ユベントスにとっては、ポジティブではあったが悔いの残る試合だった。勝ったとはいえ、摘み取るべき果実の半分しか摘み取れずに終わったからだ。
ドルトムントの攻撃をほぼ完全に封じ切り、教科書通りの速攻から2点を奪ったところは狙い通り。しかし、キエッリーニが足を滑らせるという不運でアウェイゴールを献上した上に、完全にペースをつかんだ後半、3度の決定機を得ながら3点目を奪うことができず、2-1という微妙なスコアで敵地に乗り込むことになった。内容からすれば、2-0にせよ3-1にせよ、2点差をつけて勝っているべき試合だった。
ドルトムントのクロップ監督は、ユベントスの[4-3-1-2]に対して中盤で5対4の数的優位を保ちつつ、トップ下のビダルを2ラインの間で浮かせないようにするため、いつもの[4-2-3-1]ではなく、シャヒンをアンカーに置いた[4-3-3](実質[4-1-4-1])の布陣をピッチに送り出してきた。香川ではなくムヒタリャンが起用されたのも、中盤でのプレスを重視したからだろう。
立ち上がりは、10人をボールのラインより後ろに戻して相手のCBからSBへのパスコースを封じ、ピルロにボールが入ったところからプレスの圧力を上げて、中央高めのゾーンでボールを奪おうとするドルトムントのハイプレスがうまくはまって、ユベントスはビルドアップに苦しんだ。
しかし、そこで無理に主導権を取りに行こうとせず、逆にボールを渡して受けに回り、相手をおびき寄せての逆襲を狙う戦い方にスパっと切り替えるあたりが、ユベントスの成熟したしたたかさである。
13分の先制点は絵に描いたようなカウンター。自陣エリア内でボヌッチが前方にクリアしたボールをモラタが拾うと、テベスとのワンツーで裏に抜け出しドリブルで独走、左から折り返したクロスにバイデンフェラーが触れてこぼれたところを、中央に走り込んだテベスがDFと交錯しながら押し込んだ。
ところがそのわずか5分後、何でもない放り込みを処理しようとしたキエッリーニが足を滑らせるというアクシデントが起こる。そのこぼれ球をかっさらったロイスがそのまま抜け出し、ブッフォンとの1対1を冷静に決めてあっけなく同点に。ユーベにとっては痛過ぎるアウェイゴールである。
試合はその後、ドルトムントがボールを支配するが最後の30mではほとんど何もできず、とはいえユベントスも奪ったボールを自陣からなかなか持ち出せないままプレスの餌食になるという膠着した展開になった。
しかし、ユーベがプレスをかわしてうまく縦に展開した時には、ドルトムントの押し上げた最終ラインが簡単にばたついてその不安定さを露呈する。43分、2ライン間に引いてボヌッチから40mほどの縦パスを引き出したテベスが、左サイドを駆け上がるポグバに展開。そこからクロスを折り返すと、ゴール前ではモラタが誰にもマークされずどフリーになっていた。