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ポーランドは、シンプルに強いが弱点もある。ウルティモ・ウオモが徹底分析

2018.06.18

ウルティモ・ウオモが暴く「日本の敵」の正体:ポーランド編


詳細な戦術分析でサッカー評論の新たな地平を開拓するイタリアの新世代WEBマガジン『ウルティモ・ウオモ』は、日本の対戦国をどう分析するのか? そんなフットボリスタからの依頼に応えてくれたダニエーレ・マヌシア編集長がポーランド、コロンビア、セネガルに詳しいUU執筆陣をピックアップし、「日本の敵」の正体に迫ってくれた。ポーランドはセリエAプレーヤーが多く、イタリア人にとっても馴染み深い国。予選の戦いぶりはポット1のシードチームにふさわしいものと評価する一方で、攻守両面で明らかな弱点を抱えていると指摘する。


 ポーランド代表は、ボニエク、ラトーという偉大なプレーヤーを擁した1970年代から80年代にかけて、4回連続で本大会に出場して3位を2度(74年、82年)勝ち取るという黄金時代を築いた。しかし86年以降は長い衰退期を過ごしている。92年のバルセロナ五輪で銀メダルを獲得した世代も、A代表では期待に応える結果を残すことができなかった。

 しかしここにきて、その流れが変わり始めている。黄金時代に匹敵する結果を勝ち取るにはまだ至っていないが、ポーランドサッカーは今、過去30年間で最もポジティブな時期を過ごしている。2013年からチームを率いているアダム・ナバウカ監督の下、EURO2016では史上初めてグループステージ突破を果たすと、ラウンド16でスイスをPK戦で下した後、準々決勝でもその後優勝することになるポルトガルを相手に120分間戦い抜き、PK戦で涙を呑んだ。

 このロシアW杯予選の戦いぶりも、同じように説得力のあるものだった。最も手ごわい相手がデンマーク、モンテネグロという比較的楽なグループではあったが、ポーランドはデンマークに1敗(0-4)を喫しただけで、残る9試合で8勝1分という結果を残して首位で勝ち上がったのだ。チームの絶対的な大黒柱は、CFのロベルト・レバンドフスキ(バイエルン)。10試合での総得点28のうち16得点を挙げ、W杯予選における個人の最多得点記録を更新した。予選中は親善試合を戦わないというサッカー協会の方針も寄与してFIFAランキングも一時6位まで上昇し、本大会ドローにおける第1シードの権利を手に入れた。

就任5年目を迎えるアダム・ナバウカ監督の下で、チームとしては極めて高いレベルで仕上がっている

ポーランドの戦い方
Come gioca la Polonia

 ナバウカ監督は直近の2年間も、EURO2016で採用した[4-2-3-1]システムを基本とするプロジェクトを継続してきた。ただ、そのEURO2016でセカンドトップとトップ下のハイブリッドとでも言うべき機能を担ってエースのレバンドフスキをサポートしたアルカディウシュ・ミリクが、2度にわたる大きなケガで予選のほぼ全期間を通じて戦列を離れていたこともあり、そのミリクと同じナポリでプレーするピオトル・ジエリンスキが中盤センターから1つポジションを上げる形で、トップ下でプレーしてきた。

 その中盤センターでは、大黒柱とも言うべき存在だったグジェゴシュ・クリホビアクが、EURO直後にパリSGに移籍して以降クラブでの出場機会を大幅に減らし、代表でも予選中の一時期、レギュラーポジションを失うことになった。その代役として台頭したのが23歳のカロル・リネティ。クリホビアクは今シーズン、ウェストブロミッチにレンタル移籍して以降は代表でもレギュラー復帰を果たしているが、リネティはその後も中盤センターの一角を確保しそうだ。レフ・ポズナニからイタリアのサンプドリアに移籍して2年目のこの若手MFは、左足の的確なパスワークに加え、外からのクロスに合わせてゴール前に走り込むタイミングの感覚、さらには敵の中盤守備ラインを一気に切り裂くドリブルでの持ち上がりにも長けている。守備の局面においても、優れたポジショニングと1対1の守備力によって中盤でのボール奪取に貢献する。

