川崎が示したACL「対サウジ勢」の攻略法。準決勝78%と決勝48%の意味とは?

新・戦術リストランテ VOL.65
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第65回は、世界中からスター選手を集めたサウジアラビア勢が猛威を振るう中で、川崎フロンターレが準優勝と大健闘したACLEの大会総括。川崎が示してくれたJリーグ勢がサウジ勢に対抗するためのヒントとは?
サウジアラビアのための大会、AFC大丈夫?
ACLEはアル・アハリの優勝で閉幕。サウジアラビアのサウジアラビアによるサウジアラビアのための大会が無事予定どおり(?)終了しました。
今回からレギュレーションが大幅に変わっております。
まずは東西に地区を分けてのリーグステージ。東西各12チームが8試合を行い、それぞれ上位8チームがラウンド16に進みます。ここからはノックアウト。ホーム&アウェイで勝った8チームが準々決勝へ進出。そして今回のサウジアラビアでの準々決勝、準決勝、決勝という形になりました。
リーグステージの西地区、1~3位全部サウジアラビアのクラブでした。4位はカタールのアル・サッド。以下はアル・ワスル(カタール)、エステグラル(イラン)、アル・ラーヤン(カタール)、パフタコール(ウズベキスタン)だったのですが、これら5位以下はラウンド16で全滅しました。
というわけで、西地区からのベスト8進出4チームはサウジアラビア3、カタール1という結果であります。
一方の東地区。1、2位は横浜FMと川崎のJリーグ勢。山東泰山(中国)が途中で棄権して7試合分の結果が無効になったあおりで神戸は5位転落。ベスト8進出は横浜FM、川崎、光州(韓国)、ブリーラム(タイ)。上位4チームからジョホールバル(マレーシア)が脱落しています。
東西対決となる準々決勝、唯一東地区で生き残ったのは川崎でした。光州はアル・ヒラルに7-0、ブリーラムはアル・アハリに3-0、横浜FMもアル・ナスルに4-1。すべて3点差以上という西高東低でございます。川崎は延長の末に3-2でアル・サッドを下しました。
4強のうち3つがサウジアラビア勢。もうサウジアラビア選手権です。しかし川崎は頑張りました。準決勝でもアル・ナスルを下します。アウェイの環境、高温、過密日程をくぐり抜けての決勝進出。
しかし、ついに決勝で力尽きましたね。確かにアル・アハリは強かったです。まあ、ホームスタジアムですしね。そんなに一方的な内容でもなかったですし、川崎の健闘を心から称えたいと思います。
ただこれ、来季もセントラルはサウジアラビアなんですか? ずっとサウジアラビアでやるつもりなんでしょうか。AFC、大丈夫?
どうも当分はサウジアラビアのための大会になりそうな気配が濃厚ですね。外国籍枠はすでに撤廃されていて、補強規模で対抗するチームもないですからね。サウジアラビア勢とどう戦うかはJリーグ勢にとって難関になりそうです。
準々決勝以降の7試合とも先制チームが勝利
川崎の対中東3連戦で、見えてきたものがあったと思います。……



Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。