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トレーニングメソッド進化の歴史:スキル単体を鍛える要素還元から競技特異性を重視した統合型へ

2023.04.21

サッカーのトレーニングメソッドは、時代とともにいかに進化していったのか――。好評発売中の『エコロジカル・アプローチ 「教える」と「学ぶ」の価値観が劇的に変わる新しい運動学習の理論と実践』の著者・植田文也氏が陸上のトレーニングが主流だった90年代以前から、戦術的ピリオダイゼーションや構造化トレーニングによるサッカーに特化したメソッドの登場、さらにそこにアカデミックな運動学習理論が加えられようとしている現在までの大きな潮流をたどる。

※『フットボリスタ第89号』より掲載。

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 90年代までサッカーのトレーニングといえば、陸上などの個人種目でのトレーニングメソッドを適応したジムワーク、素走りなどが中心であった。しかし、80年代までの複雑系科学や動的システム理論の発展の影響を受け、トレーニングパラダイムは要素還元から全体論、一般的トレーニングから競技特異性へとシフトしていく。その中で大きな役割を果たしたのが構造化トレーニングと戦術的ピリオダイゼーションだった。

 バルセロナで要職を歴任したパコ・セイルーロは80年代中盤に構造化トレーニングを提案する。スペインを中心に普及したこのトレーニングメソッドは「サッカーにおけるスピードとは単に走りが速いことではなくプレースピードが速いことである」という具合に、サッカーという競技が持つ特異性に徹底的にこだわることで、サッカーに特化したアスリートの育成に取り組んできた。また、実際の試合場面を忠実に再現したトレーニング環境をシミュレートすることで、アスリートが持っている下部構造を自己組織化によって「構造化」するというこれまでのメカニカルな運動学習観から非線形科学に基づく運動学習観へのシフトも同理論の大きな特徴だ。

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Profile

植田 文也

サッカーコーチ(FCガレオ玉島)、スキル習得アドバイザー(南葛SCアカデミー)、スポーツ科学博士。早稲田大学スポーツ科学研究科博士課程、ポルト大学スポーツ科学部修士課程にてエコロジカル・ダイナミクス・アプローチ、制約主導アプローチ、非線形ペダゴジー、ディファレンシャル・ラーニングなどの運動学習理論を学ぶ。Twitter:@FumiyaUeda

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