Rマドリーに劇的勝利のベンフィカが体現するモウリーニョの美学。CL決勝Tプレーオフでの再戦を占う3つの好材料とは?
いよいよ現地時間2月17日に決戦の火ぶたが切って落とされる、CLノックアウトフェーズ進出を懸けたプレーオフ。中でも注目の対戦カードはやはり、リーグフェーズ最終節で明暗が分かれたベンフィカとレアル・マドリーの再戦だろう。その行方を占う3つの好材料を、“ベンフィキスタ”(ベンフィカサポーターの愛称)のゴンサロ氏に前回対戦を振り返りながら教えてもらった。
今季のCLはベンフィカにとって、史上最悪ともいえるスタートだった。前監督ブルーノ・ラージェと臨んだリーグフェーズ初戦は格下カラバフ相手にまさかの黒星。その2日後の9月18日にジョゼ・モウリーニョ政権が発足するが、翌節チェルシー戦から第4節レバークーゼン戦までも勝ち点をつかめない。悪夢の開幕4連敗を喫した直後の本拠エスタディオ・ダ・ルスにはブーイングが吹き荒れ、ベンフィカサポーターにも「諦めムード」が漂っていた。それでも、希望を捨てていない指揮官は、レバークーゼン戦後の記者会見でリーグフェーズ突破の可能性について問われ、以下のように語っている。
「私は非常に楽観的です。『もう予選で敗退した』と私に納得させることができる人はいません。数学的に言えばとても明確で、残りは12ポイント(4試合)があり、必要なのはそのうち9ポイントほどです。理論上は突破可能です。それだけではなく、今日の試合は、我われが(リーグフェーズ突破に)必要な試合で勝てるという確信を与えてくれました。非常に強く、説得力のある戦いぶりでした。私はみなさんやファンのみなさんと違う視点を持っています。なぜなら、(監督は)すべての角度から物事を見なければならないからです。我われが敗れたのは事実です。しかし、チームの攻撃の質や守備、後ろからのビルドアップ、そして多くのチャンスを作ったことにも目を向けるべきでしょう」
「1つミスをすれば…」リスク管理も徹底したRマドリー対策
その後はアヤックス、ナポリを相手に2連勝を飾ったが第7節のユベントス戦で敗れ、リーグフェーズ突破のボーダーラインと2ポイント差の29位で迎えた3位レアル・マドリーとの最終節。ベンフィカは引き分けでもノックアウトフェーズへのストレートインが確定する対戦相手とは対照的に、勝利が絶対条件となる。32位のアヤックスまでプレーオフ圏内の24位以上に入る可能性を残していたため、得失点差や他会場にも左右される予断を許さないホームゲームであったものの、モウリーニョは前日会見でこのように古巣に敬意を払いながらも意気込みを口にしていた。
「レアル・マドリーは非常に強いチームですが、我われはアグレッシブでなければなりません。相手に敬意を払う必要はありますが、恐れを抱いたり、コンプレックスを持ってはいけない。彼らは相手が1つミスをすれば、それを必ず点に繋げてくる。その点も十分に考慮しなければなりません」
指揮官の宣言通り、試合のキックオフと同時にベンフィカはアグレッシブに試合を運んだ。攻撃時は[4-2-3-1]、守備時は[4-4-2]の陣形を採用、2トップも含めた全員の帰陣が徹底されていた。相手のエースである左ウイングのビニシウス・ジュニオールやCFのキリアン・ムバッぺにボールが入れば、必ず2人以上でアプローチ。そして、守備の負担が軽減されているビニシウスの背後を突き、そこで縦関係を築くサイドハーフのジャンルカ・プレスティアーニとSBのアマル・デディッチが、元ベンフィカの左SBアルバロ・カレーラスを翻弄し右サイドからチャンスを量産した。デディッチの後ろにはボランチのレアンドロ・バレイロおよび快速CBのトマス・アラウージョが構え、ビニシウスを徹底マークするなどリスク管理も徹底している。
万全な守備体制と思われたが、前半30分に右CBラウール・アセンシオにアーリークロスを許すと、ファーサイドに飛び込んだムバッペにヘディングを叩き込まれる。それでも6分後、右サイドの自陣ペナルティエリア付近でボールを奪取してすぐさまカウンターに移行したベンフィカが、CFエバンゲロス・パブリディスのクロスに、左サイドハーフのアンドレアス・シェルデルップが頭で合わせて同点。前半ロスタイムにはコーナーキックの行き先での競り合いで、左CBニコラス・オタメンディが倒されて獲得したPKをパブリディスが落ち着いて決め、逆転して試合を折り返す。
「『相手を仕留める』か『立ったまま死ぬか』の2択」を制す!
そして後半9分、自陣中央から敵陣へとボールを運んだトップ下のヘオルヒー・スダコフを起点に、ボールを右から左へと展開すると、アセンシオとの1対1を迎えたシェルデルップがその股下を抜いて追加点。しかし2点差の余裕が生まれたのも束の間、4分後にキックフェイントでマークを外した右インサイドハーフ、アルダ・ギュレルのマイナスクロスをムバッぺに流し込まれ、1点差に迫られる。
それでもベンフィカがリードを維持して時計の針が90分を回ると、5分と表示されたロスタイムの2分にアセンシオがバレイロへのハードタックルで2枚目のイエローカードを受けて退場に。勝ち点3を積み上げたリバプール、トッテナム、バルセロナ、チェルシー、スポルティング、マンチェスター・シティの6チームに追い抜かれ、ストレートイン圏外の暫定9位に転落していた敗色濃厚のレアル・マドリーは、数的不利の窮地にも追い込まれた。
直後にベンフィカはすかさずCFフラニョ・イバノビッチとCBアントニオ・シウバを投入し、試合を締めにかかったが、この時点では勝ち点と得失点差で並ぶマルセイユを総得点数で上回れず、順位上はプレーオフ圏外の暫定25位。しかし、モウリーニョを含めホームチームはこの事実をまだ知らず、状況を把握していたマヌエル・ルイ・コスタ会長は95分にボールをキャッチして時間稼ぎをするGKアナトリー・トルビンに対し、「早くパスを出せ!」とスタンドから叫んでいた。
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Profile
ゴンサロ
大学時代にポルトガルのリスボンへ留学。現地エスタディオ・ダ・ルスの熱狂的雰囲気に圧倒され、ベンフィカの虜となる。趣味はベンフィカやポルトガル代表の試合観戦を目的とした海外旅行。ポルトガルサッカーに関するニッチな情報を日々SNSにて発信している。X:@BergkamPutin
