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「9番」を背負う意味はゴールだけではない。甲府・三平和司が人気者の理由

2024.04.25

日本人9番の潜在能力 #3
三平和司(ヴァンフォーレ甲府) 

「9番」という背番号は、点取り屋=ストライカーという印象が強い。過去にフットボリスタでは「日本人ストライカー改造計画」と題した特集で世界に通用するストライカーとは何なのか?を考えてみたが、あれから4年が経ち、若手の海外移籍が加速する中で、今Jリーグの舞台で活躍する日本人9番の現状に注目してみた。現代サッカーを生き抜く多種多様な9番はどんなキャリアを過ごし、これからどこへ向かおうとしているのか――。

第3回は、大分トリニータなどを経てヴァンフォーレ甲府に加入後、天皇杯を制し、ACLでも印象的なプレーを見せた三平和司。36歳にしてなお一線で活躍するFWの凄さに迫る。

 大分トリニータでの在籍期間が長かったからという理由で、現在はヴァンフォーレ甲府に在籍している三平和司についての原稿依頼をいただいた。

 今季でプロ14シーズン目を迎えた三平は、神奈川大学在学中から2シーズンにわたって特別指定選手として帯同していた湘南ベルマーレで2010年にプロデビュー。期待の表れとして長期契約を結んでいたが、2011年から2シーズンは出場機会を求めて大分へと期限付き移籍した。2013年、京都サンガへと完全移籍して2シーズンを過ごすと、2015年には完全移籍でトリニータに再加入し、2020年限りで契約満了となるまで6シーズンにわたり主力として貢献。2021年からのヴァンフォーレでの活躍については、天皇杯優勝やACL決勝トーナメント進出などで注目度が高まったこともあり、多くの人がよく知っているはずだ。

キャリアハイの14得点は右WBとして

 確かにプロ生活14シーズン中8シーズンをトリニータで過ごしており、単純に取材している期間も長い。その間のことはずっと見てきたし、それ以前の話もときどき聞いたことがある。だが、ヴァンフォーレに移籍してから三平が何を考えながらプレーしているのかについては、担当チームを離れたこともあり、本人に直接は聞いたことがない。最初のシーズンは伊藤彰監督、2年目は吉田達磨監督、そして昨季からは篠田善之監督と3人3様の指揮官の下、それぞれのスタイルにおいてチームの中で求められることを、おそらくトリニータにいた頃のように自分なりに考えながらプレーしているのだろうなと思いながら遠くから見てきただけだ。

 特に依頼された特集テーマである「背番号9」については、しばらく考えた。

 トリニータでは最初に加入した2シーズンに「9」を背負ったものの、再加入した2015年からの背番号は「27」だ。ベルマーレでは「36」をつけており、確かに「27」も「36」も、「2+7」「3+6」で「9」になる数字ではあるが、そこにどれだけの意味があったのか、あるいは何もなかったのか、本音のところはよくわからない。

 近年では様々なタイプの9番が活躍しているが、元来、一般的に9番は「点取り屋」のイメージだった。三平のここまで14シーズンのうちゴール数のキャリアハイはトリニータ在籍時、2012年J2での14得点だ。前年にトリニータでテクニカルエリアデビューした田坂和昭監督により3バックシステムの右ウイングバックにコンバートされたストライカーは、その直線的なスピードと卓抜した空間認識能力によって、神奈川大の3学年先輩であった石神直哉とのホットラインでクロスやセットプレーから得点を量産するとチームを昇格争いに絡ませ続け、このシーズンから始まったJ1昇格プレーオフを制するまでの道を切り開いた。……

Profile

ひぐらしひなつ

大分県中津市生まれの大分を拠点とするサッカーライター。大分トリニータ公式コンテンツ「トリテン」などに執筆、エルゴラッソ大分担当。著書『大分から世界へ 大分トリニータユースの挑戦』『サッカーで一番大切な「あたりまえ」のこと』『監督の異常な愛情-または私は如何にしてこの稼業を・愛する・ようになったか』『救世主監督 片野坂知宏』『カタノサッカー・クロニクル』。最新刊は2023年3月『サッカー監督の決断と采配-傷だらけの名将たち-』。 note:https://note.com/windegg