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2022年3月号 2022/2/12

トレーニング×学問化

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複雑化したモダンサッカーで必須の「対応力」を育むエコロジカル・アプローチとは?

[特集I]
トレーニング×学問化
トゥヘルやナーゲルスマンが勝てる秘密を解き明かす

トーマス・トゥヘルがユニークなトレーニングをしているとエキスパートたちの間で話題になり、SNSでも動画が拡散されていた。テニスボールを握らせたり、四隅を斜めに切った妙な形のピッチでプレーさせるなど明らかに今までの常識では考えられないオーガナイズになっているのだ。

実はその背景には、非線形の運動学習理論と呼ばれるエコロジカル・アプローチやディファレンシャル・ラーニングといったアカデミックの分野で研究されている根拠があるという。

試合中に何度もフォーメーションが変わるような複雑化を続けるモダンサッカーでは、すべての「答え」をあらかじめ監督が教えるのは不可能になってきている。最高峰の舞台で勝ち抜くには、ピッチ上の選手たちがその場で状況を読み解き、個人としてもチームとしても最適解を選び続ける「対応力」が必須となったのだ。まさにそれを育むのが、新しいトレーニングメソッドの目的だ。

思えば、欧州王者のチェルシーは捉えどころのない不思議なチームだった。ペップのシティやクロップのリバプールのような明らかな「色」はないのにどんなコンペティションでも安定した強さを発揮している。その秘密を解き明かすヒントは、ドイツの新世代監督が進めているという“舞台裏の革命”にあるのかもしれない。

[鼎談]アレッサンドロ・フォルミサーノ×レナート・バルディ×片野道郎
イタリアの新世代指導者と考えるトレーニングメソッド革命(前編)
ドイツ人監督が提示したサッカーの再解釈

トレーニングメソッド進化の歴史
スキル単体を鍛える要素還元から、競技特異性を重視した統合型へ

現代サッカーのトレーニングメソッド紹介

○戦術的ピリオダイゼーション
意思決定基準の「ゲームモデル」に基づく
リアリティを追求した統合型トレーニング

○構造化トレーニング
「個人化」された知覚・運動パターンで
サッカーに特化したアスリートを育成

○制約主導型アプローチ
「タスク」「環境」「プレーヤー」の相互作用で
学習者が効果的な運動解決策を生み出す

INTERVIEW
ボルフガング・ショルホーン(マインツ大学教授)

「ボールサイズは本質ではない」
ディファレンシャル・ラーニング提唱者からサッカー界への提言

[対談]小谷野拓夢×植田文也
理論と現場の2つの視点で考えるエコロジカル・アプローチ実践編

育成年代のトレーニングは「旅をするようなもの」
欧州で最も「異質」なコーチが北欧で目指す革命

[鼎談]アレッサンドロ・フォルミサーノ×レナート・バルディ×片野道郎
イタリアの新世代指導者と考えるトレーニングメソッド革命(後編)
システム論的トレーニングメソッドの全貌

ボルシアMG新世代コーチが提案する
GKトレーニングのエコロジカル化

制約主導型アプローチ実践編:
FA発信のガイドライン、4Dと3Rとは?

INTERVIEW
相良浩平(スパルタ・ロッテルダム ヘッド・オブ・フィジカルパフォーマンス)

コンテクスチュアルトレーニング実践編:
筋トレをどうサッカーに組み込むか?

INTERVIEW
大平正軌(流通経済大学サッカー部コーチ)
小粥智浩(流通経済大学サッカー部コンディショニングコーチ)

今年は12人Jリーガーを輩出!
流通経済大学コーチ2人に聞く大学サッカーの最新トレーニング事情

INTERVIEW
岡田武史(FC今治 代表取締役会長)

岡田メソッドの源流と知を共有する目的

意思で身体動作を共有する
「インテンション・サイクル」とは何か?

L’Ultimo Uomo
複雑性をトレーニングする

COLUMN

最先端理論を実践する手段。
急速に発展するスモールサイド・ゲーム

「晩成型」の選手を見逃さないために。
バイオ・バンディングを意識したトレーニングの構築

強い気持ちの正体――
クリアソン新宿はなぜ地域CLに勝てたのか?