 サンプドリアでも不動のレギュラーとなったリネティの台頭を除くと、メンバーと戦術いずれの側面においても、本大会に向けての新機軸は特に打ち出されてはいない。ポーランドの国内リーグから新たなタレントは生まれていないし、EURO2016で大きなサプライズだったバルトシュ・カプストゥカにしても、レスターへの移籍とフライブルクへのレンタルというキャリアを送る中で、我われの視界から消えてしまった。フライブルクではまったく出場機会を得られず、現在はBチームに格下げとなっている状況だ。ポーランド国内で台頭したタレントは、数年前までと比べてずっと早い段階、すなわち低い年齢で母国を離れるようになった。しかしそうやって国外に移籍した若手の多くは成長するよりも伸び悩むケースが多く、代表においてもEURO2016で中核を担った主力組を脅かす存在は現れていない。

 その中で唯一の「実験」(結果的には失敗に終わっている)は、昨年11月に戦われたウルグアイ、メキシコとの親善試合で試された[3-4-3]システムだった。主力の多くを欠いていたこともあり、国内リーグで成長中だったCBヤロスワフ・ヤフ(現クリスタルパレス)、ディナモ・キエフのSBトマシュ・ケンジョーラ、ブルガリアの強豪ルドゴレツのMFヤチェク・ゴラルスキと同クラブのチームメイトであるヤクブ・シュウェルチョクといった新戦力にチャンスが与えられた。しかし2試合ともにチームとしてのパフォーマンスは及第点以下にとどまり、0-1で敗れたメキシコ戦では前半終了時、グダニスクのスタジアムを埋めた観衆がロッカールームに戻る選手たちにブーイングの口笛を浴びせたほどだった。

サンプドリアでブレイクした左利きのリネティはテクニカルなタイプだ。日本が前からボールを狩りに行くとすれば厄介な存在になる

 それもあって、ナバウカ監督はロシアでの本番に際して、近年の成功を支えてきた[4-2-3-1]を継続する可能性が極めて高い。このシステムの長所は戦術的なシンプルさ、そして対戦相手に応じて戦い方を変えられる柔軟性にある。格上の相手と戦う時には、重心を低く保って[4-4-2]の守備ブロックを構築し、自陣で相手を待ち受けるアプローチを好む。中央のゾーンをしっかりと固めながらスムーズに左右にスライドし、ボール奪取を急ぐことなく相手の攻撃をはね返す。しかしいったんボールを(通常はサイドで)奪うと、そこから一気に電撃的な逆襲に転じる。

 ブワシュチコフスキ、グロシツキという左右のウイングは、守備の局面において相対的に内に絞ったポジションを取っている。これはカウンターアタックに転じた時にも有利に働く。ハーフスペースを駆け上がることでその後のプレーに選択肢が増えるだけでなく、守備側も彼らをサイドに追い込むのが難しくなるからだ。時には、CFのレバンドフスキが外のレーンにポジションを取って、2人のウイングが前方のスペースをアタックする際の基準点として機能することもある。ブワシュチコフスキは今シーズン一度ならず故障に悩まされてきたが、ロシアでの本番までには復帰できるはずだ。

 この両ウイングは1対1の突破力で勝負するテクニカルなドリブラーではなく、最大の持ち味である走力とスピードを存分に発揮するためには前方に広いスペースを必要とする。逆に狭いスペースをこじ開ける能力は高いとは言えないため、引いた守備ブロックを攻略するのは得意ではない。控えにも高い突破力を備えたテクニシャンはいないため、チームで最も優れたテクニックの持ち主であるジエリンスキをウイングとして起用することも想定される。この選択肢は、ポーランドが主導権を握って戦うタイプの試合において、前線にレバンドフスキとミリクを同時起用するためのソリューション(解決策)としても有効だろう。

ポーランドの困難
Le difficoltà della Polonia

 ポーランドは危険極まりないカウンターアタックを最大の武器としているが、ボールを保持し主導権を握ってプレーする展開になると、困難に直面することが少なくない。通常、攻撃の組み立ては非常に低いゾーンを起点として、左右に開いたCBの間にセントラルMFのどちらか(主にクリホビアク)が落ちてくるところからスタートする。3ラインの間隔は広めで、それがそれぞれのセクションを結びつけてボールをスムーズに前に運ぶ上で小さくない困難をもたらしている。しかしこれは同時に、敵の守備ラインを間延びさせて、グラウンダーのパスでの組み立てが行き詰まった時にロングボールを蹴り込むのを容易にするという戦略的な狙いにも繋がっている。敵のプレッシャーを遠ざけることで、アタッカー陣とMF陣がロングパスに続くセカンドボールを拾いやすい状況を作れるからだ。

