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伊東純也のケガを「敗因にしちゃダメ」。関根大輝の気概、最終節は中村敬斗も不在、ランス必勝の残留決戦へ

2025.05.08

Allez!ランスのライオン軍団 #13

大好評のスタッド・ランス取材レポートが連載化! 伊東純也、中村敬斗、関根大輝の奮闘ぶり、欧州参戦を目指す若き獅子たちの最新動向を、現地フランスから小川由紀子が裏話も満載でお届けする。

第13回は、エース負傷欠場の影響はいかほどか? 2連勝から一転、1分1敗に終わった4月27日、5月2日のアウェイ2連戦について。リーグ1はラスト2試合、ホーム最終戦となる次節は10日(日本時間28時キックオフ)、サンテティエンヌとの残留争い直接対決だ。

「まるで練習試合かと思った」最下位相手の0-0

 やはり思い通りには楽にいかないようである。

 第30節のトゥールーズ戦に勝利して(○1-0)入れ替えプレーオフ圏から脱出。代わって16位に転落したル・アーブルに5ポイント差をつけた時、スタッド・ランス陣営には「ほぼ残留確定!」という空気が漂った。

 しかしさらにまだもうひと波乱、待っていようとは……。

 続く第31節、すでに降格が決まったモンペリエ相手にまさかのゴールレスドロー。まあ、ランスの場合、自分たちより下にいるチーム相手に取りこぼすのは既定路線とも言えなくないのだが、勝ち点3を取り損ねたばかりか、チームの大黒柱である伊東純也をケガで失ってしまったのは大打撃だった。

 前半26分、CBセドリック・キプレからのロングボールに反応し、ゴールに背を向けた状態で胸トラップしながら2、3歩あとずさりした時に左足首を痛めたようで、その後10分ほどはプレーを続けていたが、自らスパイクを脱いで交代を要請した。

 この日は私的な事情でスタジアムに行けなかったので、翌日「バキっというような音がした」「割れるような音」という報道を目にした時は、骨折?靭帯?とギョッとした。実際はどんな様子だったのだろうと現地に行っていた取材仲間に聞いたところ、伊東本人は「めっちゃ大きな音がした」と言っていたそうだ。

 日本の報道陣からコメントを聞いた現地紙『L’Union』が『レキップ』紙など他の媒体にもシェアし、彼らが報じた記事が再び日本語に訳されて……と伝言ゲーム的に言い回しが変わっていったのだろう。

 そのうち痛くなくなるだろうと思ってプレーを続けていたが、そのまま痛かったのでやめた、とのこと。試合後の様子もいたっていつも通りで、普通に歩いて帰っていったらしい。

 そして検査が行われた4月29日には、伊東本人が自身のSNSに、テーピングを巻いた左足首の写真とともに、

 「頑丈な身体に感謝。強靭な靭帯らしいです。すぐに復帰できるそうです。皆さん心配メッセージありがとうございました」

 というメッセージを載せていた。

 長期離脱の大ケガではなかったようで、ひと安心。本当に頑丈な身体でよかった。もちろん本人も日頃からきちんとケアしているゆえのことだ。

 ただ、最低でも1、2試合の欠場は免れない。

モンペリエ戦のハイライト動画。中村はフル出場、関根は69分から途中出場した

 それに、このモンペリエ戦は内容的にもランス側の勢いが乏しかったから、試合後の会見では温和な語り口のサンバ・ディアワラ監督の言葉も厳しかった。

 「まるで練習試合かと思った。試合の内容を見る限り、どちらがすでに降格が決定していて、どちらが残留を目指して奮戦しているチームかわからなかった」

 と覇気のなかったランスの戦いぶりを一刀両断。パフォーマンスが低下した要因について、「最近の成績に浮かれてしまっていたのだろう」と指摘した。降格ラインの崖っぷちから抜け出したことで、少し気持ちが緩んだ部分はあったかもしれない。

中村は仰向けになったまましばらく動かなかった

 気を引き締めて臨んだ次戦は、前節で無敵のパリ・サンジェルマンから今季リーグ1で初めて勝ち星を奪って(○1-3)勢いに乗っている上にCL出場権を狙う強豪ニースが相手。

 その難敵に対し、モンペリエ戦に比べて戦闘意識の面では改善されていたが、開始15分に先制点を許したのが痛かった。……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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