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フロントスタッフが語る“葛藤”と“覚悟”。「何を行えば、このゴールに近づけるのか」――新生ガンバ大阪の現在地(後編)

2022.06.07

2022シーズンよりガンバ大阪が目標として掲げる「日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド」とは何か。ビジネスサイドからその具体を探る本企画の後編は、顧客創造部の奥永憲治氏と石丸広希氏に登場いただく。

先月発表された「新マスコット」と、サッカーと音楽をコラボレーションしたイベント「GAMBA SONIC」を担当する両名の言葉から、クラブの考えや見据える未来像に迫る。

前編はこちら

『戻ってきてもらう』ための施策だけではなく

――最初にお二人が所属している「顧客創造部」の業務内容を教えてもらえますか?

奥永「簡単に言えばBtoCの部署です。チケット、グッズ、ファンクラブ……個人のお客様を対象とした事業を行っています。部署内には『企画課』と『ホームタウン推進課』があって、私は企画課の課長として試合開催時のイベントや、集客に向けたプロモーションなどを担当しています」

石丸「私も同じ課でグッズを担当しています。企画や製造、在庫管理をはじめ、ブルスパジオ(グッズショップ)やオンラインショップの運営を担当しています」

――新コンセプトを掲げてスタートした2022シーズン、クラブを取り巻く状況は難しいものになっています。依然として新型コロナウイルスへの警戒が必要で、チームは主力選手にケガ人が続出し、15試合消化時点で勝ち点17の13位。スタジアム入場者数も伸び悩んでいます。

奥永「そうした影響はあると言わざるを得ないでしょうね。(コロナ禍前の)2019年の平均入場者数は2万7708人で、今年は現時点で1万5496人。もうスタジアムで試合を観ない生活に慣れた方もいるかもしれませんし、ガンバに興味がなくなってしまった方もいるでしょう。『戻ってきてもらう』ための施策だけではなく、新しくファンを開拓することの必要性を痛感しています。なので、今年は2019年以来となるホームタウンの皆さんに観戦してもらえるイベント(ホームタウン応援デー)をG.W.に開催して、高槻市と吹田市在住の小中高生を試合に無料でご招待し、大人は30%OFFでチケットを発売しました」

第12節 ヴィッセル神戸戦ではミニ動物園も開催された

――ガンバ大阪はスタジアムへの来場回数をベースに『G0~G5』の6段階でファン層を定義しています。新規層にあたる『G0~G1』の開拓が重要である一方で、数としてはコア層・熱狂層に該当する『G4~G5』が多い。クラブとして、コミュニケーションの比重などちらに重きを置かれますか?

奥永「両方大切です。ただ、コア層は1人戻ってきてくれれば(同一人物が)10試合観戦してくれる可能性があって、その重要さはクラブとして理解しています。そうした層へのコミュニケーションは今後より増やしていく予定です」

クラブ内で定義されている6段階のファン層(ガンバ大阪提供)

――新規開拓に繋がる「ホームタウン応援デー」を開催しつつ、並行してOB選手が出演するイベントが増えている理由はそこにある訳ですね。

奥永「2018年にガンバ大阪OB会が発足して、クラブとしてOB選手とコミュニケーションが増えたことも理由としてはあるのですが、昔からガンバを応援している人がスタジアムに来場するきっかけになればいいなという狙いはありますね」

――集客をはじめ、グッズの売上、ファンクラブ会員数……どれもチームの成績に大きく影響を受けてしまうことについてはどう捉えていますか?

奥永「チームの成績は間違いなく影響します。例えば、後半アディショナルタイムに失点してチームが負けた直後に『よし!グッズ買って帰るか』とはならないですよね。試合に負けることでタイミング的に実施できなくなるプロモーションもあります。ただ、そうした影響をどう最小限に留めるのかを考えることも私たちの仕事ではあるので」

新マスコットの名前に9000件以上の応募

――先月、新しいマスコットの誕生が発表されました。ガンバボーイも活動を継続するとのことですが、どのように棲み分けされるのでしょうか?

