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理想の雰囲気に近づいた2019年の先へ――ガンバ大阪が満員の大阪ダービーで伝えたいこと

2022.07.14

2022年7月16日(土)、パナソニックスタジアム吹田で通算58回目となる大阪ダービーが開催される。共に大阪府にホームタウンがあるガンバ大阪とセレッソ大阪の一戦は、毎回ピッチ外でも熱い戦いが繰り広げられてきた。そこで今回は、フロントスタッフの奮闘にフォーカスを当てる。両クラブに取材を行い、事業面から大阪ダービーの歴史を振り返る。

『ガンバ大阪編』となる当記事では、顧客創造部の奥永憲治氏と広報部の西尾智行氏に登場いただき、2006年に行われた「紙吹雪」演出の裏側や、2020年にコロナ禍で「無観客試合」となった時の心境、そして「未来の大阪ダービー像」などについて話を聞いた。

ダービーだと認識しているのはこの一戦だけ

――事業面における大阪ダービーの歴史を振り返った時、万博記念競技場での開催で初めて2万人以上(22,232人)の入場者数を記録した2005年シーズンの試合はターニングポイントでした。

奥永「そうですね。(要因として)現在のようなプロモーションを強化した訳ではなく、当時は遠藤(保仁)選手大黒(将志)選手、宮本(恒靖)選手らが日本代表で活躍していたことが大きかったかもしれません。この年はシーズン前に大黒選手がW杯アジア最終予選・北朝鮮で後半ロスタイムに決勝ゴールを決めことも大きな話題になっていたので」

――2005年はガンバがリーグ戦を初優勝したシーズンでもあります。

奥永「ガンバが強くなっていくタイミングであり、この2年前にサポーターの応援が統一されたこと(※)も重要な出来事でした。スタジアムの雰囲気を盛り上げるにはクラブの演出だけでは限界があるので、(統一応援によって)サポーターとのコミュニケーションがスムーズになったことも、集客の面でポジティブな影響があったと思います」

※ガンバ大阪では1999年から約4年間、サポーターが分裂して応援する状態が続いていたが、2003年10月に統一された。

――クラブとサポーターが連係して実施した演出としては、2006年大阪ダービーの「紙吹雪」が印象深いです。

奥永「あれはサポーターから『やらせて欲しい』と要望を受けて実施しました。大阪ダービーの1カ月前くらいから週末に万博(記念競技場)のビジョン下の日陰にサポーターが集まって、新聞紙を切っていた姿をよく覚えています。みんなで新聞紙を持ち寄ったものの全然足りなくて、クラブのホームタウン担当の社員が新聞屋さんにお願いして古新聞をもらいに行ったりもしました」

2006年大阪ダービーの選手入場時、大量の紙吹雪が舞い上がったガンバゴール裏

――この演出は後片付けが大変だったと聞きました。

奥永「試合当日は風が強かったので、スタジアムの隣にある(茨木市立西陵)中学校のグラウンドに新聞が結構な数入り込んでしまって。当時のホームタウン(茨木市)担当だった伊藤(慎次)が学校に『掃除に行きます』と電話して、試合翌日の朝7時くらいにガンバの社員とサポーターが10数人くらいだったかな……が集まって、皆で掃除しました。部活が始まる時間の前までに完了しなければいけなかったので、バタバタした記憶があります」

――「紙吹雪」以降、大阪ダービーでは特別な演出を行うことが恒例となっていきます。スタメン紹介前に“煽りVTR”がビジョンに流されたり、スタジアムDJの仙石幸一さんによる感情的な“前口上があったり……そうした演出に関してクラブとして何か指示はされているのですか?

奥永「ダービーが特別な試合であることは関係者全員が理解しているので、こちらから何か指示をしなくても“煽る”と言いますか、“闘争心を掻き立てる”演出になりますね。そこは信頼があるので、特にこちらから何かを指示することはなく、任せていました」

――奥永さん個人としてはどうでしょう? スタッフとして長くガンバに在籍されている中で、大阪ダービーに対する想いに変化はありましたか?

奥永「その質問で思い出すのは、以前(ヤンマースタジアム)長居のビジターサポーター応援エリアがゴール裏全体から半分に減らされたことです。ガンバのサポーターの数を考えると『エリアを広げて欲しい』と要望したのですが、断られてしまって。(ビジターエリアを広げることで)アウェイでもホームのような雰囲気を作りたかったのですが。スタッフも裏で戦っているんです(笑)。そういう経験があったからこそ『万博では応援で圧倒したい』と、ダービーに関しては他の試合よりも強く思うようになりました」

――クラブスタッフ同士の戦いと言えば、2017年の「ツイッターバトル」は記憶に新しいところです。

奥永「『セレッソは大阪のクラブだけど、ガンバは北摂のクラブ』という投稿に対して、反論したやつですよね」

――最近の例だと、ガンバが大阪ダービーに関する広報で「セレッソ大阪」の名前を意図的に出していないことが一部で話題になっています。

奥永「はい(笑)。『リスペクトが足りない』など、いろいろご意見はいただくのですが、それは違います。あえてクラブ名を出さないことで、ダービーの価値を高めたい狙いがあります。ライバル心を表すためのPRの手段と理解いただければ。『こいつら、またクラブ名を出してないな』と話題になればいいなとも思っています。本当に(セレッソ大阪が)嫌いだったら無視しますよ。そうではない。『ダービー』が重要だからこそ行っています。我々にとってダービーだと認識しているのはこの一戦だけなので」