ポーランドはクロスに対応して常に多くの人数をエリア内に送り込むことで、得点のチャンスを最大化しようと試みる。この場面(予選のマケドニア戦)では、ピシュチェクがジエリンスキに向けてマイナスのクロスを送り、そこからアシストが生まれている

 ナバウカ監督が純粋なトレクァルティスタ(ジエリンスキ)ではなくミリクをトップ下に起用する時には、2トップのどちらかが2ライン間に下がる動きでマーカーを最終ラインから釣り出し、そのスペースにMFが素早く入り込むことによってコンビネーションによる崩しの形を作り出そうと試みる。

 しかしポーランドの最大の強みは、SBとウイングが構成するチェーンが極めて効果的に機能して複数のソリューションを作り出すサイドアタックにこそある。注目すべきは、その試合ごとにどちらかのサイドを集中的に使って攻撃を組み立てようとする傾向が見られること。相手が攻撃的なSBを起用しているサイドが「標的」になることが多い。その際、逆サイドのウイングは大きく外に開いたポジションを保ち、ボールサイドでの攻撃が行き詰まった時スムーズにサイドを変えて攻め直すためのオプションを提供している。カウンターアタックとビルドアップのいずれにおいても共通する攻撃のテーマは、できる限り多くのプレーヤーをペナルティエリア内に送り込むこと。レバンドフスキが時おり個人能力を発揮して強引なフィニッシュをひねり出すのを除くと、決定機のほとんどはサイドをえぐってのクロスから生まれることを考えれば、これは理に適った戦略だ。

 クロスに対しては、2セントラルMFの一方がタイミングをずらして後方から入ってくる。これは敵の最終ラインをペナルティエリア内まで押し下げた後、マイナスのクロスを送ってミドルシュートを打つ形を作り出す上で有効に働く。また前線に多くの人数を送り込むことにより、セカンドボールの回収も有利になる。

 守備の局面は、試合によって基準点をどこに置くかが柔軟に変化するのが特長だ。ほとんどの場合、ゾーンの中で人を捕まえるゾーンマークが原則となるが、自陣に引いて受けに回るゲームプランを選んだ場合には、ボールに基準点を置き守備陣形とラインを維持する、よりゾーン志向の強い守り方を選ぶこともある。しかし、この柔軟性は時に不具合を引き起こすこともある。特に、左右のウイングがそろって敵のSBに守備の基準点を置く一方で、セントラルMFと最終ラインがボールに基準点を置いてゾーンで守る場合には、セントラルMFとウイングの間のハーフスペースにギャップが生まれやすくなる。このスペースにインサイドMF2人を送り込むことが、ポーランドの固い守備ブロックをこじ開ける鍵になり得る。

デンマーク戦の一場面。グロシツキとブワシュチコフスキが敵SBをマークする一方、残る守備ブロックはボールの位置に基準点を置いて動いている。ハーフスペースが開いているにもかかわらず、デンマークはそこを使わずにロングボールを選んだ

 ポーランドは、レバンドフスキというワールドクラスのストライカーを擁するだけでなく、シンプルで筋の通ったシステムを土台として、相手に合わせて戦い方を変える柔軟性も備えている。低い位置にコンパクトな守備ブロックを敷いた時にそれをこじ開けるのは困難だ。しかしビルドアップにおいても守備の局面においても明らかな弱点を持っている。日本に勝利をもたらすためには、この弱点を的確に突くことが必要になるだろう。


■ ウルティモ・ウオモが暴く「日本の敵」の正体
コロンビア編
セネガル編
ポーランド編

Photos: Getty Images
Analysis: Flavio Fusi
Translation: Michio Katano

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FIFAワールドカップポーランド代表

Profile

ウルティモ ウオモ

ダニエーレ・マヌシアとティモシー・スモールの2人が共同で創設したイタリア発のまったく新しいWEBマガジン。長文の分析・考察が中心で、テクニカルで専門的な世界と文学的にスポーツを語る世界を一つに統合することを目指す。従来のジャーナリズムにはなかった専門性の高い記事で新たなファン層を開拓し、イタリア国内で高い評価を得ている。媒体名のウルティモ・ウオモは「最後の1人=オフサイドラインの基準となるDF」を意味する。