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徳島ヴォルティス序盤戦総括。J2開幕9試合で「得点6・失点4」の意味を考察する

2025.04.17

ここ数シーズン、開幕ダッシュに失敗していた徳島ヴォルティスだが、今季はJ2第9節時点で7位とまずまずのスタートを切った。中でも特筆すべきは1試合平均0.44という守備の固さだ。一方で、得点の方も1試合平均0.67と伸びておらず、「失点しないが、得点も少ない」状況が続いている。増田功作監督の取り組みも含めて、柏原記者に「得点6・失点4」の意味を考察してもらおう。

 2025シーズンの約1/4にあたる9試合を終えた。

 「得点だけの数字で言うならば得点を取れていません。具体的な数字を設定しているわけではありませんが、勝率であったり、9試合を終えて3勝しかしていないということは自分の中でも物足りません。引き分けを勝ちに持っていかなければいけない試合もありましたし、前節・大分戦(△1-1)もそうでしたが複数得点を取れていないことが大きな要因の1つです。そこは責任を感じます。ただ、チャンスがないわけではないので突き詰めていきたいです。世界的に見ても同じだと思いますが、個人で解決できること、チームで解決できること、どちらかではなく両輪でやっていかなければいけないと思っています。

 失点に関しては選手たちがよくやってくれていると思いますし、失点4という数字は素晴らしいです。ただ、失点はしていない場面でも、自分たちがやるべきことや、やろうとしていることに対して、できていないことはまだまだあります。直近の(ルヴァンカップ含む)3試合で失点もしています。そこはもっと突き詰めようとミーティングで話をしたばかりです」(増田功作監督)

笑顔で抱擁を交わす増田監督(Photo: ©TOKUSHIMA VORTIS)

 得点6、失点4。3勝4分2敗の7位。開幕2連勝でスタートを切った期待値から考えると伸び悩んではいるが、それでも相応の立ち位置から追撃姿勢は取れている。

 プレシーズンからの成果がわかりやすく数字に出ているのは失点数。

 『徳島ヴォルティス、復活への3つのポイント。ブラジル人トリオ、「ハイ」「ミドル」「ロー」の守備、スタートダッシュ』として、徳島ヴォルティスが守備戦術を整理して今シーズンに臨んだことをお届けしたが、その成果が結果として表れている。

 過去の歴史も振り返ると直近2年は失点数が増加傾向だったが、例えばそれ以前のJ2在籍時の5シーズンを振り返ると失点数の少なさは上位にいる。守備手法の考え方はシーズンごとに異なるものの、ハードワークを厭わない勤勉な選手が編成の軸にあることは共通しているのだろう。

 今シーズンの守備をあらためて紹介すると増田監督は「ハイ、ミドル、ロー」という3つのキーワードを用いて共通理解を図った。簡略化すると「ハイ」は高い位置からのプレス、「ミドル」は中央付近での限定やけん制、「ロー」は自陣で構える守備を指す。

 それらの守備を切り分けて抽出すると決して特殊というわけではない。理屈としては多くの選手がどこかの世代で一度は経験したことがあるものの延長にあるであろうし、他クラブも基本的な理屈としては同じだと思う。しかしながら、結果として表れている数字は他と同等ではなく、現時点では失点4という特筆の成果が出ている。

 3CBの一角である山越康平が6試合を終えた時点で「完成度としては60~70パーセントくらいだと個人的には見ています。残りの部分はやられてもおかしくないシーンがあったので、そこをもっと突き詰めていかなければいけないと思っています」と言うように、運と言えば運に救われた側面もあるので手放しに喜ぶことはできない。とはいえ、運の要素はどのクラブにも共通してあるわけで、それらを総合しても失点が少ないことは一定の成果と言える。

J2第9節・大分戦でボールを争う山越(Photo: ©TOKUSHIMA VORTIS)

「失点減」の3つのポイント

 運もある前提で、失点数の少なさを考えると3つのポイントが浮かぶ。

 1つ目は、“基本的な強度や運動量”の土台が下支えしていること。

 選手それぞれに特徴が異なるのでシミュレーションゲームのように守備力を数値化するならば大きい数字を示す選手もいれば小さい数字を示す選手もいる。しかし、“努力”という個々の評価に対してのパーセンテージは、増田監督が「僕は今年の一番始めに“守備を免除される選手は誰もいない”と話をしました。それができなければ試合には出られません」というメッセージも浸透して得意・不得意にかかわらず高水準を示していると思う。

 2つ目は、新加入の守備陣が大きな役割を果たしていること。シンプルに3CBで出場時間を伸ばし続けている山越と山田奈央が利いている。……

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Profile

柏原 敏

徳島県松茂町出身。徳島ヴォルティスの記者。表現関係全般が好きなおじさん。発想のバックグラウンドは映画とお笑い。座右の銘は「正しいことをしたければ偉くなれ」(和久平八郎/踊る大捜査線)。プライベートでは『白飯をタレでよごす会』の会長を務め、タレ的なものを纏った料理を白飯にバウンドさせて完成する美と美味を語り合う有意義な暇を楽しんでいる。

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