SPECIAL

ポジションとフェーズの概念から脱却。イタリア代表の「シームレス・フットボール」

2021.10.04

TACTICAL FRONTIER

サッカー戦術の最前線は近年急激なスピードで進化している。インターネットの発達で国境を越えた情報にアクセスできるようになり、指導者のキャリア形成や目指すサッカースタイルに明らかな変化が生まれた。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つのは、どんな未来なのか? すでに世界各国で起こり始めている“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代サッカーの新しい楽しみ方を提案したい。

※『フットボリスタ第86号』より掲載。

 戦術の国、イタリア。鉄壁のカテナッチョで相手の攻撃を封じ、効果的なカウンターで結果を残す勝負強さが、伝統的に受け継がれた彼らのスタイルだ。美しく勝つことに固執せず、泥臭く勝利を目指す姿は、イタリア人のDNAに刻まれている。

 しかし、現代フットボールにおいてイタリアの「受動的なスタイル」が通用しなくなりつつあったのは1つの残酷な事実だ。2010年の南アフリカW杯と2014年のブラジルW杯はグループステージ敗退。2018年のロシアW杯では欧州予選で姿を消す屈辱を味わうことになった。世界最高の舞台への出場権すら失った彼らは、メディアやサポーターからの強烈なプレッシャーを浴びていた。それでも、イタリアは2010年から地道な育成改革に取り組んでいた。マウリツィオ・ビシディを育成責任者に据えた彼らは、少しずつヨーロッパの他国から学びながら「能動的なフットボールへの転換」に着手。その基盤を、選手時代にファンタジスタとしてサポーターを熱狂させた男が受け継ぐことになる。ロベルト・マンチーニはイタリアに「喜び」を取り戻すことを目指し、代表チームの改革に着手していく。

イタリアの悪癖を克服した2人の司令塔

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イタリア代表シームレス・フットボールポジショナルプレー戦術

Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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