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流経柏と柏レイソルU-18に見る、 育成年代の変わるモノと変わらないモノ

2021.05.21

数ある高校年代のチームの中でも、流通経済大柏高校と柏レイソルU-18は、それぞれはっきりとしたサッカーのスタイルを確立することで、周囲から高い評価を獲得してきた。だが、そんな柏が誇る2つのチームにも少しずつ変化が訪れようとしている。流通経済大柏高校の榎本雅大監督と、柏レイソルU-18の酒井直樹監督。長年チームを見つめてきた2人の指導者が、変えようとしているモノと、変わらずに持ち続けているモノとは。

 2015年の冬。当時担当していた番組のロケで、現在は京都サンガF.C.の監督を務めている曺貴裁氏と、まだドイツ国内の2部リーグに在籍していたRBライプツィヒのクラブハウスを訪ねた。目的は1つ。かねてから曺氏が敬愛していた、ラルフ・ラングニックのインタビューを撮影するためだ。

当時のインタビューの模様を伝えるRBライプツィヒ公式Twitter

 気さくな人柄に我々も感銘を受けながら、具体的なサッカー論に話題が進んでいくと、ラングニックは「シームレス」という単語をキーワードに、もはや現代サッカーに攻守の切れ目はないこと、攻撃と守備を分けては考えられないこと、そして、1つのスタイルにこだわる時代はもう過去のものであることを、丁寧に、熱量をこめて、語ってくれた。

 その後のRBライプツィヒの躍進は、あえて説明するまでもないだろう。ラルフ・ハーゼンヒュットルユリアン・ナーゲルスマンがさらなる進化を推し進めたチームは、ヨーロッパのサッカーシーンでも確かな存在感を放っている。

 また、曺氏も帰国後にやはり「シームレス」というキーワードを掲げ、それまで以上に幅のある戦い方を繰り広げたことで、「湘南スタイル」の深化に成功。ハードワークに裏打ちされた攻守一体のサッカーは、J1の舞台でも多くの共感を呼んだ。

 日本の高校年代でも、数多くの情熱にあふれる指導者が試行錯誤を重ねながら、チームのスタイル構築に腐心している。とりわけ同じ千葉県柏市に本拠地を置く、流通経済大柏高校と柏レイソルU-18は、それぞれ高体連とJクラブユースの中でも、際立ったスタイルを確立し、そのブランディングに成功した代表格のようなチームである。

 だが、今年の彼らはそれまでのイメージを一新するようなチャレンジに着手。実際に高円宮杯プレミアリーグという国内最高峰の舞台でも、その効果がピッチ上に現れ始めている。1つの方法や、1つの思想にこだわらないスタイルレスな戦い方は、むしろ育成年代だからこそ、より選手たちの未来を考えれば必要不可欠なもの。流通経済大柏と柏レイソルU-18の指導者も、その信念に基づいて日々教え子たちと向き合っている。

流通経済大柏高校を率いる榎本雅大監督の揺るぎない信念

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文化柏レイソル流通経済大柏高校田中隼人育成

Profile

土屋 雅史

1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!

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