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12年ぶりの1部昇格が目前のボーフム。経済規模はJクラブと同程度

2021.05.13

 5月9日のブンデスリーガ2部第32節、首位のボーフムはホームで14位レーゲンスブルクを5-1で破り、昇格をほぼ手中にした。残り2試合で勝ち点2を獲得すれば、自力での自動昇格が確定する。1部昇格に向けたライセンスの交付も問題はない。

 日本代表の乾貴士が欧州での第一歩を刻んだクラブでもあるボーフムは来季、12年ぶりのブンデスリーガで躍進できるだろうか。5月5日の『シュポルトビルト』では、すでに来季の予算が組まれ、チーム編成も固まっていることを伝えている。

J1中堅規模のクラブ運営

 同誌によれば、今季のトップチームの予算総額はおよそ1200万ユーロ(約15億6000万円)。今季開幕前に提出された2018-19シーズンの収支表では、同シーズンの人件費総額が1511万6000ユーロ(約19億6500万円)だったことから、この数字は当たっていると思われる。

 この金額の規模は、堂安律や奥川雅也が加入し、残留争いで健闘しているビーレフェルトが2部で戦っていた2018-19シーズンとほぼ同じ予算規模だ。ちなみに、これは2部でも8番目の予算であり、特に際立った数字ではない。2019年に開示されたJリーグの人件費と照らし合わせても、J2の大宮アルディージャ、J1の北海道コンサドーレ札幌ほどの規模だ。現在、選手の年俸の限度額はおよそ50万ユーロ(約6500万円)に設定されている。

 来季1部に上がった場合は、移籍にかかる費用も含めて総額2200万ユーロ(28億6000万円)に予算を拡張させる。とはいえ、選手の年俸の限度額は75万ユーロ(約9750万ユーロ)としており、日本の“1億円プレーヤー”に相当する選手は獲得しない予定だ。これは、先のJリーグのデータと比較すると、川崎フロンターレや鹿島アントラーズ、柏レイソルと同程度だ。アンドレス・イニエスタらが顔をそろえるヴィッセル神戸は別にして、名古屋グランパスや浦和レッズと比較してもだいぶ少ない。

 アウクスブルク、フライブルクやマインツのようなブンデスリーガに定着した小クラブでも、およそ4000万ユーロ(約52億円)から5000万ユーロ(約65億円)程度の予算は組んでいる。ボーフムは数字上では苦しい戦いが予想される。

多くのカテゴリーで経験を積んだ指揮官

 クラブはそれでも今季のチームに手応えを感じており、現在の陣容を軸にチーム作りを進める方針を固めている。このチームを成功に導いたのはトーマス・レイス監督だ。現役時代の大部分をボーフムで過ごしており、クラブのことを良く知っている。

 2006年にマンハイムで引退した後、ボーフムに戻ってスカウトとして活動。その後、育成機関やセカンドチームの監督、アシスタントコーチ、女子チームも指揮するなど多様な経験を積んだ。2015-16シーズンは、U-19を率いて強豪が集うブンデスリーガ西部で3位、ドルトムントを破るなどの快進撃を見せた。翌シーズンから3季にわたってボルフスブルクU-19を率い、3年間のうちに2度ブンデスリーガ北東部の優勝に導いて実績を作った。

 2019年9月に古巣ボーフムの監督として復帰すると、2シーズン目となる今季はチームを昇格目前の位置まで押し上げている。「私自身も監督にとって扱いやすい選手ではなかったから、たいがいのことには理解を示すことができる」と話すレイス監督。ブンデスリーガ1部や他国の1部で戦力外になった選手や、下位リーグからやって来た若手など、様々な状況にある選手のモチベーションを良く理解している。近年のパーダーボルンやビーレフェルトのように、1部でも健闘する可能性は十分にある。

レイス監督は現役時代の大半をボーフムで過ごし、指導者としてクラブの様々なカテゴリーを率いた

ルール地方で2番目のクラブに

 ルール地方に所属するボーフムだが、これまでは予算規模が15倍のドルトムント、10倍のシャルケという2大クラブの陰に隠れていた。だが、来季はシャルケが2部で戦うため、ボーフムがおそらく1部で戦うルール地方で“2番目”のクラブとなる。

 昇格1シーズン目を乗り切れれば、放映権料収入の増加などで少しずつ予算も増え、1部で戦えるだけの体力も付くだろう。10年前までブンデスリーガの常連だった古豪として、クラブ内のインフラストラクチャは整っている。今季のウニオン・ベルリンの躍進も、2部から昇格したクラブにとっては心強い。

 気の早い地元紙『レビアシュポルト』はすでに、4月下旬ドルトムントとの最後の“レビアダービー”を紹介している。12年ぶりとなる隣町ドルトムントとの “レビアダービー”に、地元のファンは早くも心を踊らせているのだ。


Photo: Getty Images

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ドルトムントボーフム乾貴士

Profile

鈴木 達朗

宮城県出身、2006年よりドイツ在住。2008年、ベルリンでドイツ文学修士過程中に当時プレーしていたクラブから頼まれてサッカーコーチに。卒業後は縁あってスポーツ取材、記事執筆の世界へ進出。運と周囲の人々のおかげで現在まで活動を続ける。ベルリンを拠点に、ピッチ内外の現場で活動する人間として先行事例になりそうな情報を共有することを心がけている。footballista読者の発想のヒントになれば幸いです。