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「そこにいるだけで」ヘンクが変わる。監督、サポーターに聞いた“伊東純也とは?”【現地取材・中編】

2026.02.15

スタッド・ランス時代の伊東純也を取材してきた、小川由紀子さんのベルギー出張レポート。中編では、ヘンクにとって彼はどんな存在なのか、リーグ第24節アンデルレヒト戦(○2-0)に駆けつけた地元のサポーターたち、そして昨年12月22日に就任したニッキー・ヘイエン新監督の声をお届けする。2カ月半の負傷離脱を経て1月22日からスタメンに復帰して以降、チームは公式戦5勝1分無敗と、その影響力は3年ぶりに帰還した今季も絶大だ。

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ファンは誰もがいつでも、彼の帰りを待っていた

 日本の、とりわけサッカー好きな方々の中には、オランダ国境に近いベルギーの小都市ヘンクという町については、伊東純也の存在を通して知った、という人は少なくないと思う。

 では逆に、ヘンクの人たちにとっての伊東とはどんな存在か、というと、ここ数年のKRCヘンクに輝きを与えてくれている、おらが街のエース級選手、という感じだ。

 2月8日に本拠地セゲカ・アレナで行われたアンデルレヒト戦を見に行った時、道中で言葉を交わしたサポーターの人たちに「イトーのことは知ってる?」「彼が戻ってきてうれしい?」とベタな質問をしていたのだが、みんなが例外なく、

 「もちろん彼が戻ってきてくれてうれしい」

 「彼が移籍してしまった時は本当に残念だったから、戻ってくるとわかって本当にうれしかった」

 「ファンはいつでも彼の帰りを待っていたから、復帰は大歓迎!」

 と答えるので、早々にこれについて聞くのはやめにしたくらいだ(1組だけ、ティーンエイジャーらしき若者グループが「最近ファンになったばっかりだから、彼のことはよく知らないんだ」と言っていた)。

バイオレントな空気が一切しない試合前のセゲカ・アレナ周辺(Photo: Yukiko Ogawa)
スタジアム横に設けられたファンゾーンや屋台も大賑わい(Photo: Yukiko Ogawa)
ファンのみなさん。一番右の女性はもう30年来のヘンクサポーターということで、2002-03シーズンに在籍した鈴木隆行氏のことも「もちろん覚えているわよ。あたりまえでしょ」とドヤ顔だった(Photo: Yukiko Ogawa)

 そもそも、今回のヘンクへの旅では、現地で宿泊した宿屋のマダムに最初の洗礼を受けたのだった。

 その宿屋は1階がレストランになっている“旅籠”のようなところで、白いワンちゃんとたわむれていた初老のマダムに「明日はスタジアムに行くんだ」と言ったら、「ああ、アンデルレヒト戦ね。強豪相手の大事な一戦だわ」と、実にツウな答えが返ってきた。

 「サッカーはお好きなんですか?」と聞くと、「商売があるからスタジアムには行けないけど、試合はいつもここのテレビで見てるのよ」とマダム。フロントの後ろの壁には、どーーーんと大型スクリーンのテレビがかけてあった。

 「日本人選手の……」とまで言いかけたら、「イトーでしょ?」と言ってマダムはにっこり笑った。

 「みんな彼が戻ってきてとても喜んでいるわよ」

 彼女もやっぱり、“当然知っています”顔だった。

「ジュンヤみたいなベテランがいてくれるのはありがたい」理由

 そのプレースタイルやスキルの高さ、勝利を呼び込む力で人気があるのは1つとして、ファンが彼の復帰を喜んでいる理由を深掘りしていくと、大きく分けて2つの状況に行き着く。

 1つは、彼が今このクラブで希少となったベテラン選手であることだ。

 「今のヘンクは、若い選手を連れてきて、育てて、若いうちに手放す、そういうスタイルのクラブになっている。だから、ちょっと活躍してきたな、と思うと他へ行ってしまうんだ。そんな常に不安定なチームだからこそ、ジュンヤみたいなベテラン選手がいてくれるのはありがたい」

 そう持論を展開してくれたのは、祖母がクラブの立ち上げにも関わったという40代くらいの男性ダビッドさん。

祖母がKRCヘンク創立に携わったというダビッドさん(左)は、今はブリュッセルの近くに住んでいるが、シーズンチケットホルダー(毎年もらえるらしい)で、ホーム戦には欠かさず足を運んでいる。試合前からビールを3杯流し込んでご機嫌。息子のマッテオくん(右)は、ヘンクのユースチームに入る予定だ(Photo: Yukiko Ogawa)

 確かにアンデルレヒト戦の先発イレブンを見ても、20代前半の若手や、在籍期間が2年未満の選手が半数くらいを占めている。

……

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Profile

小川 由紀子

ブリティッシュロックに浸りたくて92年に渡英。96年より取材活動を始める。その年のEUROでイングランドが敗退したウェンブリーでの瞬間はいまだに胸が痛い思い出。その後パリに引っ越し、F1、自転車、バスケなどにも幅を広げつつ、フェロー諸島やブルネイ、マルタといった小国を中心に43カ国でサッカーを見て歩く。地味な話題に興味をそそられがちで、超遅咲きのジャズピアニストを志しているが、万年ビギナー。

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