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アントニオ・コンテはなぜトッテナムを選んでくれたのか?

2021.11.12

11月1日に今夏就任のヌーノ・エスピリト・サント監督を解任し、その翌日にアントニオ・コンテの招へいを発表したトッテナム。ユベントス(11-14)、イタリア代表(14-16)、チェルシー(16-18)、インテル(19-21)などを渡り歩き、近年も16-17にはプレミアリーグ、昨季はセリエAの優勝監督となった52歳の名将が、どうして昨季プレミア7位、今季も開幕10戦5敗で9位と苦しむチームを新天地に選んだのか。おなじみのスパーズ・ジャパン(@SpursJapan)が内部事情を伝えてくれた。

「110%の確信を持って」新天地へ

 前回のコラム『ジェットコースターのようなスパーズ再建への道のり』(9月25日公開)では、ジョゼ・モウリーニョ(現ローマ監督)からヌーノ・エスピリト・サントへの監督交代の経緯と、プレミアリーグ開幕から3連勝→2連敗という今シーズンの滑り出しを「チーム再建の現状」としてお伝えした。

 それから1カ月半が過ぎ、我われスパーズファンが搭乗するジェットコースターは、ヌーノの解任によって垂直降下し、そして直後にアントニオ・コンテが新指揮官に就任したことで垂直上昇している。

 プレミア第10節でマンチェスター・ユナイテッドに0-3で敗れた日(10月30日)から2日間で起こった監督交代劇。ここしばらく、“ヌーノでは厳しい……”という感情を抱きながらも、夏の監督人事の大迷走を振り返ると“今すぐヌーノよりも優れた監督を招へいするのは不可能だ……”と我慢するしかなかったサポーターの重苦しいジレンマを、コンテ到来のニュースが跡形もなくぶち壊してくれた。

 今夏のスパーズには一時期「コンテ就任に向けて双方合意に迫っている」との報道が出ていた。結局破談になったことで監督探しはますます迷走していったわけだが、当時を振り返りコンテは「夏にトッテナムから話があったのだが、インテルでの激闘の2シーズンを終えたばかりで休息が必要だと感じていた」と断った理由を就任後に明かしている。

 「インテルでは9シーズン続いたユベントスのリーグ優勝を止めたんだよ。感情の面で、あまりにも強烈だった。休息が必要だったのは確かで、特にその時に他のチームの指揮を執ることはできなかった。新たなクラブでスタートする時は、そのクラブの環境に完全に専念することになるのだから、私は110%の確信を持っていなければならないんだ」

 6月にスパーズの打診を断ってからおよそ4カ月の休息を経て、コンテはフットボールの現場に戻ってくる決意を固めてくれた。

 この大物監督の招へいを羨望の目で見つめる他クラブのファン以上に、我われスパーズファンは「なぜトッテナムを選んでくれたのか?」懐疑的にならざるを得なかった。スパーズはこの2年半でCLファイナル進出から現状に至った「落ち目のチーム」であり、2カ月間に及んだ今夏の監督探しでは多くの候補者たちがオファーを断り、一方で優れた監督は優れたチームを率いるものだと、現在プレミアリーグで成功しているチームを見て感じていたからだ。では、コンテがトッテナムを選んだ理由について整理してみたい。 ……

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スパーズ・ジャパン

創設20年を迎えたクラブ公認サポーターズクラブ「スパーズ・ジャパン」では、日本に住むスパーズ・サポーターのコミュニティ作りを後押しし、観戦会やフットサル大会などのイベント開催や、スパーズ関連ニュースをWEBやSNSで発信している。

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