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CL、EL、カンファレンスリーグで決勝進出――イタリア勢はなぜ復活した?【片野道郎インタビュー】

2023.05.31

CLではインテル、ELではローマ、カンファレンスリーグではフィオレンティーナが決勝進出。その他、CLベスト4にミラン、ベスト8にナポリ、ELベスト4にユベントスと、今季の欧州コンペティションではイタリア勢が快進撃を見せている。その理由をイタリア在住ジャーナリスト、片野道郎氏に直撃した。

※2023年5月31日追記:一部修正

インテルとナポリの『前プレ対策』が威力発揮

――今回のインタビューのテーマは「欧州カップ戦でのイタリア勢快進撃の理由」です。CLでは決勝進出のインテルを筆頭にベスト8に3クラブが入り、ELでもローマ、カンファレンスリーグでもフィオレンティーナが決勝に進出しています。

 「CLに関しては、くじ運が最大の理由ですね。デロイトのフットボールマネーリーグの売上高を見ても、トップ10にイタリア勢は1クラブも入っていないですし、過去5年間のUEFAコンペティションから算出したクラブランキングでも最高はユベントスの8位で次はインテルの10位。要は、CLのベスト8に1クラブ入れるかどうか、というのが客観的なイタリア勢の立ち位置だと思います。逆にELでのローマやユーベ、カンファレンスリーグのフィオレンティーナは実力相応と言っていいかもしれません」

――とはいえ、リバプールをグループステージで圧倒したナポリのパフォーマンスは驚かされました。ラウンド16のフランクフルト戦も圧勝でしたし。ベスト8でミランに敗れたのは残念でしたが……。

 「ナポリは売上高1億6000万ユーロくらいで、アタランタより下のレベルです。セリエAでもオーバーパフォーマンスを見せてくれたクラブと言えますね。今季のチームに関しては、もしかしたらCLベスト4に近い力を持っていたかもしれません。純粋に今季のチーム力を比べると、イタリア勢ではナポリが一番あったと思います。欧州レベルでも近年で言えばアヤックス、昔のモナコみたいなアップセット枠ですよね。セリエAに限らず、すべてが噛み合った時、稀にこういうことは起こります」

今季のCLグループステージ第1節で昨季のCLファイナリストであるリバプールを4-1と粉砕したナポリ。CLではベスト8で姿を消すことになったが、リーグでは33年ぶりのスクデットを獲得した

――決勝進出のインテルに関してはいかがでしょうか?

 「インテルはリーグ戦で12敗もしていて、カップ戦にフォーカスしていました。一発勝負で本気になった時のパフォーマンスレベルは高かったです。ロジャー・シュミットのベンフィカは好チームでしたが、完勝しましたからね。インテルに関しては今季のミラノダービーに5戦4勝で、明確な勝ちパターンがありました。ミランはオールコートマンツーマンで前線からハメに来るんですけど、『前プレ外し』に優れていた。

 ビルドアップ時にインサイドハーフやアンカーが流動的で、例えばインサイドハーフのバレッラやムヒタリャン、アンカーのブロゾビッチやチャルハノールがあえてサイドに流れる。そうするとミランもマンツーマンなのでその動きについて行くことになるので、ピッチの中央がぽっかり空くんです。そこに2トップのジェコやラウタロが下りて来て、GKのオナナから一発でグラウンダーの長い縦パスが入る。オナナのキックの質の高さが大きなポイントで、もう1つジェコやラウタロがDFを背負って受けられることも大きいです。そこで前線に起点を作って、MFが裏に抜け出してゴールというパターンが目立ちました。あとパスでの繋ぎが難しそうなら、躊躇なく2トップにロングボールという逃げ道も作っていました。ジェコはターゲットとしても強いですからね。なので引いた相手に関しては、ディ・マルコの高精度クロスをジェコに合わせるという得点パターンもあります」

――前からのハイプレスに強いというのは、欧州のコンペティションで生きてきそうですね。ベンフィカもテクニカルになったとはいえ、ロジャー・シュミットのチームですから。

 「今季のセリエAは全体的に前からのプレッシングが完全に主流になっていて、その対策は進んだ気がします。目の前の相手を攻略するための対策はイタリア勢の強みで、他の国と同じ土俵に立ったことで欧州のカップ戦での優位性となったのはあるかもしれません。……

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Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。

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