1月20日、世界中のサッカーファンの間で衝撃が走った。端を発したのは、過去7年間にわたって41万超の試合で23万人超の選手が記録したゴール期待値をはじめとする高度かつ詳細なスタッツを、サッカー談義やサッカー分析の材料として無料で豊富にそろえていたデータサイト「FBref」。その運営元であるSports Reference社のショーン・フォーマンCEOいわく、突如データプロバイダー「Opta」から「データフィードへのアクセス終了とサイト上にある当該データの即時削除を求める書簡が届いた」ため、ありとあらゆる指標がFBrefから姿を消すことになったからだ。この決別でますます顕在化したデータ活用におけるサッカーとアメリカンスポーツの決定的な差を、前後編に分けて秋吉圭(EFLから見るフットボール)氏が解説する。
私はTwitterが好きだった。使い始めたのは高校生の頃だ。まだ狭い世界しか見えていない自分に世間、もっと言えば海外との繋がりまで持たせてくれたのは間違いなくTwitterだったし、今にして思えば恥ずかしいノリもあったとはいえ、そこにはなんだか秘密基地感があった。
有用な情報、ちょっとした笑い話、それまで能動的にしか触れることのできなかった著名人たちの日常。スマホ1つでそれらすべてを受動的に生活の中に組み込んでくれるTwitterは、おそらく私だけでなく多くの人にとって、生活インフラ同然の存在になっていたように思う。
そんな当たり前の存在とて、奪われる時はあっという間だ。2023年7月、僕らが好きだったTwitterは、音を立てて崩れ去った。
イーロン・マスクが世界に対してどんな理想を持ってTwitter社を買収したのかは知る由もない。別に聞いてみたいとも思わない。重要なのは現実問題として、彼の買収以前と以後で、Twitterが変わってしまったということだ。
人々のクリエイティブさと活気に支えられていたはずのプラットフォームは、買収者自らが積極的に推進した課金モデル・収益化の推奨によって、ただの金策テクニック披露会になってしまった。純粋な面白さではなく、マーケティング的な「コツ」ばかりが目につくようになった。頭の切れるアルゴリズムは人間の負の感情をくすぐり、少しでもバズった投稿にはインプレゾンビがX乗の勢いで群がる。
失われたものを取り返すのは容易ではない。致し方なしに使い続けたところで、かつてTwitterで得られた心地よさはもう戻ってこない。そしてこれはただの一例に過ぎない。それがどんなに大切なものでも往々にして、なくなる時はほんの一瞬なのだ。
us 🤝 your phone pic.twitter.com/X0njPhm5wJ
— X (@X) February 7, 2024
「膨大な情報の源泉」FBrefから消えたアンダーラインデータ
「Sports Reference社はFBrefが過去7年間にわたり、世界中のフットボールファンにとって膨大な情報の源泉としての役割を果たしてきたことに大きな誇りを持っている。だが残念なことに先週、我われにAdvanced dataを提供していたプロバイダーから、データフィードへのアクセス終了とサイト上にある当該データの即時削除を求める書簡が届いた。結果として我われは彼らの要求に従い、FBrefおよびStatheadからプロバイダーのデータを削除する措置を取った」
無念さを滲ませるSports Reference社CEOショーン・フォーマンの声明が多くのフットボールファン・アナリストたちを青天の霹靂に導いた。1月20日、FBref上から、ゴールやアシストといったごく基本的な数字を除くすべてのデータが消え去った。
声明上で言及された “Advanced data” について、ここからは便宜上イギリスでよく用いられる “Underlying Data(アンダーラインデータ)” という書き方に統一する。馴染みのない方のために説明すると、これはxG(ゴール期待値)、xGA(被ゴール期待値)といった期待値系のスタッツ、ショット・クリエイティング・アクション(SCA)などといった統計学的なスタッツのことで、従来のシンプルなデータでは不可能なレベルでのフットボール分析を可能にする高度なデータのことだ。
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Profile
秋吉 圭(EFLから見るフットボール)
1996年生まれ。高校時代にEFL(英2、3、4部)についての発信活動を開始し、社会学的な視点やUnderlying Dataを用いた独自の角度を意識しながら、「世界最高の下部リーグ」と信じるEFLの幅広い魅力を伝えるべく執筆を行う。小学5年生からのバーミンガムファンで、2023-24シーズンには1年間現地に移住しカップ戦も含めた全試合観戦を達成し、クラブが選ぶ同季の年間最優秀サポーター賞を受賞した。X:@Japanesethe72
