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昨季CL決勝の雪辱を果たしたシティ。トゥヘルを上回ったグアルディオラの応手を探る

2021.10.01

昨季CL決勝カードの再現となったプレミアリーグ第6節、チェルシー対マンチェスター・シティ。雪辱に燃えるシティに0-1で軍配が上がった大一番で、戦術家として知られる両指揮官トーマス・トゥヘルとペップ・グアルディオラが繰り広げた攻防の妙を、サッカーライターの結城康平氏に振り返ってもらった。

 ペップ・グアルディオラはポジショナルプレーの最適化という永遠の課題に挑み続け、トーマス・トゥヘルは欧州を制した[3-4-2-1]の派生形を増やしながら勝負師としての勘を鋭く研いでいく。欧州の覇を競うCL決勝で対戦した2人にとって、その再戦は待ち望んだものだったのかもしれない。今回はトゥヘルが「シックスポインター」(勝てれば3ポイントを得つつ、相手に3ポイントがわたるのを防げるため、6ポイント分の価値がある重要な直接対決という意味)と表現したプレミアリーグ序盤戦における天王山について考察していこう。

 昨シーズンからの戦力増強という意味では、両チームとも補強すべきポイントに投資している。シティはアストン・ビラからイングランド代表MFジャック・グリーリッシュを獲得し、セントラルとワイドで併用しながら攻撃にアクセントを加える実験を繰り返している。一方、バルセロナに移籍した主砲セルヒオ・アグエロの穴を埋めるストライカー獲得というミッションには失敗。トッテナムからハリー・ケインを補強しようとしたが阻まれ、加入が報道されていたクリスティアーノ・ロナウドも最終的には宿敵マンチェスター・ユナイテッドへ復帰している。一方、ライバルがストライカーの獲得に苦しむのを横目にチェルシーはインテルからロメル・ルカクの獲得に成功。チェルシーにも在籍経験のあるベルギー代表FWは、イタリアの地でプレーの幅を広げていた。恵まれたフィジカルに加え、判断力に長けたポストプレーヤーは間違いなく欧州屈指のタレントだろう。

プレミアリーグ第5節トッテナム戦でボールを収めるルカク

 シティ戦で2シャドーの一角、メイソン・マウントがコンディションに問題を抱えていたチェルシーは、1つの大胆な仕掛けを選ぶ。昨シーズンまではレギュラーだったドイツ代表FWティモ・ベルナーと、新加入のロメル・ルカクの2トップである。トゥヘルは前節トッテナム戦でも前半途中から[3-5-2]への陣形変更でバランスを改善しており、その成功体験に裏打ちされてもいたはずだ。中盤に下がってくるケインと裏を狙うソン・フンミンの連動で、陣形が縦にコンパクトな状況を保てなくなってしまった状況を解決するという難題に直面したトゥヘルは、マウントとエンゴロ・カンテを交代。中盤のバランスを的確に改善させ、ゲームを読む卓越した能力を発揮した。

「偽サイドバック」という囮

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チェルシーマンチェスター・シティ戦術

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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