FIFA Club World Cup UAE 2017 presented by Alibaba Cloud
世界最強クラブを決める季節の到来だ。今年の舞台は日本を離れ、2010年以来7年ぶりとなる中東のUAE。12月6日(水)~16日(土)の11日間にわたり、6大陸7つの王者が熱戦を繰り広げるFIFAクラブワールドカップ UAE 2017。レアル・マドリードの連覇はなるか? 浦和レッズやパチューカの本田圭佑ら“日本代表”の活躍は?など見どころはたくさんあるが、ここでは大本命レアル・マドリードに挑む対抗勢に注目。昨年大会で欧州王者を苦しめた鹿島アントラーズでは柴崎岳にスポットライトが当たったが、今大会ではどうか。連覇阻止のキーマンになり得る注目選手たちを紹介する。
文 池田敏明
■北中米カリブ海王者
パチューカ(メキシコ)
加入から打倒に変わった夢。キレの戻ったプレーで王者を脅かす
Keisuke HONDA
本田圭佑
1986.6.13(31歳)182cm/74kg JAPAN
本田圭佑にとって、もともとの夢はレアル・マドリードで10番をつけてプレーすることだった。その夢がほぼ潰えた今、次なる目標となるのは“打倒レアル・マドリード”。初戦でアフリカ王者ウィダード・カサブランカ、準決勝で南米王者グレミオを撃破しなければチャンスはめぐってこないが、実現すればこれ以上ない舞台が整うことになる。
イタリアのACミランからメキシコのパチューカへの移籍が決まったのは7月半ばだった。いきなり右ふくらはぎに負傷を抱えた状態で入り、現地への適応などからデビューは遅れたが、8月23日に行われたリーガMXのベラクルス戦で途中出場すると、いきなり鮮やかなゴールを決める。ハーフウェイラインから縦パスを受け、左足で右隅に突き刺した“ゴラッソ”はメキシコ中に衝撃を与えた。
もともとインサイドのポジションでの起用を希望していたとも伝えられる本田は前線の“偽9番”的なポジションや2トップ、[4-3-3]の右インサイドハーフなども経験した。だが結局は日本代表やミラン時代と同じ右サイドが定位置となり、そこから攻撃の起点や左利きでのゴールを決めるなど、コンビネーションを駆使して崩すスタイルの中で役割を確立。リーガMXで10試合3ゴール、コパMXでは6試合3ゴールで得点ランキング2位タイにつけている。
圧巻だったのはカップ戦準々決勝ティフアナ戦のゴール。60mをドリブルで独走し、最後はGKの頭上を抜くループシュートを決めたこのシーンは日本だけでなくヨーロッパのメディアでも大々的に報じられた。
日本代表ではアジア予選を突破して以降、10月、11月と招集されていないが、カップ戦での決勝に導く活躍など、パチューカの主力選手として地位を築き上げていることは良い状態で半年後を迎えるプロセスとしても理想的と言えるかもしれない。そうして迎えるFCWCは本田の存在を再び世界に知らしめる大きなチャンスだ。
体のキレを取り戻しつつあり、モチベーションも高い。何より大舞台で発揮する勝負強さは、我われが何度も目撃してきたものだ。パチューカが北中米カリブ海王者として初の決勝進出を果たすには、本田の力が不可欠となる。
お膳立ては俺に任せろ。ゴールを演出する韋駄天ドリブラー
Jonathan URRETAVISCAYA
ホナタン・ウレタビスカヤ
1990.3.19(27歳)172cm/66kg URUGUAY
2008年7月、ウルグアイのリーベルプレートから飛躍を期してポルトガルのベンフィカに移籍したが、その後のキャリアは苦難の連続だった。ベンフィカには定着できず、母国のペニャロールやスペインのデポルティーボなどへのレンタルを繰り返す日々を送る。半年、あるいは1年ごとに所属クラブが変わる状況を経験し、13-14シーズンにはベンフィカのBチーム所属になる屈辱も味わった。
そんなウレタビスカヤがようやく見つけた“安住の地”がパチューカだった。2015年6月にメキシコ最古のクラブに加入すると、持ち前の攻撃センスでチームをけん引。2016年後期リーグ制覇と16-17シーズンのCONCACAFチャンピオンズリーグ制覇に大きく貢献し、CONCACAF CLの準々決勝サプリサ戦で見せたドリブルシュートは、CONCACAFアウォーズ2017のベストゴール賞候補にノミネートされ、今年3月にはウルグアイ代表デビューも飾った。
「ウレータ」の通称で知られるウルグアイ代表アタッカーはもともと右ウイングがメインポジションであり、そこから縦の仕掛けや素早いコンビネーションなど、高度な技術を生かしたチャンスメイクで攻撃を牽引してきた。ここのところは本田が右サイドで継続して起用されており、彼は左に回る機会が多くなった。基本的に“逆足”を生かす形になるが、個人技と周囲を生かすコンビネーションを織り交ぜるスタイルに変わりはなく、中盤のグティエレスやグスマンはもちろん、逆サイドの本田とも時に近い距離で絡みながら、多彩な攻撃を演出する。
