月刊フットボリスタ10月号より
財力=戦力で遠く及ばない2強に抗うには、華麗さは捨てるしかない。シメオネの決意に率いられたアトレティコ・マドリーのカウンターは、確実にバルセロナを追い詰めたが……。タイトルに手が届かなかった指揮官の潔い表情に、強い覚悟が透けて見えた。
<スペインスーパーカップ マッチサマリー>
ビセンテ・カルデロンでのスペインスーパーカップ第1レグは12分、自陣でのボール奪取から速攻に転じたアトレティコ・マドリーが、ビージャのピンポイントボレーで先制に成功する。リードを許した上、負傷したメッシが前半のみで交代。苦境に立たされたバルセロナを救ったのは、途中出場のネイマールだった。66分、ダニエウ・アウベスのクロスに飛び込み貴重なアウェイゴールを手にした。
カンプノウに舞台を移しての第2レグでは、メッシとネイマールが初の先発共演。しかし、Aマドリーの堅固な守備ブロックの前にバルセロナは攻めの糸口をつかめない。逆に42分に右サイドを崩されアルダに、55分にはアルダの落としからビージャにゴールを脅かされたが、GKビクトル・バルデスが立ちはだかった。終盤、得点が必要なAマドリーは攻勢を強めようとするも、フィリペ・ルイス退場で万事休す。バルセロナが自身の持つ最多優勝記録を更新する11度目のスーパーカップ制覇を果たした。
バルセロナ優勝も2戦引き分けは
シメオネのシナリオ通り
「退場? PK? よく見えなかったな。選手も監督も審判も誤りを犯すものだよ」
シメオネ監督はサバサバと振り返った。フィリペ・ルイスの80分の一発退場がなければ、すべてが思惑通りに運んでいたはずだった。1点勝負で180分間の最後まで踏み止まり、得点の機会をうかがう。「世界一のチーム」(シメオネ)にボールを支配されても辛抱強くカウンターのチャンスを狙い続けるアトレティコ・マドリーの仕事が集大成に入ろうとした時間帯に数的不利になり、ここで優勝者は決まった。その後、メッシがPKを外すというおまけはあったものの、ゴールを目指す必要がなくボールキープだけに専念すればいいバルセロナから10人でボールを奪うのは非常に骨の折れる作業であるのに、ジャッジへのわだかまりを抱えたままなのと溜まった疲労でプレスの足並みがそろわない。結局、スコアレスドローでアウェイゴール差によりバルセロナが今季初タイトルを獲得した。
F.ルイスのダニエウ・アウベスへの暴力行為を目撃したのは、起こった地点と反対側のサイドにいた副審だった。両者が重なり合いF.ルイスが柔道の投げを打つ格好でD.アウベスを倒したので正しいジャッジのように見えたが、シメオネが記者の前で不満を爆発させても何も不思議ではなかった。レアル・マドリー時代のモウリーニョなら間違いなく大荒れの会見になっていたはずだ。ところが「闘将」という触れ込みにもかかわらず、ジャッジには口出ししないという美学を貫くシメオネはにこやかに質問をかわすのだった。