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0-5からの成長、しかし…王者・川崎に突きつけられた浦和レッズの課題

2021.11.05

リカルド・ロドリゲス監督の浦和にとって、同じくポゼッションを志向する王者・川崎フロンターレは一つの基準となるチームと言っていいだろう。3月の第一ラウンドは屈辱の0-5、ルヴァンカップ準々決勝は2引き分け、そして今季4度目の対戦となったこの試合は、川崎の優勝が懸かる大一番だった。そこで露呈した両者の「違い」とは何なのか、清水英斗氏に解説してもらった。

 今季序盤、3月に行われたJ1第6節で0-5の惨敗を喫してから、数カ月。王者川崎との対戦は、浦和にとっては成長の手応えを測る絶好の機会だ。

 9月のルヴァンカップ準々決勝は、第1戦を1-1、第2戦は3-3とともに引き分け、アウェイゴールの差で浦和が勝ち上がった。そして迎えた、シーズン4度目の対戦。

ルヴァンカップ準々決勝第2戦、川崎対浦和のハイライト動画

 11月3日に行われたJ1第34節の川崎対浦和は、前半33分にCKのセカンドボールから川崎が先制したが、後半終了間際、浦和は相手陣深くのスローインを奪って奇襲を仕掛け、酒井宏樹のゴールで1-1の同点に追いついた。これで3戦連続の引き分け。試合単体の勝利こそないが、3月に0-5で惨敗した序盤を踏まえれば、浦和は確実に成長している。

 今やリカルド・ロドリゲス監督が目指すスタイルは、ピッチ上ではっきりと姿を確認できるようになった。それをなす補強も、酒井宏樹や江坂任キャスパー・ユンカー、アレクサンダー・ショルツといった有名実力派だけでなく、小泉佳穂や平野佑一、明本考浩といったJ2クラブからの掘り出し物もフィットしている。さらに岩波拓也、関根貴大、汰木康也、柴戸海など以前から浦和に所属した選手たちも、後半戦は新監督の戦術の勝手が分かってきた様子。「彼ら(川崎)の力に少しは近づいたと思う」という試合後のリカルド・ロドリゲス監督のコメントにも、まったく違和感はなかった。

急ぎすぎ問題。「急、急、急」で緩急がない

 ただ、それでも「差がなくなったか?」と問われれば、Noだろう。今回の試合も、後半に攻勢を強めて同点に追いついたのは素晴らしかったが、終盤までの75分間を進めたゲームコントロールについては、やはり川崎に一日の長がある。

 特に前半は、浦和にとってあまり良い試合ではなかった。ポゼッション率38%という低さに表れるように、ポゼッションを志向する今季の浦和が、あまりボールを持てず、主導権を奪われる苦しい展開だった。

 川崎が真に恐ろしいのは、単なるポゼッションでも、単なるハイプレスでもない。それらの循環だ。ボールを回された挙げ句、苦労して奪っても、すぐに奪い返され、また回される。ひとたび自陣に侵入を許せば、ポゼッション→カウンタープレッシング→ポゼッションと、悪魔の循環がスタートする。そうやって、一度はまると簡単には抜け出せない沼に、相手を引きずり込むのが川崎の真の恐ろしさだ。前半の浦和は、川崎沼にはまってしまった。

 なぜ、浦和は沼にはまったのか。その原因は川崎の凄さもあるが、浦和自身にも問題がある。攻め急ぎすぎて、相手を困らせる試合運びができていない。……

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川崎フロンターレ戦術浦和レッズ

Profile

清水 英斗

サッカーライター。1979年生まれ、岐阜県下呂市出身。プレイヤー目線でサッカーを分析する独自の観点が魅力。著書に『サッカーは監督で決まる リーダーたちの統率術』『日本サッカーを強くする観戦力 決定力は誤解されている』『サッカー守備DF&GK練習メニュー 100』など。

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