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前向きな後悔を経て。白井陽斗がファジアーノ岡山で目指すもの

2022.03.08

2022シーズン、ジュニアユース時代から長年在籍したガンバ大阪を離れ、ファジアーノ岡山に移籍した白井陽斗。ガンバ大阪U-23では結果を残すも、ケガの影響もありトップチームでの出場機会はあまり得られなかった。プロ5年目を迎える今年、どのような心境で新しい挑戦に挑んでいるのか。本人に話を聞いた。

森下監督の厳しさは“優しさ”

――2年前の2020シーズンについての話から聞かせてください。白井選手にとってプロ3年目、当時所属していたガンバ大阪U-23でのパフォーマンスが格段に高まった印象があります。

 「プロ2年目まではうまいプレーをやろうとしていたのですが、森下(仁志)監督の影響もあって、不格好でもいいからとにかく全力を出すことを意識するようになったのが大きかったですね」

――森下監督も、当時の白井選手について「誰よりも泥臭く走れる選手になった」と評価していました。

 「森下監督から『若い時の俺にそっくりだ』と言われたことがあるんです。それはプレースタイルではなくて、メンタルの部分。例えば、ボールを失った時にすぐ下を向いてしまうところとか、気持ちの部分はよく指導されました」

――森下監督がメンタルに対するアプローチを重視していたのは有名な話ですが、その具体的な方法としてはフィジカルに強い負荷をかける練習だったと聞いています。

 「そうですね。練習に行くのが嫌になるくらい厳しかったんですが、おかげで試合中はフィジカル的にも、メンタル的にも余裕を持てるようなりました」

――「森下監督=厳しい人」という印象を持っている人は多いと思います。白井選手にとってはどのような存在でしたか?

 「森下監督に関しては“厳しさは優しさ”なんです。選手のことを思う優しさから、ハードな練習を課したり、厳しい言葉をかけてもらっていると思っていたので。ピッチ外では優しいということもなかったですけど、そういう指導は当時の若手選手たちに合っていたと思います」

現在はガンバ大阪ユースの監督を務める森下仁志

――2020シーズンはFWから右WBへポジションのコンバートもありました。

 「相手を背負うよりも、裏のスペースに抜けたいタイプなので(右WBは)やりやすかったです。ボールに触る回数が増えるのでリズムも出ますし、得点にもよく絡めていたので。複数ポジションができて損はないので、このポジションもアリだなと」

――右WBとして自身の成長を実感した試合やシーンはありますか?

 「2020年の2-0で勝ったロアッソ熊本戦(ホーム)ですね。85分に自分が2点目を決めたんですが、その時間帯でも長距離のスプリントができているんですよ。ゴールを決めた瞬間は気が付かなかったんですけど、ハイライト映像を後から見返して自信になりました。体力的にキツイという感覚もなかったので」

020年9月27日 J3リーグ第18節 ガンバ大阪U-23対ロアッソ熊本戦で2点目を決めた白井

――しかし、その試合の翌月に行われた第20節SC相模原戦で「右ヒザ前十字じん帯損傷」という大ケガを負ってしまいます。

 「ケガをした瞬間に前十字(じん帯損傷)の可能性が頭をよぎりましたけど、検査まではなるべく考えないようにしていました。シーズン中に復帰するイメージもあったので、検査結果を聞いた時はショックでしたね……。けど、今振り返れば、あのケガのリハビリで体が一回り大きくなりましたし、メンタル的にも強くなれたので良かった部分もあります」

――長期間のリハビリ中に支えになったものは何ですか?

 「当時、同じタイミングでリハビリをしていた(小野)裕二くん(現サガン鳥栖)からいろんなアドバイスをもらえたことはありがたかったですし、他の先輩方からも『(復帰を)待ってるよ』と声をかけてもらうたびに、頑張ろうという気持ちにさせてもらえました」

――リハビリ期間中に、ガンバ大阪U-23は活動を終了します。多くのチームメイトが他クラブに移籍し活躍する姿を目にして、思うところがあったのではないでしょうか?

 「正直、焦りはありましたね。けど、ガンバに残ることで得られるチャンスもあると思っていたので、感情をコントロールしながら、元チームメイトの活躍はポジティブに良い刺激として、モチベーションにしていました」

―ケガからの復帰後、実際にそのチャンスがめぐってきます。昨シーズンのJ1第32節・浦和レッズ戦でFWとして先発出場を果たしました。

 「一言で言うと後悔……前向きな後悔です。前日練習でスタメン出場することがわかった時、宇佐美選手や東口選手から『いつも通りリラックスしてプレーすればやれる』と声をかけてもらったこともあって試合も緊張はしなかったのですが、チームとしての結果も良くなかったですし(1-1)、自分も前半で交代になったので……もっとやれたはずという後悔はあります」

――「もっとやれた」と感じた部分をもう少し具体的に教えてもらえますか?

