvsプレッシング(切り替えあり)で、組み立てはワンタッチを3回繋いでから前に運ぶ約束事を作っているんだけど、そうすると繋ぐことだけに汲々としちゃうし、守備側も相手が繋ぐと分かり切っている状態で追うことになっちゃうから、『裏に一発で蹴って繋ぐのはあり』というルールを一個だけ入れておく。そうすると、後方からの繋ぎとそれを阻止する練習なんだけど、“縦一本”の選択肢も無意識に残っていて両方をトレーニングできて、ありがちな“繋ぐだけ”に陥られないようにもなる、という」


浅野
「なるほど、面白いですね! 戦術トレーニングも完全にその方向性で、もはやトップレベルの選手は考えてなくて無意識にアジャストできるようになってきていると感じることがあります」


川端
「トレーニングのメニューとかそういう部分は日本の指導者も普通にやっているところなんで、だから単純に“そこ”じゃないと思っています」

相手のやりたいことを忖度せよ!


浅野
「問題はそうしたトレーニングのディテールが全体設計(ゲームモデル)から逆算されて組み立てられているかですが、そこはもう内部の人しかわからない領域ですからね。いずれにしてもW杯を見る際は、この国はどういうゲームモデルでサッカーをしているのかを見ると、違った楽しみ方ができるかもしれません。特に欧州の国は今大会でそれをはっきり打ち出してくると思います」


川端
「同時に『相手が何をしようとしているのか』を考えてサッカーをしましょうという話でもあるよね。相手のやりたいことを忖度せよ!ということですね。自分たちのやりたいことを忖度してもらうのではなく!」


浅野
「それが第一段階で、最終的には無意識レベルでそれができるのが理想なんだろうね。ブラジル人を見ているとそう感じます。逆にあの人たちは敵を置かない11対0のトレーニングだと何をやっていいか困るそうですから」


川端
「ドリルトレーニングとか本当に理解できないと、この前マリーニョさんも言っていたわ。『試合した方がサッカーうまくなるよ』と(笑)。相手のいないトレーニングで巧くなるはずがない、という。ただ、逆にベルギーは個人のスキルトレーニングの部分に時間を割かせて一定の成果を出しているので、好きなことや今までやっていたことじゃなくて、もっと苦手なものにトライしていきましょうねという話なのかもしれないけれど」


浅野
「それではあらためて、川端さんの考える今大会の見どころは?」


川端
「僕は若者の躍動が楽しみです。若い選手が欧州トップリーグで起用されるようになっているじゃない。彼ら“経験豊富な若手”がどれだけのものを見せてくれるか楽しみですね。この前、数えたんだけど、たしか32カ国中21カ国にU-21の東京五輪世代の選手がいるからね。しかもレギュラークラスが相当数いる。それはきっと次のW杯、次の次のW杯にも繋がってくる。だから、ムバッペのケガが心配だ(笑)」

川端さんが見どころに挙げた“経験豊富な若手”の筆頭ムバッペ。パリ・サンジェルマンでも主力を張る19歳は優勝候補フランス代表の10番を背負い大舞台に臨む


浅野
「日本は……?」


川端
「23歳が最年少や。しかも第3GKや。レギュラーの最年少はたぶん今年26歳の選手や」


浅野
「も、もっと前向きな注目ポイントをお願いしますよ。暗くなっちゃうじゃないですか!」


川端
「賀一さんが勝手に暗くしたんでしょう!(笑)。しかし、今年30歳になる乾がまるで“新鋭”のように語られる国では、4年後を考えても厳しい。あらためて、『日本も育成にもっともっと投資しましょうよ』とは言っておきたいです」


浅野
「俺の注目はさっき言った欧州勢の戦術的な進化と、日本に関しては“素のジャパン”でぶつかってどうなるか。最後のパラグアイ戦でようやくW杯を戦うためのボーダーレベルには戻ってきたので、何とか頑張ってほしいです。期せずしてこの右往左往で煙幕を張る効果はあったと思うので。日本のスタメン予想できないからね」


川端
「西野さん自身はその直前交代のメリットをしっかり理解してやっている節があるので、そこには期待感ありますね。火事場のパワーを出せそうな選手を多く起用しそうです。W杯の雰囲気はやはり独特なので、経験値を持っている選手が多いのも強みなのも間違いない」


浅野
「戦う前に敗因を語るような“負け犬対談”になってしまいましたが、それは勝ってほしい気持ちの裏返しですからね! ナポリのファンが決して『スクデット』と口にしないのと同じメンタリティです(笑)」


川端
「『日本代表に勝ってほしい』という気持ちに関しては誰にも負けていないつもりですよ。W杯優勝を見て死ぬつもりですから」


浅野
「あと50年生きて見届けましょう!」


川端
「長生きしないとね。そうなると、俺には無理だから、もうちょっと早回ししないと(笑)」


浅野
「俺も50年は生きられないな(笑)。お互い健康に気をつけましょう。ありがとうございました!」


川端
「サッカーメディア界を代表する不健康コンビでお送りしました! 読者のみなさんもW杯での夜更かし睡眠不足はほどほどに! ありがとうございました!」

●バル・フットボリスタ過去記事

Photos: Getty Images

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Profile

川端 暁彦

1979年8月7日生まれ。大分県中津市出身。フリーライターとして取材活動を始め、2004年10月に創刊したサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の創刊事業に参画。創刊後は同紙の記者、編集者として活動し、2010年からは3年にわたって編集長を務めた。2013年8月からフリーランスとしての活動を再開。古巣『エル・ゴラッソ』を始め各種媒体にライターとして寄稿する他、フリーの編集者としての活動も行っている。著書に『Jの新人』(東邦出版)。