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「満員になる」ことを目指して。セレッソ大阪事業部長が語る大阪ダービー

2022.07.13

2022年7月16日(土)、パナソニックスタジアム吹田で通算58回目となる大阪ダービーが開催される。ともに大阪府にホームタウンがあるセレッソ大阪とガンバ大阪の一戦は、毎回ピッチ外でも熱い戦いが繰り広げられてきた。

そこで今回は、フロントスタッフの奮闘にフォーカスを当てる。両クラブに取材を行い、事業面から大阪ダービーの歴史を振り返る。今回、敵地に乗り込む立場となる『セレッソ大阪編』では、セレッソ大阪からは事業部長の猪原尚登氏にダービーはもちろん、事業部としての取り組みについて語ってもらった。

30年で築いた“育成年代から鎬を削る”歴史

――世界各国、全国津々浦々様々なダービーがある中で、大阪ダービーの魅力というのはどんなところにあると考えているかを最初に聞かせてください。

 「セレッソは、Jリーグ開幕から2年遅れでJリーグに参入しました。そこから大阪ダービーの歴史がスタートしたわけですが、最初からここまで盛り上がるイベントだったかというとそうではありません。30年近く続く中で、数あるダービーの中でもすごく注目されている試合になってきたかなと感じています。中でも、この間に育成年代でもしのぎを削る関係性になってきています。中心選手にアカデミー出身者が増えていて、育成年代からこの試合に懸ける想いであったり、どのように感じているかであったりというのが自ずと身についてきています。ですから選手たちもそうですし、サポーターのみなさんもこの試合は負けられない一戦だという想いが強いと思います」

――猪原さんが社員として大阪ダービーに携わるようになったのはいつ頃からなのでしょうか?

 「私は1997年に入社していまして、入社してすぐのダービーでは当時ガンバにパトリック・エムボマ選手が在籍していて、ホームだった現ヤンマースタジアムでの試合におよそ2万人が来場された試合だったことを覚えています。そこから四半世紀のダービーを現場で経験しています」

――それはもう、クラブの生き字引と言っても過言ではないですね。

 「選手時代も含めると(森島寛晃)社長が一番長いですしクラブの中で一番ではないのですが、かなり昔から携わっていますね」

――過去の大阪ダービーの中で、特に印象に残っているゲームはありますか?

 「個人的には、いずれもアウェイゲームになるのですが今コーチをしている高橋大輔が終了間際にゴールを決めて次ラウンド進出を果たしたACLのラウンド16での試合や、アディショナルタイムに決勝ゴールを決めて決勝に進んだ2017年のルヴァンカップ準決勝のような、新しい歴史を作るきっかけになった試合がダービーにはあるのかなと思います」

2011年のACLで実現した大阪ダービーでの1枚。選手、サポーターの喜びぶりが、この一戦に懸ける想いを現している

――そういうところで対戦するというのも、因縁めいたものを感じますね。事業面・演出面で言いますと、今年5月のダービーではオリジナルフラッグのプレゼントを実施されていました。事業面・演出面で印象に残っている過去の大阪ダービーはありますか? あるいは、大阪ダービーの開催にあたって意識していることなどあれば教えてください。

 「『満員になる』ということに大阪ダービーの価値が反映されると考えていて、いろいろなことを行って『満員にする』というのが事業面で目標にしています。来場を呼びかけることももちろんですが、中継を観ようということをCMで告知していただいたり、フードに関して大阪にちなんだお店にたくさん来ていただいたり、ホームをセレッソカラーで染めようと企画した前回のフラッグもそうですし、スポンサーさんに『来場された方に喜んでもらえるものをお願いできませんか』と相談したり、いろいろな企画を組み合わせて『満員にする』ことを目指してきました」

――ダービーの盛り上げに関して、普段はライバルではありますが両クラブ間で話し合いをしたりはするものなのでしょうか?

 「ダービーに向けて特別に、というのはそれほどありません。ただ、事業面のところで質問をしたりはしています。また、ダービーに関して言うと、本来ならそのようなことはしなくていいのですが、最近はセキュリティのところで話をすることはあります。そういうところに重きを置くことになってしまっているのは、ちょっと残念ではあります。もったいないコストがかかってしまっていますので。

 それから、先ほどお話したダービーの『価値』という面で言いますと、『怖い』という印象を持たれてしまいます。ピッチ上でもそうですし、オフ・ザ・ピッチのところでもリスペクトを持ってやっていかないといけないというのが欠けてしまっているのかなと感じています。そこをしっかりやっていかないとファンが増えていきません。盛り上がる試合だからこそ、想いが強い試合だからこそ観に行きたいと思ってくださる方もいると思いますので、そのあたりのバランスは難しいところだなと感じています。大阪ダービーだから行きたいと思っているライト層の方をうまく取り込んでいってファンになってもらうことが大事だなと思っていますが、ライト層の方が来場しづらい環境になってしまうのは非常に残念なことですから。我われとしてはサポーターの代表の方とコミュニケーションを取ったりしていますので、そういう雰囲気にならないようにしていければと考えています」

――ダービーゆえに熱くなり過ぎて悪い面が出てしまった部分かと思いますが、対照的にコロナ禍期間は無観客でダービーを開催せざるを得ませんでした。どのように感じておられましたか?

