“闘う松井蓮之”が帰ってきた。完全移籍で芽生えた中盤のリーダーシップがベガルタ仙台を更に強くする

昨シーズンの3月に川崎フロンターレから期限付き移籍で加わると、すぐさま高い実力を示して欠かせない戦力に。完全移籍に移行した今季はけがでやや出遅れたものの、復帰してからは森山佳郎監督の信頼も厚く、着実に出場時間を伸ばしているのが松井蓮之だ。J1復帰に向けて勝負の年を迎えるベガルタ仙台の中で、彼の存在はチームにどんな影響をもたらしているのだろうか。おなじみの村林いづみが本人を直撃する。
指揮官もストックしている“蓮之シリーズ”の『球際、闘う部分』の動画
狙った獲物は逃がさない。豊富な運動量でボールを刈り取るチーム屈指のファイター、松井蓮之選手。昨年3月に川崎フロンターレから期限付き移籍で加入すると、ベガルタ仙台の中盤でその本領を発揮し、31試合に出場した。今季は完全移籍という決断をし、副キャプテンにも任命された。キャンプ中のけがの影響で開幕スタメンは仲間に譲ったが、徐々に出番を増やし、3月のルヴァンカップ栃木SC戦ではキャプテンを担うと、120分+PK戦をタフに戦った。4月は3勝2分けと負けなしだった仙台。その躍進の陰には、迷いなく目の前の相手に挑んでいく彼の姿があった。

ある日の練習後、森山佳郎監督に松井選手のことを聞くと、こんな話を聞かせてくれた。
「今日のミーティングで用意したけれど、時間の都合で出せなかった映像があったんです。“蓮之シリーズ”の『球際、闘う部分』の動画です。蓮之が熊本戦で12.4kmも走っているということもみんなの前で話しました。ようやく“闘える蓮之”が帰ってきた。それはチームにとっても大きなことです」。元々、運動量やデュエルには自信を持っている松井選手。数値にも映像にも、はっきりとそのファイトは現れていた。
「蓮之はけがで、キャンプでもだいぶ出遅れました。なかなか乗らないところもあったと思う。開幕は工藤と(鎌田)大夢。そこにヒデ(武田英寿)も出てきた。鎌田・武田でボランチは固まってきてはいましたが、蓮之もコンディションが上がってきたところで使いたいと思っていました。彼は自分でしっかりと上げてきたので、チャンスがあった時につかんだ。最初は“及第点”というくらいだったのが、ここ3試合(カターレ富山戦、FC今治戦、ロアッソ熊本戦)で本当に良くなってきて、熊本戦はかなり良くなったと思います」(森山監督)
自らのコンディション、思い描くプレーと結果がかみ合い、自信を深めつつある松井選手へ最近の思いを聞いてみた。

毎試合感じる競争と危機感。チームが勝つことにフォーカスしたからこそ発揮される力がある
――ロアッソ熊本戦は、先発で出場しているここ数試合の中でもベストパフォーマンスを出せたのではないですか?
「そうですね。ここ数試合の中で、スタッツで見てもGPSのデータでも一番良かったと思います。今年は去年よりもスタメンで出る試合が少ない中で、ポジション争いは僕の一番のモチベーションというか……。毎試合良いパフォーマンスをしないと次は使われないという思いでやっています。それが熊本戦でも出ましたし、良い選手が多くいる中でもスタメンで出た時は、自分の良さを出すことが必要。それが成長にもつながっています。どう試合を運ぶかというところもありますが、一番はチームが勝つこと。そこにフォーカスできていることが、今の自分のパフォーマンスにつながっているんじゃないかなと思います」
――中盤で狙ったところのボールはほぼ奪えていたのではないですか?
「僕の体勢が良い時、得意な形の時は大体ボールを取れましたが、逆に取れなくなってきた時の対応や、チームとしてどうプレスをかけるかは、特に熊本戦の後半は課題が残ったと思います。相手にボールを持たれ過ぎて、全体的なラインが下がってしまいました。試合中はCBのマサくん(菅田真啓)や(井上)詩音、アキさん(林彰洋)ともコミュニケーションを取りながらやっていたので、それが失点0にもつながったと思います。でももっともっと修正できるところもあると思うので、真ん中の選手を中心に、試合中に修正していけたらと思います」
――ブラウブリッツ秋田戦から熊本戦まで4試合連続でクリーンシートでした。守備面での自信は深まってきているのではないですか?
「熊本戦は良いパフォーマンスはできましたが、これを続けないと試合に出続けられない。その試合は良かったとしても、すぐに切り替えて次に試合に向かっていきます。連戦になるので上手く向かっていけたらと思います」

昨年は9枚もらったイエローカード。今年は……。
――こういう言い方をすると意地悪かもしれませんが、今シーズンの松井選手はここまではノーカードで来ています。昨シーズンはイエローカードがトータル9枚でした(取材は4月21日。その後も第12節・ヴァンフォーレ甲府戦まで警告は受けていない)。……



Profile
村林 いづみ
フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。