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モウリーニョ、エメリ、ラングニック…次々に名将を撃破する地方クラブの指揮官

2022.03.06

 2019-20シーズンの開幕から、数々の名将を撃破している指揮官がいる。過去2年半でジョゼ・モウリーニョ、ウナイ・エメリ、デイビッド・モイーズ、ラルフ・ラングニック、そしてアントニオ・コンテといった名だたる監督に勝利してきたという。

古巣をプレミアの舞台へ

 そう言われると、例えばペップ・グアルディオラユルゲン・クロップのような世界的な指揮官の名前が思い浮かぶはずだ。だが、2人とも過去2年半ではラングニックやコンテには勝っていない。そうなると、他のビッグクラブを率いている監督が候補に挙がると思うが、その監督というのはビッグクラブを率いた経験がないという。過去2年半、彼が率いたクラブはシェフィールド・ユナイテッドとミドルズブラ。どちらも現在イングランド2部に在籍するクラブなのだ。

 そんなクラブを率いながらも世界的な名将を次々に倒しているのは誰なのか? それは、現在ミドルズブラを率いるクリス・ワイルダー監督(54歳)である。ワイルダーは現役引退後、イングランド9部のチームで監督を始めると、そこからステップアップを果たしてオックスフォード・ユナイテッドを5部から4部に引き上げ、ノーサンプトンでは4部リーグを制覇。そしてプロ選手キャリアをスタートさせた古巣シェフィールド・ユナイテッドに引き抜かれると、3年間で同クラブを3部リーグからプレミアリーグまで引き上げたのである。

 プレミア昇格1年目の2019-20シーズンは9位と大健闘したが、2年目は成績不振に陥って昨年3月に退任すると、チームも2部降格の憂き目にあった。子供の頃からシェフィールド・ユナイテッドのファンだったというワイルダーは、退任後にファンに向けてこんな手紙を綴った。

 「2016年に子供の頃からずっと応援してきたクラブの監督に就任した時、その後の4年半で何が起こるかなど想像もできなかった。素晴らしい冒険だったし、私は本当に誇りに思っている。しかし今季、ファンのいないフットボールはフットボールではなかった。これまでファンの力が敗戦を引き分けに、引き分けを勝利に変えてきてくれたんだ」

 「シェフィールドはフットボールの町だ。満員のブラモール・レーン(本拠地)の雰囲気を忘れることができない。イングランドフットボール界で最高の雰囲気の1つだと思っている。私はすべてのファンが夢見るような経験をさせてもらった。このクラブは永遠に私の心に刻まれているし、それが変わることはない」

 そんな素敵なメッセージを残したワイルダーは、昨年11月に現場に復帰。シーズン途中に2部のミドルズブラの監督に就任すると、成績を伸ばせていなかったチームで即座に結果を残し始めた。12月にはリーグ戦5試合を4勝1分けの無敗で乗り切り、2部リーグの月間最優秀監督にも選出された。

次はトゥヘルの番か

 そして今年に入ると、FAカップで快進撃を見せている。3回戦で4部のマンズフィールドを下すと、4回戦ではオールドトラッフォードでマンチェスター・ユナイテッドにPK戦の末に勝利。そして今月1日に行われた5回戦では、ゴールレスのまま延長戦に突入した試合で19歳のFWジョシュ・コバーンが決勝点を決めてトッテナムを1-0で退けたのである。これでラルフ・ラングニックとアントニオ・コンテを立て続けに撃破したことになる。

FAカップ5回戦ではジョシュ・コバーンのゴールが決勝点となりトッテナムを撃破

 足をすくわれる形となったスパーズのコンテ監督は「チャンスを決めないと敵に自信を与えてしまう」と悔やんだうえで「ミドルズブラは勝利に値する。彼らを称えたい」と賛辞を送った。

 もちろんワイルダー監督はシェフィールド・ユナイテッド時代にも何度もサプライズを起こしている。エメリ率いるアーセナルを倒したほか、モウリーニョのスパーズに3-1で勝利。そしてフランク・ランパードが率いていたチェルシーには3-0で快勝するなど、次々に大金星を挙げたのだ。

 そして、ミドルズブラでも結果を出している。FAカップだけでなく、リーグ戦では就任時に14位と苦しんでいたチームを、最近は昇格プレーオフ圏の6位以内を狙える位置まで浮上させている。このままいけば来季はプレミアリーグに復帰し、また世界的な名将たちと知恵比べをすることができる。

 無論、来季まで待つ必要もない。ミドルズブラは今月行われるFAカップの準々決勝で世界王者チェルシーと対戦する。ラングニック、コンテに続いて、次はトーマス・トゥヘルまで倒してしまうのか? ワイルダー監督の快進撃から目が離せない。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。