
マウリツィオ・サッリの後任としてユベントスを指揮するアンドレア・ピルロ。41歳の新米監督は、果たしてどのようなチームを構築しようとしているのか。開幕節サンプドリア戦を基に、片野道郎さんが分析する。
ポジショナルプレーによるビルドアップ、5レーンの占有によるニアゾーン攻略、ゲーゲンプレッシングとマンツーマンのハイプレス、そして攻守で配置が変わる流動的な可変システム――。
アンドレア・ピルロ新監督が率いるユベントスのサッカーには、現代サッカーの最新トレンドがたっぷりと詰め込まれている。
偉大なレジスタとして一時代を築いたとはいえ、監督キャリアがまったくないまま、最初から欧州トップレベルのメガクラブを率いるというのは、近年にはほとんど例がないケース。しかもピルロの場合、監督としてどんなサッカー哲学を持ち、どんなスタイルを目指すのかについてすら、これまでほとんど口にしてこなかった。
さらに、コロナウィルス禍による変則的な日程を強いられる今シーズンは、就任から開幕までのプレシーズン期間がわずか1カ月(しかもその間に10日間の代表ウィークも挟まった)しかなく、開幕前のトレーニングマッチすら、セリエBノバーラと行った45分1本だけ。外部からはチームがどれだけ形になっているかすらはっきりと見えないまま、開幕戦を迎えるというかなり特殊な状況だった。
ところが実際に蓋を開けてみれば、サンプドリアとの開幕戦で見せたユベントスの戦いぶりには、予想以上にはっきりと新監督の刻印が刻まれていた。……
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Profile
片野 道郎
1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。