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恩師との望んだ再会に懸ける覚悟。RB大宮アルディージャ・豊川雄太がチャレンジする新たな「大宮の10番像」の確立

2025.04.23

輝く新戦力の理由#7
豊川雄太(RB大宮アルディージャ)

2月に開幕した2025シーズンも約2カ月が終わり、新たな勢力図が見えてきつつあるJリーグ。各Jクラブの浮沈に影響を与えているのは、新加入選手たちのパフォーマンスだろう。大卒ルーキーからベテランまで輝きを放つ新戦力にスポットライトを当て、その理由を掘り下げてみたい。

第7回は、ファジアーノ岡山と京都サンガF.C.で師事した、長澤徹監督率いるRB大宮アルディージャへとやってきた豊川雄太。クラブ自体も新たなフェーズに足を踏み入れつつある中で、オレンジの10番も自身のさらなるアップデートに目を向けている。

8節で生まれた今季初ゴール。「思いっきり振れた、いいゴール」 

 まさに電光石火だった。

 4月5日、明治安田J2リーグ第8節大分トリニータ戦。大分に先制点を奪われた、その直後の一幕である。

 キックオフのボールをGKの笠原昂史まで下げる。笠原が精度の高いロングキックを前線へ送ると、これをオリオラ・サンデーがヘディングで落とす。

 そこへ駆け寄ったのが豊川雄太。落としたボールを胸に収めると、その直後に右足を振り抜いた。シュートは相手GKの脇を抜け、そのままゴールに吸い込まれていく。キックオフからわずか14秒の同点劇、そして、豊川の今シーズン初、RB大宮アルディージャでの初ゴールの場面だった。

 「うまくサンデーが競り勝ってくれて、こぼれてくる感じはあった。失点してすぐだったんで、あそこで取れたのは大きかったと思います」

 豊川は自身でそう振り返る。決して簡単なシュートではなかったが、「難しいシュートは得意なんだよね。簡単なシュートを外しすぎる。練習します」と報道陣を笑わせた。「思いっきり振れた、いいゴール」と自画自賛し、「感覚的なもので、考えてたらあれはできない。本当に日々の練習っていうのは大事ですし、ああいうゴールをもっと取れるように、外すんじゃなくてゴールに持っていけるように、まだまだ日々練習していきたいと思います」と今後への意欲を語った。

 開幕戦から、チャンスは何度となくあった。シュートが相手DFやGKの正面を突く場面、ポストやクロスバーに阻まれる場面も少なくなく、チャンスの数に比してなかなかゴールが生まれないことに、周囲は業を煮やしていた。だが、本人は至ってポジティブ。第4節を終了した時点では、「毎回チャンスはあって、もう気持ちでは5点ぐらい取ってるイメージ」と笑いながら、「チャンスは来てるんで、1点取れれば波に乗れると思います。焦らずゴールを狙いながらも、チームのやるべきことをやっていきたいと思ってます」と意欲的に話していた。この今季初ゴールをきっかけに、今後の得点が大きく伸びていくことを期待したい。

移籍の決め手は恩師の存在。長澤徹監督との固い絆

 今季、新天地への移籍を決意した豊川。J1からJ2への移籍となったが、カテゴリーについては「全然そんなの関係ないです。熱くなれるところを僕は選びたい。今までもそう選んできた」と話す。その中で大宮を選んだ理由を問われると、間髪を入れず「徹さんですね」と返ってきた。……

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Profile

土地 将靖

1967年埼玉県生まれ。1993年のJリーグ開幕と同時に試合速報サービスのレポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーに転身し大宮アルディージャに密着、各種媒体への寄稿を細々と続けている。2005年より続いていた大宮全公式戦の現地直接取材はコロナ禍で途絶えたが、近年は下部組織の取材にも注力し、精力的に活動している。

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