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思い起こされる10年前の記憶。柏レイソルの“勝つ未来”を担うリカルド・ロドリゲス新監督への期待と希望

2025.01.16

太陽黄焔章 第20回

2年連続で17位とJ1残留争いを強いられてきた柏レイソルは、新指揮官にリカルド・ロドリゲス監督を招聘した。堅守速攻型から、ポゼッション型へ。明らかに変わることが予想されるサッカーのスタイル。ただ、この移行はまさに10年前のそれを思い起こさせる。その時に望んだような未来を描けなかった記憶を、今回こそポジティブに塗り替えることはできるのだろうか。当時を知る鈴木潤が、その展望を考察する。

標榜するスタイルの移行。リカルド式サッカーに対するアカデミー出身者の期待

 今オフ、柏レイソルは大幅な戦力の入れ替えを行った。10人が柏を離れた代わりに、新たに14人の戦力が加わった。もちろん、移籍したマテウス・サヴィオと関根大輝の穴は小さくない。それでも新戦力のほとんどが前所属クラブではレギュラークラスであり、選手層という点では2024年とは比にならないほど厚みを増した。

 柏にとっての最大の変化は、間違いなくリカルド・ロドリゲス監督の就任だ。

 新指揮官招聘が意味するもの、それは標榜するスタイルの移行である。ここ数年の堅守速攻型のチームは、リカルド・ロドリゲス監督によってボールを保持するポゼッション型のチームへと生まれ変わることになる。古賀太陽、細谷真大、手塚康平、白井永地、松本健太、山田雄士といった柏アカデミー出身選手にとって、リカルド式のサッカーは、彼らがアカデミー時代に慣れ親しんだスタイルへの回帰とも言える。

 実際に1月9日の始動初日。練習後に話を聞いた古賀や山田は、リカルド・ロドリゲス監督の求めるスタイルに、アカデミー時代と同じ感覚を抱いた。

 「個人的には今年からもう一回やろうとしているサッカーの部分は、忘れずにやってきたつもりですし、自分自身もそこは大事にしてきたつもりなので、多少、久しぶりだなという感じがしました。でも戸惑うこともなくスムーズにやれていますし、やりやすいです」(古賀)

 「攻撃的になるというので、すごく楽しみです。サッカー選手として成長できそうだという感触がありますし、アカデミーでやってきた自分の持ち味に立ち返って、自分のプレーができるようにやっていきたいと思います」(山田)

 始動初日から早くも戦術的なメニューを取り入れ、ポジショニングやパス一つひとつにこだわりを持つリカルド・ロドリゲス監督の要求に、古賀や山田は懐かしさを感じながらプレーをしていた。

絶妙にシンクロする選手のコメント。2015年との共通点

 こうした彼らの言葉を聞いて、思い起こされたのが10年前の記憶だった。

 2015年、前年限りで退任したネルシーニョ監督の後を継ぎ、新たに吉田達磨監督が就任した。この監督交代を機に、チームのスタイルはネルシーニョ式の堅守速攻から、アカデミーのコンセプトと同じポゼッションへと移行するのだが、10年前の始動初日に聞いた工藤壮人、茨田陽生の話が、前述の古賀、山田のコメントと絶妙にシンクロするのだ。……

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Profile

鈴木 潤

2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。

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