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ロアッソの誇りを胸に。フランクフルト移籍の18歳、神代慶人が熊本で学び、磨いたこと

2026.01.24

「これからはアカデミー選手の目標となれるように世界で闘ってきます」。2023年12月にプロ契約を結び、翌年3月にはJ2リーグ最年少得点記録を更新、2025シーズンは8ゴール2アシストをマークし、J2優秀選手賞にも選出されたストライカーが、高校3年生で欧州挑戦を決断した。ロアッソ熊本で8年間、神代慶人が歩んだ成長の軌跡を、長年クラブを追い続ける井芹貴志記者が振り返る。

欧州の名門に完全移籍。熊本から世界へ羽ばたく

 去就が注目されていたのは確かで、せめてハーフシーズンとなる百年構想リーグまではいてくれたら、との淡い期待も抱きつつ、「近い将来、まちがいなく羽ばたいていく選手なんだから」という覚悟も、できていたつもりだった。とはいえ、実際にリリースされた内容は、大方の予想のまさしくナナメ上をいくもの。2025年12月19日、ロアッソ熊本は18歳のFW神代慶人の完全移籍を発表。移籍先は、創立100年以上の歴史を持つドイツ・ブンデスリーガの名門、アイントラハト・フランクフルトである。

 同クラブの日本語版X公式アカウントのポストでは、「2026年は主にU-21のチームでプレーする予定」とされている。それでも、日本人の若い選手たちが海外挑戦の最初の舞台として選択するオランダやベルギーといった、いわゆる「ステップアップリーグ」のクラブを経由することなく、高校を卒業していきなり5大リーグの、しかも優勝争いをするようなクラブに完全移籍するというルートは、J2リーグで見せていた規格外とも言えるそのプレーぶりと同じく、小さな枠には決して収まり切れない、彼のスケールの大きさを物語っているとも言えよう。6年間にわたってチームの指揮を執った大木武監督(今季から愛媛FC監督)も、「持ち上げ過ぎてはダメ」とメディアに対して釘を刺す一方で、これまで指導にあたった選手の中でも「モノが違う」と評していたほどである。

 メディカルチェックと契約のための1週間ほどの渡独から帰国した神代は、12月23日、ホームスタジアムとしてプレーしてきたえがお健康スタジアムの一室で記者会見に臨み、移籍を決めた理由について次のように話した。

 「将来、イングランドのプレミアリーグでプレーしたい思いがあり、その前に一度、海外クラブでプレーしておくことで、直接(プレミアリーグに)行くよりも、いいイメージができるんじゃないかと思いました」

 きっかけはちょうど2年前、高校2年に進級する前に参加したイングランド・チェルシーへの短期留学。「それまで、『海外でプレーしたい』という大雑把な目標だったのが、チェルシーに留学したことで、プレミアリーグが具体的な目標になった」と明かしている。

 会見に同席した強化担当の西河翔吾氏によると、フランクフルトの他に国内のクラブから1件、オファーがあったそうだが、神代本人の海外志向の強さが今回の移籍の決め手になった。ちなみに移籍金に関しては「守秘義務がある」(西河氏)とのことで明らかにされていない。しかし一般的な国内クラブへの移籍と比べても大きな額になったことは確かなようで、ジュニア時代から在籍していたことも鑑みれば、戦力として抜けるマイナス面以上に、今後も少なからぬメリットがもたらされるビッグな契約になった。神代本人の才能と努力はもちろんだが、合わせてクラブとしての育成が認められた面もあると言っていい。

トップチームでの2シーズン、ケガからの復帰も含めて成長

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Profile

井芹 貴志

1971年、熊本県生まれ。大学卒業後、地元タウン誌の編集に携わったのち、2005年よりフリーとなり、同年発足したロアッソ熊本(当時はロッソ熊本)の取材を開始。以降、継続的にチームを取材し、専門誌・紙およびwebメディアに寄稿。2017年、母校でもある熊本県立大津高校サッカー部の歴史や総監督を務める平岡和徳氏の指導哲学をまとめた『凡事徹底〜九州の小さな町の公立高校からJリーガーが生まれ続ける理由』(内外出版社)を出版。

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