――2010年に掲げられた、ガンバが獲得したタイトルを誇示する「What you got?」横断幕や、2014年も同様の趣旨でデザインされた「5つの星」コレオグラフィーもそうですが、『煽り』……奥永さんの言葉をお借りすれば『闘争心を掻き立てる』演出やプロモーションは大阪ダービーの醍醐味の1つです。ただ、これは功罪両面あります。

奥永「そうですね。バランスが難しい。パフォーマンスとリアルの線引きが難しくなった結果、問題行動が起きるとクラブとして対応を考えなければいけません。ただ、サポーターが熱くなれるダービーを盛り下げることもしなくない。ここはまだ答えが出せないところですが、淡々とダービーを迎えることはしたくないと思っています」

2006年大阪ダービー、ゴール裏に掲げられた「WHAT YOU GOT?」と書かれた横断幕
2014年大阪ダービーでは、バックスタンドにガンバが獲得したタイトル数を示すコレオグラフィーが掲げられた

――「フェアであること」と「盛り上がること」はトレードオフではないですからね。両立を目指し続けるのだと思いますが、過去57回開催された大阪ダービーの中で最も理想の雰囲気に近づいた試合は何ですか?

奥永「2019年、ガンバが1-0で勝ったパナスタでの試合ですね。満員の状況で倉田(秋)選手がゴールを決めた時の熱気や活気のあるスタジアムの沸き方はプロモーションだけではつくれないものでした。あの雰囲気を経験すれば絶対に『まだスタジアムに行く』と思ってくれると思いますし、現時点では他の試合であれを実現するのは難しい。『GAMBA SONIC』や『GAMBA EXPO』がライトファン層に興味を持ってもらうきっかけ作りだとすれば、大阪ダービーはサッカーの本質的な面白さを伝えられる試合です。ダービーを開催できる環境に感謝して、それを有効活用しなければいけないと思っています」

奥永氏は理想の雰囲気に最も近づいた大阪ダービーとして2019年の一戦を挙げる

ACL決勝で大阪ダービーを

――その翌年となる2020年、パナソニックスタジアムで開催された大阪ダービーはコロナ禍で無観客試合となりました。

西尾「トレーニングマッチのような雰囲気で、選手の声もよく聞こえました。『これは本当に公式戦なのか?』と不思議な感覚になったことを覚えています。あの時は最小の人数で試合運営することが求められていたので、現地に来ることができないスタッフもいました」

――この試合、ガンバは1-2で敗戦。以降、大阪ダービーは苦戦が続いています。

奥永「何か根拠がある訳ではないですが、入場者数がコロナ禍で制限されてからうちが苦戦をしているのは、サポーターの力が大きかったのかもしれないと感じます。まだ声を出して応援をしてもらえる状況ではないですが、もう少しの我慢かなと」

――7月16日(土)に開催される大阪ダービーは2019年以来、初めて入場者数の制限がない中で開催されます。チケットの売れ行きはどうですか?

奥永「満員にしたいのですが、売れ行きは厳しいです。7月11日時点で2万1000人程度の入場者数を予想しています。大阪ダービーで満員にできないことには強い危機感を覚えますね。ファンクラブ先行販売でチケット料金を割引したり、ファンクラブ会員特典である『公式戦招待』の対象に今年から大阪ダービーも追加したり、出来ることは何でもして、2019年の雰囲気に少しでも近づけるようにギリギリまで足掻こうと思っています」

35,861人の入場者数を記録した2019年大阪ダービーの様子

――パナソニックスタジアム完成以降の大阪ダービーは、パートナー企業による演出面でのサポートも特徴です。近年だとTOYO TIRES社の「ビッグフラック」や「バルーン」を使用したスターティングメンバー紹介などがあります。

西尾「私は担当ではないので詳しいことは分かりませんが、TOYO TIREさんは関西に本社がある企業ということもあり、大阪ダービーにおけるサポーターの熱量を評価していただいています。一緒にスタジアムを盛り上げたいという同社の考えから、近年は冠スポンサーになっていただいているという経緯です」

2019年大阪ダービーではバルーンを使用したスターティングメンバー紹介が行われた

――今年の大阪ダービーの冠スポンサーはロート製薬社になりました。

奥永「ダービー当日は、ロート製薬さんのご協力で来場者先着20,000名様にユニフォーム型うちわをプレゼントする他、毎年好評の企画『デオウ選手権』も開催します。アイスの配布も予定していますし、花火も楽しんでもらえればと思っています。もう一度、2019年の熱気を取り戻すために、ファンクラブ会員の方にダービーの開催をお知らせするハガキを送ったり、大阪モノレールの車内に広告を出稿したり、繰り返しですが、出来ることは何でもします」

昨年のデオウ選手権は東口順昭選手が優勝した

――多くのお客さんに大阪ダービーを観戦していただければいいですね。最後にお二人からサポーターに一言いただけますか?

西尾「私は2012年にガンバに入社したので、最初から『大阪ダービー=満員』というイメージです。だから、満員じゃないダービーは違和感があるというか……。たくさんのお客さんが入ってくれるからこそ生まれる雰囲気もあるはずなので、今年の大阪ダービーにも一人でも多くの方に来ていただければと思っています」

奥永「個人的には将来、ACL決勝で大阪ダービーを開催したい。当然、ガンバが勝ちます。2011年ACLベスト16で(セレッソ大阪に)負けているので、その借りは返さなければいけない。その舞台は高ければ高い方がいい。お互いに意識し合って、切磋琢磨して、大阪ダービーがアジアNo.1を決めるくらいのカードになって、大阪がアジアのサッカーの中心になればいいですね」

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Photos:©️GAMBA OSAKA

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ガンバ大阪大阪ダービー

Profile

玉利 剛一

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime

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