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“ライオンの巣穴”にも臆さなかったスリーライオンズ、2大会ぶりの優勝目指す

2023.05.29

 イングランドの若きスリーライオンズが、アルゼンチンの地で奮闘している。

 現在アルゼンチンで開催されているU-20ワールドカップはグループステージが終了し、5月30日(現地時間)からノックアウトステージに突入する。残念ながらU-20日本代表はグループステージ敗退の憂き目に遭ったが、強豪国は順当にベスト16に駒を進めている。

 中でも順調なのが2大会ぶりの優勝を目指すイングランドだ。彼らは“最悪”の状態で開幕を迎えながら、2連勝で早々にノックアウトステージ進出を決めると、第3戦のイラク戦にも引き分けて無傷のまま1位でグループステージを突破した。現地時間の5月31日に開催されるラウンド16ではイタリアと激突することになった。

3選手を欠いて3連戦を戦う

 そんなイングランドだが、今大会は苦労続きだ。昨年のU-19欧州選手権を全勝で制してヨーロッパ王者に輝いた彼らは、今大会も優勝候補の一角だった。だが、大会が始まる前にトラブルが発生。今大会はFIFAのインターナショナルカレンダー内の開催ではないため、選手を強制的に呼ぶことができない。そのため多くの出場チームが主力を招聘できずに頭を悩ませていた。

 イングランドも例外ではなく、ユベントスに所属するFWサミュエル・イリング・ジュニアやチェルシーのDFルイス・ホールは所属クラブに招聘を断られてしまった。さらにドルトムントに所属するFWジェイミー・バイノ・ギッテンスはケガのため不在。それでもU-20イングランド代表を率いるイアン・フォスター監督は「クラブのオーナーや首脳陣、監督、さらに選手の両親や代理人、そして選手本人と」話し合い、21名のワールドカップメンバーを選んだのだ。

 これでようやく戦力がそろったかと思いきや、そうではなかった。DFラインの主軸であるDFカラム・ドイル(マンチェスター・シティ)と右SBブルーク・ノートン・カフィ(アーセナル)はともにローン先のコベントリーがプレミアリーグ昇格をかけたプレーオフ決勝に進出したため、クラブに残って27日に行われたルートンとの決勝戦に出場。グループステージ中は不在だった。

 追い打ちをかけたのがチェルシーの判断である。今大会の注目株の1人であるMFカーニー・チュクウェメカは、FIFAにメンバー表を提出した時点ではクラブからゴーサインが出ていたものの、チェルシーの中盤に故障者が出たことでクラブに留まることに。フランク・ランパード暫定監督は「本人はU-20ワールドカップに出たがっていたので少し気の毒だが」と前置きしたうえで「彼はうちの選手だ。ケガ人が出たので彼が必要なんだ」としてプレミアリーグ最終節まで同選手を手放さなかったのだ。

メンバーに選ばれていたチュクウェメカはチェルシーの中盤にケガ人が出たため、シーズン終了までチームに残った

 これでイングランドは3選手を欠いて開幕戦を迎えることに。他にもメンバーがいるとはいえ、今大会の選手登録枠は21名。そのうち3名がGKなので、イングランドはフィールドプレーヤー「15名」で中2日の3連戦となるグループステージを戦うことになったのだ。

完全アウェイのなかでウルグアイに勝利

 それでも、地力で勝るイングランドはチェルシーのMFハービー・ベイルやトッテナムのMFアルフィー・ディバインを中心に据えて見事に結果を残した。最難関と見られたウルグアイとのグループステージ第2戦では、圧倒的な“アウェイムード”のスタジアムの中でも勝利を収めた。

 会場となったブエノスアイレスの「エスタディオ・ウニコ・ディエゴ・アルマンド・マラドーナ」には2万7000人を超える観客が集まり、イングランドに野次を送った。隣国のウルグアイからサポーターが押し寄せたほか、地元アルゼンチンのファンもフォークランド紛争での敵である“英国”に敵意をむき出し。イングランドの選手たちには観客から口笛・指笛によるブーイングが送られ、ピッチ内に飲み物のボトルが投げ込まれるなど、U-20世代の試合とは思えぬほど過激な雰囲気となった。

 それでも選手たちは、フォスター監督が「ライオンの巣穴」と表現した環境の中で臆することなく冷静に戦って3-2の勝利を収めグループステージ突破。次は昨年のU-19欧州選手権セミファイナルの再現となるイタリアとのラウンド16の決戦に臨む。

 ここからは、ようやくフルメンバーがそろう。プレーオフ決勝で涙をのんだドイルとノートン・カフィに加え、チュクウェメカも28日にチェルシーでの最終戦を終えた直後に空港に向かい、アルゼンチンへ飛んだという。

 3選手が加わってようやくメンバーがそろう“スリーライオンズ”。2大会ぶりのU-20ワールドカップ制覇へ向け、ここから頂点を目指す。


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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