SPECIAL

ケイン獲得交渉を裏で主導。新生バイエルンの行方を占う“院政”の影響力を読む

2023.08.31

2022-23は辛うじて無冠を免れたものの、フロントの混乱がピッチ上にも波及し迷走したバイエルン。名将トーマス・トゥヘルの下でプレシーズンからトレーニングを重ね、待望の点取り屋ハリー・ケインを獲得するなど表向きにも巻き返しへ向け着々と体制を整えてきているが、最も大きな改革が行われたのがフロント陣だ。クラブの舵取りに大きく影響する、内部のパワーバランスの変化に注目する。

 常勝軍団を作るうえで最も大事なのは、経営者がクラブ内に醸成する空気感なのかもしれない。オリバー・カーンCEOとハサン・サリハミジッチSDが去り、ウリ・ヘーネス名誉会長とカールハインツ・ルンメニゲ元CEOが経営の現場に復帰してまだ約3カ月しか経っていないというのに、バイエルンは絶対王者の「嫌らしさ」を取り戻しつつある。

 スーパーカップこそRBライプツィヒに0-3で完敗したが、ブンデスリーガが開幕するとブレーメンに0-4、アウクスブルクに3-1と2連勝。ナーゲルスマン時代に見られたような90分間の中での波や守備の危うさは(今のところ)見られない。

自ら電話を取り“後押し”

 新たな強さの象徴は、イングランド代表キャプテンのハリー・ケインだ。トッテナムとの交渉は困難を極めたが、最終的に移籍金が最大で1億2000万ユーロになる破格の条件で合意を勝ち取った。ブンデスリーガにおいて、移籍金が1億ユーロを越えるのは初めてである。

 その交渉を裏で動かしたのがルンメニゲだ。表向きの責任者は現CEOのヤン・クリスティアン・ドレーゼンだが、ルンメニゲは交渉のオンライン会議に同席し、会議外でもドレーゼンにさまざまなアドバイスを送った。

 ルンメニゲは、『シュポルトビルト』誌のインタビューでこう明かした。……

残り:2,319文字/全文:3,050文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

TAG

バイエルンハリー・ケイン

Profile

木崎 伸也

1975年1月3日、東京都出身。 02年W杯後、オランダ・ドイツで活動し、日本人選手を中心に欧州サッカーを取材した。現在は帰国し、Numberのほか、雑誌・新聞等に数多く寄稿している。

RANKING