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エッセンスを活用し巧みにアレンジ。ジュビロ復権を託された、フベロ流ポジショナルプレー

2020.07.11

昨季終盤、ジュビロ磐田の監督に就任するや否やチームの状況を劇的に改善させたフェルナンド・フベロ監督。名門復活を託された指揮官の、「ポジショナルプレーの考え方をベースとし、選手個々のアクションをよりシンプルに効率的に行えるようアレンジしている」というチームの機能性について、ジュビロ磐田を長年追い続けている五百蔵容氏に分析してもらった。

コモディティ化するポジショナルプレー

 2008-09シーズンにグアルディオラのバルセロナが世界を席巻した時、そのサッカーには圧倒的な称賛が送られました。「アリーゴ・サッキ以来の、サッカーにおける革命」という最上級の賛辞を筆頭に、一時期「特別なもの」「容易に模倣しがたいもの」という目線を多くの議論が含んでもいたように思います。

 時には70%以上に達するボール保持率、相手のボール保持を許さぬ並外れた強度・精度のカウンタープレスによるボール奪回、爆発的な得点力に流れるようなパスワーク。それは「攻守一体」というお題目を現実のものとするアタッキングフットボールの理想型とも呼べるレベルに達しており、リオネル・メッシのような異能をはじめシャビ、アンドレス・イニエスタ、セルヒオ・ブスケッツなど下部組織出身の選手たちを中心としたグループワークが目立ったこともあって「特別な監督と特別な選手たちによって実現した、特別なサッカー」「バルセロナ以外では実施不可能なもの」とする見方には説得性がありました。

 その一方で、このチームがプレーした試合の数々から観察される明々白々な再現性、同種のシチュエーションで起こる同種のアクションと結果――とりわけネガティブトランジション、カウンタープレスの局面――に注目し、天才の演出するファンタジーではなく、復元可能な論理と方法がそこにはあるのではないか?とする見方も、時が経過するにつれ支配的になってきました。

 あのバルセロナが残した試合の分析が進み、ペップ・グアルディオラ本人がシーズン終了後のカンファレンスやレビューなどで、その方法論の一端を同業者や若手指導者に隠すことなくシェアし、彼のみならずジョゼ・モウリーニョなど成功した同世代の指導者が依っているトレーニング理論、手法が広まっていくにつれ、「“サッキ以来の革命的なチーム”が、実際には何をやっていたのか」が明らかになっていき、“ポジショナルプレー”は広汎に学習可能なもの、個々のチーム事情に合わせ要素をリダクション、エッセンスを最適化しながら導入可能なものになっていきました。

 グアルディオラがモダンサッカーの方法論を統合して再定義した“ポジショナルプレー”は、今やコモディティ化しつつあると言えます。(その実際は『footbollista』本誌で掲載・展開されてきた報告や議論、レナート・バルディ著『モダンサッカーの教科書』、 林舞輝著 『「サッカー」とは何か 戦術的ピリオダイゼーションvsバルセロナ構造主義、欧州最先端をリードする二大トレーニング理論』、 山口遼著『「戦術脳」を鍛える最先端トレーニングの教科書 欧州サッカーの新機軸「戦術的ピリオダイゼーション」実践編』などからもうかがい知ることができます)

 コモディティ化したポジショナルプレー。

 例えば、ヴァイッド・ハリルホジッチ監督の日本代表が最後の欧州遠征で戦ったウクライナ代表や、森保監督の日本代表がアジアカップ決勝で戦ったカタール代表などはその具体例となるでしょう。2008-09シーズンには世界最先端のものと見なされていたグアルディオラの(その流れを汲む)“ポジショナルプレー”が、10年も経たないうちに従来は「チームとして集まる期間が短いため、クラブチームのような戦術は実践できない」とされてきた代表チームにおいてすら、チーム事情や選手のレベルに最適化された形で実装されるに至っています。

 世界に広がる、コモディティ化したポジショナルプレー……。 2019シーズン終盤にジュビロ磐田の監督に就任したフェルナンド・フベロのサッカーも、その1つに数えられると思われます。

フェルナンド・フベロの戦術とチーム作り

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ジュビロ磐田フェルナンド・フベロポジショナルプレー

Profile

五百蔵 容

株式会社「セガ」にてゲームプランナー、シナリオライター、ディレクターを経て独立。現在、企画・シナリオ会社(有)スタジオモナド代表取締役社長。ゲームシステム・ストーリーの構造分析の経験から様々な対象を考察、分析、WEB媒体を中心に寄稿している。『砕かれたハリルホジッチ・プラン 日本サッカーにビジョンはあるか?』を星海社新書より上梓。