 「やっぱり、不思議な感じがしましたね。リモート応援は行っていましたが、たくさんの方に来ていただいて、声を出してもらってという全部がそろって初めて、一つの作品じゃないですが大阪ダービーが完成する部分がありますので。今までに見たことのない光景で、ピッチに出れば集中して関係なかったとは思いますが、選手たちのモチベーションにも影響は合ったのかなと思います。スタジアム全体の雰囲気からすると惜しいと言いますか、いろんな方に現場で見てもらいたいなと思いました」

――事業面で見ても、観客が来られない中でどう盛り上げていくのか難しい部分があったのではないかと想像しますがいかがでしょうか?

 「他のクラブも取り組んでいたことではありますが、座席をピンクに染めようということで無観客ですがチケットという形で買っていただいて、ガランとした中でもセレッソらしいスタジアムにしようということは行いました」

無観客開催となった2021年5月、セレッソホームで開催された大阪ダービーのスタンド。スタンドがピンク色に染め上げられ選手たちを後押しした

来たる30周年に向けて

――2021年から、ホームスタジアムが「ヨドコウ桜スタジアム」になりました。新スタジアムになったことで、事業面でやれることが増えたといった変化はあるのでしょうか?

 「コロナ禍でのスタジアム利用開始ということで比較が難しい部分はあるのですが、サッカー専用スタジアムになって雰囲気の面で、声援をより近くで体感できるようになり後押しを感じやすくなったかなと感じています。事業面で言いますと、照明の部分が変わりました。環境面に配慮してLED化されており、照明による演出ができるようになりました」

――ガンバは30周年を機に「日本を代表するスポーツエクスペリエンスブランド」をコンセプトに掲げ、エンブレムの変更や有名ブランドとのコラボなど事業面での取り組みが目立っています。ライバルとしてどのようにご覧になっていますか?

 「ガンバさんに限らずですが、続々と30周年を迎える中で刷新したり、積み上げてきたものを一段上にというふうに掲げられていると思います。事業面で言えば、今はガンバさんや我われだけでなく、どのクラブも『コロナ禍で離れてしまった方を戻す』ということに取り組んでいる段階だと思います。

 早くそこにたどり着ければと思っていて、我われも今年の重点施策として、そういう方にいかに戻ってきていただくかと、もう一つは来ていただいている方に家族やお友達などを誘ってもらって初めて来場していただく方を増やすことに取り組んでいます。セレッソとしても、来年の12月で法人化して30年目を迎えます。今まさに、クラブの中で30周年に向けたプロジェクトを立ち上げて動き出しているところです」

――それはサポーターの方にとっては楽しみですね。今お話いただいたファンに戻ってきてもらう施策として、「誘い誘われプロジェクト」によりファンコミュニティの拡大を図っておられるかと思います。企画の意図について説明してもらえますか? また、そうやってファンの輪を広げていくにあたってはSNSの活用も重要になってくると思います。そこに対するセレッソの考えを聞かせてください。

 「スポーツに限らず、いろいろな商品を売っていくにあたって『口コミ』というのは有力な媒体になりますよね。セレッソへのロイヤリティが高い人がそういうことを行うことでインフルエンサーになると思いますし、ちょっと来てみた方が楽しかったということを伝えてくれるのも大きいです。ただ、それにはしっかりとした伝えるものがないといけません。ですから、なるべく伝えやすいものを用意したり、あるいは初めて来場される方を連れて来られた方にどうやって感動してもらうか、体感してもらうかということは意識しています。誘う側の方に魅せるもの、(誘う際に)使ってもらいやすいものを準備するといいよねという話はしています」

――スタジアム内で撮影した動画に関するガイドラインが変更となりました。クラブにとってやりやすくなった部分はあるでしょうか?

 「そこは大きいと思っています。クラブとしてはまだ本格的には稼働できていないのですが、リーグもTikTokと契約しましたし、そういったツールを使っている若年層へのアプローチができると考えています」

――大阪ダービーの熱さを伝えるのに動画はこの上ないコンテンツだと思いますし、見せられるものを用意するというのは大事になってくると思います。では最後に、来たるダービーに向けた意気込み、ファンへのメッセージをお願いします。

 「現在置かれている状況は関係なく、両クラブとも勝たないといけないというプライドと意地がはっきりと出てくる試合になりますので、気持ちの面で上回ることが大事です。その上で、セレッソとしてはさらに上を目指すために、上位に食らいついていくためにも落とせない試合です。そういった試合なのでサポーターの方にはスタジアムで、あるいは『DAZN』を通してぜひ応援をいただきたいです」

NAOTO IHARA
猪原尚登

1997年に大阪サッカークラブ株式会社(現 株式会社セレッソ大阪)に入社。当時では珍しい新卒採用。チケッティング、ホームタウン、MD、ファンマーケティング、パートナーシップなどのクラブの事業領域全般をこれまでに担当。2012年からJリーグのアジア戦略がスタートするタイミングと同じく、セレッソ大阪もアジア戦略をスタート。スタート時から担当し、タイのバンコクグラスFC(現 BGパトゥムユナイテッド)とのパートナーシップ、シンハービールとのパートナーシップもスタート時から担当している。2021年2月から株式会社セレッソ大阪の事業部長に就任。

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ガンバ大阪 vs セレッソ大阪

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セレッソ大阪大阪ダービー

Profile

久保 佑一郎

1986年生まれ。愛媛県出身。友人の勧めで手に取った週刊footballistaに魅せられ、2010年南アフリカW杯後にアルバイトとして編集部の門を叩く。エディタースクールやライター歴はなく、footballistaで一から編集のイロハを学んだ。現在はweb副編集長を担当。