石丸「新マスコットはクラブの新コンセプトを推進する存在として、SNSやホームページなどデジタル領域での活動が中心になる予定です。試合日にはスタジアムでも活動するので、ガンバボーイが外のステージで踊っている時には、(新マスコットは)スタジアム内のコンコースでお客様と交流するなど、役割分担をしていく形になると思います」

――新マスコットの名前は一般応募の中から決定されます。発表のタイミングは決まっていますか?

石丸「発表は夏から秋にかけてを予定しています。想像を超える9000件以上の応募があり、現在クラブ内のプロジェクトメンバーで議論を進めています。“モフモフ感”のある可愛らしい名前が多かったですが、漢字やイタリア語の案もありました。たくさんのご応募ありがとうございました」

第11節 コンサドーレ札幌戦前に発表された新マスコット

――小野忠史社長は集客の次に重視しているのが「グッズ」だと話されていました。新マスコット発表当日に関連グッズの予約販売を開始したことからも、その本気度が伺えました。

石丸「少し販売は苦戦していますが(苦笑)、これからサポーターとの接点が増えて、性格を知ってもらって、愛着が出てくれば、グッズを買っていただける方も増えてくるとは思います」

――グッズ関連では、ユナイテッドアローズとのコラボアイテムが好評ですね。

石丸「ありがとうございます。新しいエンブレムに似合うデザインを考えていただけたことが大きかったと思います。現状、主な購入者はコア層なので、今後は新規層にも購入いただけるラインナップを揃えることが課題です」

新エンブレムがデザインされたパーカーは発売後すぐに完売

「私たちがガンバをどのように見せたいのか」

――事業面でのトピックスとして、6月18日の横浜F・マリノス戦での開催が発表された「GAMBA SONIC」が話題です。本イベントの開催経緯を教えてもらえますか?

Def TechがLiveパフォーマンスを行う「GAMBA SONIC」は6月18日横浜F・マリノス戦で開催

奥永「先に背景をお話すると、昨年10月に新しいクラブコンセプトと、目指すゴールが『日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド』であることを発表させてもらいました。私の立場として何を行えば、このゴールに近づけるのかをずっと考えていました」

――クラブの公式説明をそのまま引用すれば、「サッカーのフィールドに留まることなく、新たな体験を生み出すことによって、最高の熱狂を生み出し、人々の生活に新たな様式をもたらす」ことですね……アプローチ方法が多様にある分、難しさも感じます。

奥永「ピッチの中のことは、私たちではどうしようもできない部分が大半なので、試合以外のところで多くの人に楽しんでもらい、スタジアムに来てもらうためには何を行えばいいのかを社内で議論して。そうした中で、昨年はゴダイゴさん、2019年には氣志團さん、2018年にはDA PUMPさんにパナスタでパフォーマンスをしていただいて、お客さんが楽しまれている様子を思い出しました。サッカーと音楽の親和性は高いよね、と。これが『GAMBA SONIC』の誕生経緯です」

2019年、パナソニックスタジアムで「One Night Carnival」を披露した氣志團

――過去を振り返ると、2014年にはシーズン振り返り映像のBGMに採用された広沢タダシさん(曲名:サフランの花火)がサポーター間で人気を集めました。今シーズンの選手入場時曲として採用されている「Bolero」(Def Tech)も好評です。クラブ内での選曲基準を教えてもらえませんか?

奥永「『Bolero』は選手が実際に入場するシーンを想像しながら『一番カッコよくなる曲は何か』をテーマに、スタッフから候補曲を募って決めました。以前は演出会社からの提案の中から選曲することもありましたが、今回は『私たちがガンバをどのように見せたいのか』を今まで以上に大切にしました」

2022シーズンの選手入場曲として採用されている『Bolero』

――「GAMBA SONIC」をはじめ、新しいクラブコンセプトで運営される今シーズン以降は、クラブスタッフとして扱う業務範囲が広がっていくであろう中で、何か意識していることはありますか?