 「映像を見返すと、守備の時間が長い試合でしたけど、自分のところには結構ボールが入ってきているんですよ。けど、それをワンタッチでボランチに落としたり、簡単なプレーばかりを選択していて。ボールを失うことを怖がって、ターンして前にドリブルで運ぶとか、積極的なプレーができなかったところですね」

――ガンバはU-23とトップチームが違うサッカーをしていましたが、両方を経験した選手として難しさを感じる部分はありましたか?

 「ありますね。クラブとしてある程度は統一したサッカーを目指していたと思うのですが、監督が違って、チームメイトも違えば仕方ない部分もあるのかなと。U-23でうまくいったことが、トップではそうならなかった。トップに自分を合わせるのか、U-23で手ごたえをつかんだプレーを続けるべきなのか、ずっと悩んでいました」

結果がすべて

――2022シーズンは練習参加を経て、ファジアーノ岡山への完全移籍が決まりました。

 「代理人の方から『ファジアーノから練習参加の話がある』という連絡をもらって、即答で『行きたいです』と。(代理の連絡から)2日後にはチームに合流しました。ファジアーノに対する印象はあまりなかったのですが、合流して感じたのはすごく明るいチームで、コミュニケーションも取りやすくて、すぐに溶け込めました」

――木山隆之監督とは昨シーズンもガンバ大阪のコーチとして接点がありましたが、白井選手に期待されていることは何ですか?

 「シンプルです。まずゴールを取ること。その上で、攻守両面でチームのために走ること。それが自分の特徴でもあるので。ボールに直接関わらない場面でもチームを助けられる選手になることは期待されていると思います」

――開幕2試合を終えた段階で、今年のファジアーノは3トップを採用しています。このシステムでは、白井選手は右FWで勝負することになりますか?(取材日:3月2日)

 「そうなると思います。チームとしては、奪って速攻という形が狙いとしてあって、第2節のチアゴ(アウベス)のゴールも、ずっと練習してきた守備から攻撃の形です。だから、まずは守備を意識しつつも、攻撃に関しては遠慮しないで自分で仕掛けていきたい。でも、その判断は難しいんですよ。パスを選択した方がチームのためになる時もあるので」

2022年2月27日 J2リーグ第2節 ファジアーノ岡山 対 徳島ヴォルティス戦で先制点を決めたチアゴ アウベス

――得点やアシストといった結果で評価されるポジションですからね。

「それはガンバに在籍した時に思い知らされました。結果がすべてだって。だから、岡山ではそこにはこだわりたいです」

――具体的な数字目標はありますか?

「あまり数字は設定したくないんです。(ゴールを)取れるだけ取る。そういうメンタルでプレーしています」

――白井選手は今年でプロ5年目となり、大卒1年目の選手と同学年です。昨今、大卒Jリーガーの活躍が目立ちますが、高卒でプロの道を選択した側として、この4年間をどのように捉えていますか?

 「まず人と比べると精神的にしんどくなるので、他の選手のキャリアは意識しないようにしています。自分は自分として、常に挑戦しようと思い続けてきました。その前提があった上で回答すると、高卒でプロを選択したことで、(大卒と比較して)4年間先に社会を経験できるメリットはあると思います。社会の厳しさ、楽しさ……自分で稼ぐようになって、買いたいものも買えますし(笑)。どっちも良さがあると思いますね」

――今、4年前に戻れたとしても、大学ではなくプロを選択しますか?

 「絶対にプロを選びます」

――では、最後に今シーズンへの想いを聞かせてください。

 「J2はガンバで一緒にプレーした先輩やチームメイトが多くいるので、毎試合楽しみですね。コンディションも少しずつ上がってきているので、監督やチームメイトに認めてもらうまで頑張って、出場した時は『うまい』ではなく『すごい』と思ってもらえるプレーを目指して、応援してくれる人に元気を与えられたらなと思います」

HARUTO SHIRAI
白井陽斗

大阪府枚方市出身。ガンバ大阪門真ジュニアユース、ガンバユースを経て、2018年よりトップ昇格を果たす。抜群のスピードを武器とした裏への飛び出し、積極的な縦への仕掛けが持ち味。2022シーズンより練習参加を経て、ファジアーノ岡山に加入した。

Photos:©FAGIANO OKAYAMA , Getty Images

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Profile

玉利 剛一

1984年生まれ、大阪府出身。関西学院大学卒業後、スカパーJSAT株式会社入社。コンテンツプロモーションやJリーグオンデマンドアプリの開発・運用等を担当。その後、筑波大学大学院でスポーツ社会学領域の修士号を取得。2019年よりフットボリスタ編集部所属。ビジネス関連のテーマを中心に取材・執筆を行っている。サポーター目線をコンセプトとしたブログ「ロスタイムは7分です。」も運営。ツイッターID:@7additinaltime

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