イェンス・ヴィッシング監督と大阪ダービーで踏み出した第一歩。ガンバは「一丸」でタイトル奪還に挑む!
Jリーグ新監督のビジョン#8
2026シーズンのJリーグは、降格がない百年構想リーグという変則レギュレーションの後押しもあり、チャレンジングな監督人事が目立つ。サンフレッチェ広島のバルトシュ・ガウル監督は38歳、ガンバ大阪のイェンス・ヴィッシング監督は37歳(就任発表当時)とドイツの新世代監督を招聘。トップレベルの指導経験はない藤枝MYFCの槙野智章監督も驚きの人選だった。名古屋グランパスのミハイロ・ペトロヴィッチ監督や北海道コンサドーレ札幌の川井健太監督、横浜FCの須藤大輔監督といった攻撃サッカーを掲げる戦術家も新天地で新たな挑戦を始める。未知の魅力にあふれた新たなサイクルの幕開け――Jリーグ新監督のビジョンに迫る。
第8回は、「クラブ全体にチャレンジするんだとメッセージを届けたい」という意図も相まって、ガンバ大阪が新指揮官に抜擢したイェンス・ヴィッシングに注目。日本でプロ監督としての第一歩を踏み出した異国の指導者が見据えるビジョンを、初陣の大阪ダービーから読み解く。
安部柊斗のPKがネットを揺らし、スタンドの青黒がはためく中でイェンス・ヴィッシング監督は歓喜の声を上げた。試合序盤かたくなに胸の前で組まれていた両腕はすっかり解き放たれ、スタッフや選手と輪を作るべく大きく広げられた。いくつかの急展開を挟み、J1百年構想リーグ地域リーグラウンド開幕節の大阪ダービーは史上初のスコアレスで90分が終了。PK戦の末に勝ち点2をつかんでガンバが「俺たちが大阪」をいったん主張できる結果を手に入れた。これがプロチームで初めての正式指揮だったヴィッシング監督はわずか41分間だったフルメンバー同士の競り合いの中でもピッチに自身のスタイルの痕跡を残した。それらを確認しつつ、クラブの全体的な方向にも触れながらビジョンを考える。
「理想の感覚」(南野)を生んだタスクの明確さ
まずは試合前の「見立て」から始めたい。試合2日前の時点で指揮官は、自身が求めるサッカーを成り立たせるためのカギとなる部分に「一丸」を強調していた。「このサッカーをやるには一丸となって戦うことが大事。口では簡単に言えるが、スピーディーな中でどれだけそうなっていけるか。チームとして何をしなきゃいけないか、一人ひとりが考えてやること」。他に選手への要求として並んだのは「ハードワーク」「強度高く」「スピーディーに」といった言葉。主将の中谷進之介も「奪った後の縦のスピードと、切り替えのところのゲーゲンプレスは去年までとはるかに変わったところ。縦に早く攻め切るところは見せられるんじゃないか」「(プレスに)行けないなら行けないでコンパクトにと言われている」と今季のサッカーの一端を説明しており、こうして語られた部分がいかに実現されるか、それも大阪ダービーという否が応でもテンションの上がる試合で完遂できるかが注目された。
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Profile
邨田 直人
1994年生まれ。サンケイスポーツで2019年よりサッカー担当。取材領域は主にJリーグ(関西中心)、日本代表。人や組織がサッカーに求める「何か」について考えるため、移動、儀礼、記憶や人種的思考について学習・発信しています。ジャック・ウィルシャーはアイドル。好きなクラブチームはアーセナル、好きな選手はジャック・ウィルシャー。Twitter: @sanspo_wsftbl
