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ボール支配と前に出る守備を両立!“個のベルギー”を圧倒したイタリアの戦術的完成度

2021.07.05

EURO2020準々決勝
ベルギー 1-2 イタリア

7月2日に行われたEURO2020準々決勝の強豪対決は、MFバレッラ(31分)とFWインシーニェ(44分)のゴールで先行したイタリアが、ベルギーの反撃をPKによる1点に抑えて4強入りを果たした(7月6日にスペインと対戦)。これで今大会5戦全勝(11得点2失点)というアズーリの「チーム」としての強さが際立った90分。勝敗を分けた戦術的なポイントを解説する。

 ラスト15分はイタリア伝統の「試合を殺す技術」を最大限活用したとはいえ、総合的に見ればFIFAランキング1位のベルギーを攻守両面で圧倒したアズーリが、ロベルト・マンチーニ監督の下で築いた明確なアイデンティティとカルチョのDNAの双方を存分に発揮、説得力のある戦いでベスト4に駒を進めた。

 敗れたベルギーにとって痛手だったのは、ラウンド16のポルトガル戦(1-0)で筋肉系の負傷を負ったエデン・アザールが欠場、デ・ブルイネもアキレス腱の炎症を押しての強行出場(パフォーマンスは通常の60%というところか)と、頼りのアタッカー陣が1.5人欠けという状況でこの試合に臨まざるを得なかったこと。E.アザールの代わりに入った19歳のドクが破壊的な突破力を発揮し、前半終了間際のPK奪取をはじめベルギーの攻撃をほぼ1人で担うというサプライズがあったものの、それでもイタリアの牙城を崩すには不十分だった。 

試合後、落胆の表情でスタンドのファンへ感謝の意を示すデ・ブルイネらベルギーの選手たち

[5-2-3]ベルギーの「構造的欠陥」を突く

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EURO2020イタリア代表ベルギー代表

Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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