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ユベントスは「オシャレになった」わけではない。専門家が分析するブランディング戦略

2019.03.22

 フットボリスタをご覧のみなさま、初めまして。黒澤友貴と申します。普段はブランディングテクノロジー(株)という会社の執行役員を務めており、中小企業向けにデジタルマーケティング領域のコンサルティングを6年間超行なってきました。

 現在は、営業・マーケティング・人事・財務と、領域を横断して仕事をしてきた経験を活かし、経営戦略策定や人材育成を行なっています。マーケター500人近くが集まるコミュニティ「マーケティングトレース」を運営し、noteにてマーケティング思考を磨くための情報を発信してもいます(黒澤さんのnoteはこちら)。

 今回は、フットボリスタ編集部からの依頼を受け、セリエAの巨人であるユベントスのブランディング戦略について分析させていただきます。さっそくですが、まずはこちらの動画をご覧ください。ロゴ変更を行なった際の動画です。

 この動画が「サッカークラブのものなのか」と驚いた方も多いのではないでしょうか。読者のみなさんもご存知の通り、ユベントスは一時はスキャンダルによりセリエBに降格になり、経営も傾きかけましたが、今では完全なる復活を遂げています。

 最近は、レアル・マドリーからクリスティアーノ・ロナウドを獲得したことも話題となりました。この復活の背景にあるマーケティング戦略を、「マーケティングトレース」という手法を使って読み解いていきます。

マーケティングトレースとは?

 優良企業のマーケティング戦略を図解・要約することで、誰もが再現可能にするための分析手法のことです。

目次

①ブランディング分析:ロゴリニューアルの戦略をトレースする

②SNS分析:SNS活用戦略をトレースする

③まとめ:日本のクラブがユベントスから学べることは何か?

①ユベントスのブランディング分析

 ユベントスは、2017年にロゴをリニューアルしています。このロゴ変更が、どのような戦略意図をもって行なわれたのかについて分析していきます。ロゴ変更から、ユベントスのブランディングの優れている点を理解することができます。

ポイント①:ポジショニングの変化

 ロゴ変更には、「今までサッカーに興味を持っていなかった層」を呼び込むためのポジショニングの変化を読み取ることができます。

 ロゴの変更は、ファッション性を高め、今までサッカーに興味を持っていなかった顧客層にアプローチすることを可能としています。

 図解すると下記の通りです。

ポイント②:識別性の高さ

 他クラブとの比較でみると、ユベントスのロゴは一瞬で認識することができます。

 サッカークラブという存在を超えて、日常に浸透したブランドとして存在するよう設計がされています。

ポイント③:マーケティング戦略の変化

 このポジショニングの変化により、マーケティング戦略は具体的にどのように変わっていくのでしょうか?

 ポジショニング変化→顧客層拡大→収益源拡大→再投資という好循環を生み出す構造になっています。収益源拡大とは、具体的には、

●グッズ収入拡大
●チケット価格引き上げ
●会員価格引き上げ

 を示しています。

 ユベントスのファンを3つの層に分けると、ライト層・ミドル層・コア層と分けるとします。この3層のターゲットごとのアプローチ戦略を分析すると下記の図のように整理することができます。

 実際に、ユベントスの2018-19シーズンのチケット価格は20%~30%近く値上がりしているようです。

 以上の通り、ユベントスのロゴ変更は、単にオシャレになっただけではなく、緻密な戦略性をもっていることが理解できます。ブランドに戦略的に投資をして、ファンへの価値を最大化する工夫は日本のサッカークラブも模倣するべき点であると考えています。

②ユベントスのSNS分析

 次に上記のブランド戦略を、具体的にどのように伝えているのかを分析していきます。

 ユベントスはデジタルマーケティングの戦略に長けたクラブです。

ポイント①:デジタルチャネルの設計

 ユベントスでは、ブランド哲学を伝えるために時代に合わせたデジタルチャネルの設計が行われています。チャネル(情報をファンに届けるための手段)全体像は下記の通りです。

 『ユベントスTV』というオンデマンドプラットフォームを開発していることに代表されるように、コンテンツのメインデバイスはスマホとし、インターネット放送にシフトしていることがわかります。

ポイント②:代表的なチャネルYouTube

 YouTubeチャンネルをみるとわかりますが、「動画」のクオリティはサッカークラブの域を超えています。

 これは実際に動画を見て頂けるとわかると思います。

 試合ハイライトシーン、選手の移籍シーン、トレーニングシーン、ブランドコンテンツなど、全てのシーンが緻密にデザインがされています。

 ユベントスのSNS発信の優れている点は、デザインの統一性(全ての表現にブランド哲学を反映)が図られている点にあります。画像や動画の質の高さは、高いエンゲージメント率を生み出すことに繋がっています。

 また、2018年に仕掛けた、こちらのTwitter動画キャンペーンでは、2300万人を超えるユーザーに情報をリーチし、52,000人の新規ユーザーを獲得したとの結果が出ています。

 ユベントスは、ロゴ変更以外にも、2011年に総工費200億円で新スタジアムを建設したり、オリジナルフォントも開発をすることなど、ファンの顧客体験を刷新し続けています。

白と黒フラッグを掲げスタンドをクラブカラーのビアンコネロに染めるファン

③まとめ:日本のクラブがユベントスから学べることは何か?

 ユベントスのマーケティング戦略の何が優れているのかを一言でまとめると、「ファンへの価値を強化し続けている」ことにあると考えています。

 ユベントスのブランド価値=ファンが伝統ある特別なクラブの一員だと認識してもらうこと。

 SNS運用にも、ロゴリニューアルにも、ファンが価値を感じてもらうための緻密な工夫がなされています。

 当然、投資予算がある欧州クラブだからこそできることもありますが、ファンの体験価値を向上させるためのマーケティング戦略は、日本のクラブも学べることがあるのではないでしょうか?

Photos: Getty Images
Edition:Daisuke Sawayama

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