石丸「そうですね。私も年齢を重ねていくので、昔の感覚のままではダメだということを意識しています。日頃から流行っているものをリサーチしたり、興味がないジャンルのものも受け入れたり、新しいことを企画する上で、常に情報をアップデートするようにしています」

奥永「新しい企画を考え、運営していくのは大変なことです。ただ、ファン・サポーターと一番接し、理解をしないといけないのは私たちなので、クラブ内で(イベントなどを)創造することは重要なことだとも思います。もちろん、クラブだけでできることに限界はあるので、外部の方にもお手伝いしてもらいながらですが、クラブスタッフが主体的に関わっていくことで、仮に失敗しても次に繋げることができます。あと、個人的には私の年齢を考えると、年寄りが企画に関わり過ぎるのも良くないと思っていて。若いスタッフの感覚で『GAMBA EXPO』や『GAMBA SONIC』を時代に合わせた形でアップデートをしてくれることに期待したいですね」

――「GAMBA EXPO」は過去4回の開催時期から“夏のイベント”としてのイメージが定着しつつあります。今後の「GAMBA SONIC」を含め、各種イベントの開催時期の固定化は考えられていますか?

奥永「サポーターの方から『今年の夏はGAMBA EXPOやらないの?』という声をいただきますし、開催時期を固定化するメリットはあると思っています。G.W.は『家族向けのイベント』、初夏は『GAMBA SONIC』、夏は『GAMBA EXPO』、最終節は『大感謝祭』……日本人は季節イベントが好きですしね。イベントの開催時期が定着していけば、スタジアムに来てもらうきっかけになるかもしれません」

――ということは、今年の夏も「GAMBA EXPO」は開催されるのでしょうか?(取材日:5月24日)

奥永「はい。8月14日の清水エスパルス戦で開催します。今年はユナイテッドアローズさんにデザインをお願いした記念シャツを来場者にプレゼントする予定です。7月に行われる3試合では、試合前に花火をあげた演出も行います」

「GAMBA EXPO 2022」で来場者にプレゼントされる記念シャツ

石丸「ユナイテッドアローズとのコラボレーションアイテムに関しては、秋頃に第3弾も予定しています。シンプルなデザインが好評でしたので、あのテイストに近いデザインを考えています」

奥永「SNSで『ガンバのスタッフはエンブレムが大きくデザインされたものが好き』、『あいつらはロゴドーン狂だ』と言われているのですが、そんなことはないです(笑)。そこはアイテムによって変えていることをご理解いただければ幸いです」

――(笑)。では、最後に2022シーズン後半戦に向けて読者の方に一言いただけますか?

奥永「私たちの事業のメインが試合であることは事実で、その満足度を高めることが最優先です。ただ、クラブの収益を増やしていくために、試合以外のところでもOBのトークショーや、スタジアムのレストランを活用した食事会など、新しい試みはしっかりと増やしていかなければと考えています」

石丸「今後も話題性のある商品企画を通して、お客様へ驚きと楽しみの提供をし続け、グッズを通してガンバブランドの浸透と一体感のあるスタジアムの雰囲気づくりを目指して参ります!」

KENJI OKUNAGA
奥永憲治(写真右)

(株)ガンバ大阪顧客創造部企画課課長。大阪府出身。大阪市立大学卒業後、大阪体育大学大学院へ進学し、スポーツマネジメントを専攻する。大学院修了後、2001年からガンバ大阪へ入社。パートナー担当や運営担当、ホームタウン担当、チケット担当、広報担当を経て、2021年より顧客創造部所属。

KOKI ISHIMARU
石丸広希

顧客創造部企画課所属。大阪府出身。追手門学院大学を卒業後、スポーツグッズ製作会社に入社、2018年よりガンバ大阪へ入社しグッズ担当として勤務

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Photos:©️GAMBA OSAKA , Getty Images

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ガンバ大阪

Profile

玉利 剛一

1984年生まれ。関西学院大学社会学部卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリ開発等を担当。仕事と並行して通学した筑波大学大学院でスポーツ領域の修士号を取得。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」管理人。