ヤマル級の天才、スーペルクラシコで輝いたリーベルの17歳、フランコ・マスタントゥオノとは何者か?

EL GRITO SAGRADO ~聖なる叫び~ #16
マラドーナに憧れ、ブエノスアイレスに住んで35年。現地でしか知り得ない情報を発信し続けてきたChizuru de Garciaが、ここでは極私的な視点で今伝えたい話題を深掘り。アルゼンチン、ウルグアイをはじめ南米サッカーの原始的な魅力、情熱の根源に迫る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第16回(通算175回)は、名門リーベルプレートでクラブ最年少記録を次々と更新、アルゼンチンA代表入りも間近と言われ、欧州メガクラブも熱視線を送る17歳の新星MFを紹介したい。
テニスでも国内トップ5!対ボカ史上最年少スコアラーの異色な経歴
元フランス代表のティエリ・アンリは、自身がパネリストを務める『CBS Sports』の番組でバルセロナのラミン・ヤマルについて語った際、あるアルゼンチン人選手を引き合いに出した。
「誰もメッシやクリスティアーノ・ロナウドを超えられないだろうと言われてきた。(中略)だが今ではこうしてラミン・ヤマルや、リーベルプレート所属のアルゼンチン人で、ボカ・ジュニオルスとのスーペルクラシコでFKからゴールを決めて勝利を手にしたマスタントゥオノのような選手が現れている。このようなことは絶対に予測できない。だからこそサッカーは素晴らしいのだ」
アンリが称賛したフランコ・マスタントゥオノは、ヤマルと同じ2007年生まれの17歳。4月27日に行われたスーペルクラシコで、ゴール前約30メートルの位置から見事なFKを決めてみせ、8万5000人の観衆を熱狂の渦に巻き込んだ。
大舞台で均衡を破るゴラッソを決めただけでも喝采に値するが、これによってマスタントゥオノは宿敵ボカ相手に得点を挙げた選手としてクラブ史上最年少記録(17歳8カ月13日)を更新。25年間にわたってハビエル・サビオラが保持してきた記録(18歳5カ月6日)を塗り替える快挙を成し遂げ、旋風を巻き起こしている。
長年にわたり、世界のトップクラスで活躍する多くのエリートプレーヤーを送り出してきたリーベルから、「ダイヤモンドの原石」と呼ばれる10代の新星が現れるのは決して珍しいことではない。CIES(国際スポーツ研究センター)の調査によると、2005-06シーズンから2024-25シーズンまでの20年間、リーベルは非欧州クラブの中で最多となる51人の選手を欧州5大リーグに送り込んでいる。その顔ぶれには一世代前のエルナン・クレスポ、ラダメル・ファルカオ(ミジョナリオス)、ゴンサロ・イグアインから、近年のフリアン・アルバレス(アトレティコ・マドリー)、エンソ・フェルナンデス(チェルシー)、クラウディオ・エチェベリ(マンチェスター・シティ)に至るまでが名を連ね、いずれもユース時代から注目された逸材ばかりだ。
だがマスタントゥオノには、これまでに例のない異色の経歴がある。リーベルの下部組織に加入する直前の2019年12月まで、彼はテニスプレーヤーとしても頭角を現し、アルゼンチン国内ジュニアランキング(U-12)のトップ5入りを果たしており、その将来が大いに嘱望されていたのである。……



Profile
Chizuru de Garcia
1989年からブエノスアイレスに在住。1968年10月31日生まれ。清泉女子大学英語短期課程卒。幼少期から洋画・洋楽を愛し、78年ワールドカップでサッカーに目覚める。大学在学中から南米サッカー関連の情報を寄稿し始めて現在に至る。家族はウルグアイ人の夫と2人の娘。