ウルグアイ生まれながらスペインのバスクにルーツを持ち、デポルティーボでもプレーした経験があるウレタビスカヤにとってレアル・マドリードとの対戦は強いモチベーションとなるだろう。
■南米王者
グレミオ(ブラジル)
勝負強さは健在! ドルトムントの元エースが南米王者を牽引
LUCAS BARRIOS
ルーカス・バリオス
1984.11.13(33歳)185cm/77kg PARAGUAY
かつてドルトムントで香川真司のチームメートだった彼のことを覚えている方も多いのではないだろうか。その後、広州恒大では給与の支払いをめぐってクラブと対立するなど不遇の時代も過ごしたが、今年2月に移籍したグレミオでコパ・リベルタドーレスを制し、再び大舞台に舞い戻ることとなった。
グレミオは1トップのバリオスと、その後方に位置する欧州注目のアタッカー、ルアンが攻撃の中核を担う。バリオスはストライカーとして多彩な得点パターンを見せる一方、前線でボールを収めたり、丁寧なパスで味方のチャンスを演出したり、左右に流れてスペースメイクしたりと、様々な動きができる。機動性に優れたルアンがそれにうまく絡むことで、バラエティに富んだ攻撃を仕掛ける。リベルタドーレスでは6ゴールを挙げ、8ゴールのルアンとともに優勝の原動力になった。
FIFAクラブワールドカップで南米王者に求められる最低限のノルマは決勝進出。最近では2012年大会でコリンチャンスがチェルシーを下して世界一の座に就いており、グレミオにはその時以来の世界制覇に期待が懸かる。かつて欧州チャンピオンズリーグでもプレーした百戦錬磨のストライカーは、セルヒオ・ラモスやラファエル・バランのマークをかいくぐってワンチャンスをモノにすることができるか。
■アジア王者
浦和レッズ(日本)
ドイツ仕込みのハードワークで圧倒的攻撃力に立ち向かう
KAZUKI NAGASAWA
長澤和輝
1991.12.16(25歳)172cm/68kg JAPAN
11月の親善試合ベルギー戦で日本代表デビューを飾り、浦和レッズのAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)制覇に貢献。今の活躍ぶりを、今年2月のJリーグ開幕の時点でいったい誰が予想しただろうか。当時の長澤は、浦和でほとんど出場機会を与えられていなかった。本職は中盤であるにもかかわらず、右ストッパーを任されることもあった。
しかし7月に監督交代が断行されると、その評価は一変。ボランチやインサイドMFとして攻守にわたるハードワークを見せてレギュラーに定着し、ACL決勝の第2レグでは2トップの一角に入って前線からプレスをかけ、後半途中からはボランチに入って中盤の守備力を高める役割を担うなど、戦術理解力の高さも発揮した。
豊富な運動量と高い攻撃センスを兼備した万能戦士である長澤は、ドイツでのプレー経験があるだけに海外の屈強な選手にも当たり負けせず、激しく体をぶつけてボールを奪うこともできるし、そこからボールを運ぶことで攻撃のスイッチを入れ、効果的なラストパスを繰り出すこともできる。昨年の大会では鹿島アントラーズが決勝でレアル・マドリードと対戦し、柴崎岳が2ゴールを挙げて世界中に衝撃を与えた。今大会の浦和レッズは、準々決勝に勝利すれば準決勝でレアル・マドリードと対戦する。圧倒的な破壊力を誇る欧州王者を止められるかは、彼の働きに懸かっている。
■アフリカ王者
ウィダード・カサブランカ(モロッコ)
得点創出能力に長けた細身の司令塔
Achraf BENCHARKI
アクラフ・ベンハルキ
1990.3.19(23歳)173cm/68kg Morocco
FIFAクラブワールドカップに参加するアフリカ王者チームは、毎回様々な驚きを我われに提供してくれる。個々の選手が驚異的な身体能力を発揮するチームもあれば、意外なほど組織立ったプレーを見せるチームもある。今大会に参加するウィダード・カサブランカは選手個々の技術力が高く、最終ラインから丁寧にビルドアップするチーム。そんな中にあって、2列目や前線でプレーするアクラフ・ベンハルキは司令塔として攻撃の全権を握っている。
一見すると細身で頼りなさそうな印象を受けるが、屈強なDFのチャージを受けても相手のパワーをうまく吸収しながらボールをキープし、素早い身のこなしからラストパスを繰り出す。しなやかな動きから繰り出されるシュートも強烈で、CAFチャンピオンズリーグでは通算5ゴールを記録。アル・アハリとの決勝第2レグでは巧みなドリブルで右サイドを突破し、丁寧なクロスでワリド・エル・カルティの決勝ゴールをアシストしてチームを1992年以来のアフリカチャンピオンに導いた。
アフリカ勢は2010年大会でマゼンベが決勝を戦った。13年大会に開催国枠で出場し、決勝に進出したラジャ・カサブランカは、ウィダード・カサブランカにとってライバルチームだ。決勝へと進出し、ベンハルキの変幻自在な動きがレアル・マドリード守備陣を翻弄する可能性もゼロではない。
■大会放送予定・スケジュール
※詳しい放送・配信日時等は日本テレビ FCWC特設ページでご確認ください