特集II]
テクニカルスタッフ
監督と信頼で繋がる、もう一つのチーム

骨太な第1特集にも関連する本企画のテーマは「テクニカルスタッフ」。ここまで取り上げてきたような最先端のトレーニングを、選手たちに正しく実践させ、成長を促し、そして勝利に導く、監督を頂点とした“もう一つのチーム”だ。あらゆる領域で要求水準が高まるモダンサッカーの現場では、もはや監督は“管理職”に徹しないとチームが回らない。その手足、その頭脳となるスタッフ陣は、どんなメンバーによって組織され、いかに連携しながら集団として機能しているのだろうか。欧州の主要クラブを例に、なかなかスポットが当たることのないテクニカルスタッフの実態に迫った。

テクニカルスタッフとは――
細分・専門化が進むも、今なお肝心な親(監督)子(スタッフ)の絆

SPAIN|LIGA ESPAÑOLA

レアル・マドリー
アンチェロッティ第二期の“指揮官”はダビデ
今や父に進言し、練習や分析も担う名参謀に

○アトレティコ・マドリー
その漢に宿る“原初的パワー”が必要だった
闘将シメオネの背中を強く押すモチベーター

○バルセロナ
メディカル部門にも及んだシャビの“粛清”
新監督になるなら不可欠だった「最高の医師」

ENGLAND|PREMIER LEAGUE

○マンチェスター・シティ
「ペップが何を欲しがるかわかる」長年の絆
シティ一族の繁栄へ、U–18 からの登用も

○アーセナル
青年監督を支える経験豊富な助言者たちと
将来が楽しみな20代の天才分析官コンビ

○リバプール
リバプールのペップに、スローイン専門家に
食事改革、心のケア… 各分野の一流が集結

○マンチェスター・ユナイテッド
ドタバタを経て2月から新体制がスタート
コーチ陣も再編中の彼らに足りないのは…

○チェルシー
緻密で熱血な腹心3人に、残留組も貢献大
舞台裏のムードメイカー続投は名采配の1つ

○トッテナム
コンテが呼び寄せ、スパーズを鍛え直した
鬼軍曹の恥辱の警鐘とワルキューレの騎行

ITALY|SERIE A

○インテル
右腕、残留組、統計スペシャリストらが融合
円滑なシモーネ・スタイル実現の立役者たち

○ミラン
“ピオーリ・ラボ”の実態。相棒や愛息、
OBコーチとともに今までにないミランを

○ユベントス
ユーベ第2期も全員集合!長年結束する
「チーム・アッレグリ」それぞれの出会い

○ナポリ
カルチョ歴代の戦術家を支えてきた参謀陣と
ナポリの伝統を次代に受け継ぐ語り部の存在

○ローマ
新年早々、33歳イタリア人助監督を抜擢
年齢や国籍を問わないのがモウリーニョ流

INTERVIEW
ダニー・レール(ドイツ代表アシスタントコーチ)

32歳のフリック副官が担うもの、目指す先

GERMANY|BUNDESLIGA

○バイエルン
ともにライプツィヒから移籍した懐刀三銃士
ワシの目、イケオジ、名将の血を引く“No. 2”

○ドルトムント
名門が新興のノウハウ&エネルギーを吸収中
そのキャリア豊富な監督&助監督は同居中

○RBライプツィヒ
クラブハウスに空室がないほどスタッフ充実
ラングニック派と新監督派の融合なるか?

○レバークーゼン
新体制への過渡期で元バルサ指導者から
柔術王者、幅跳び王者まで個性派ぞろい

FRANCE|LIGUE 1

○パリ・サンジェルマン
能力を「高める」でなく「出せるよう整える」
フィジカルコーチが多いパリSGゆえの事情

COLUMN

ルイス・エンリケの右腕は心理カウンセラー
スペイン代表の「恐怖を和らげ悲劇を浄化する」

「最高のアシスタント」ミヒェルスが回想する
トゥヘルの土台、毎試合全集中のマインツ時代

“そばにいること”がまさに仕事な癒しの心理学者
最も助けられているのはナーゲルスマンかもしれない

[対談]レナート・バルディ×片野道郎
モダンサッカーの戦術用語講座
ビルドアップ編その②「8対7」「8対6」「プレッシャーライン」など

REGULAR

TACTICAL FRONTIER 進化型サッカー評論 ●結城康平
– 2030 年のサッカーに対応する、フィジカルトレーニングの考察
FOOTBALL×PHOTO ●龍フェルケル

戦術リストランテ ●西部謙司
– 『モダンサッカー』をやり続けるアヤックスの年季
ドイツサッカー誌的フィールド ●ダニエル・テーベライト
– 1部復帰なるか。高まるザンクトパウリへの期待
ディープスロート内部情報が語るRマドリー ●ディエゴ・トーレス
– メディア的に偉大な選手が優先される事情

CALCIOおもてうら ●片野道郎
– 隠れた“エコロジカル”の実践者、アレグリ・ユベントスの危機
サッカーを笑え ●木村浩嗣
– 濃密な関係は、壊れると怨恨に発展することもある。第2監督を「裏切り者」呼ばわりした代表監督
フットボリスタ・ラボ・レボリューション’22
– 第24回  白石幸平:異業種の懸け橋となり、スポーツの価値向上を目指す

連載コラム
ENGLAND●山中 忍/FRANCE●小川由紀子
NETHERLANDS●中田 徹/RUSSIA●篠崎直也
BRAZIL●沢田啓明/ARGENTINA●Chizuru de Garcia

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