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新エージェント規則「FFAR」って何?FIFAの制度改革から占うサッカー代理人業界の行方

2023.01.25

6日に国際サッカー連盟(FIFA)から発表された選手エージェント業務の新規則「FIFAフットボールエージェント・レギュレーションズ」。旧制度に代わって10月から適用される、サッカー代理人が選手の契約や移籍に関わる手続きを行う上での原則の変更点を、日本サッカー協会登録仲介人の柳田佑介氏に解説してもらった。

国内取引にも影響を及ぼす新規則の誕生

 国際サッカー連盟(FIFA)は2023年1月6日、プロサッカー選手のクラブとの契約およびクラブ間移籍を斡旋・仲介する業務(以下、「エージェント業務」とする)を管轄する新たな規則であるFIFAフットボールエージェント・レギュレーションズ(FIFA Football Agent Regulations=FFAR)をリリースした(注:同1月9日より発効)。

 FFARは2015年から施行されている現行のいわゆる「仲介人制度」(Regulations on Working With Intermediaries=RWWI)に代わるもので、各国協会に登録してエージェント業務を行っていた選手仲介人(日本サッカー協会=JFAへは430人以上が登録している)への影響は甚大だが、国際取引が対象となっている ことに注意を払う必要がある。

 つまり国内取引についてはこのFFARを受けて各国サッカー協会(FA)が制定するナショナルフットボールエージェント・レギュレーションズ(National Football Agent Regulations=NFAR)の適用を受けることになるため、日本のクラブ・選手を主なクライアントとしている日本の選手仲介人にとってはJFAのNFARこそが関心事となり、一日も早い制定が待たれるところである(注:FFARでは2023年9月30日が各国FAによるNAFR制定期限とされている )。

 もっともNFARは原則としてFFARを踏襲することになっており(より厳格な規定は許容される )、選手仲介人が2023年10月1日以降もエージェント業務を継続するためにはいずれにしてもFFARに規定される手続きを経てライセンスを取得しなければならないため、現在国内取引のみを行っている選手仲介人にとっても、まずFFARの建てつけを理解することの意味は大きい。

無法地帯化を防止するライセンス制の復活

 元来FIFAは、各国協会が実施する試験に合格してライセンスを発行された認定エージェントのみがエージェント業務を行うことができるという「エージェントライセンス制度」を採用していた。しかしFIFAは2015年4月に突如同制度を廃止し、欠格事由にさえ該当しなければ各国FAに登録をすることで誰でもエージェント業務を行うことが可能になる仲介人制度を導入したのである。

 この仲介人制度の狙いは、エージェント業務を行う者を第三者(Third Party)と位置づけ、選手やクラブが非倫理的/違法な振る舞いをする第三者を用いることを禁止することによって、選手とクラブの利益をこうした第三者による搾取や利益相反行為から保護することにあった。しかし残念ながらこの改革によって非倫理的・違法な振る舞いをする第三者のサッカー界への関わりが減少することはなく、むしろライセンスという明確な基準(エージェントがFIFAの各規程に通じていること/各国FAの管理・管轄に服すること)が失われたがゆえに、サッカー界にはより一層、自らの利益しか顧みない自己中心的拝金主義者や反社会的団体と通じた無法者たちが跋扈するようになった。結果として、選手やクラブはより大きなリスクを抱え、様々なトラブルや利益の流失に見舞われている。

 このことを重く見たFIFAは、2019年にエージェントの職業倫理を高め、エージェントビジネスの透明性を高めることを主目的とした、ライセンス制とサービスフィーキャップ(手数料の上限設定)を軸とする新たなエージェント制度を再導入することの検討を開始した。そしてその後の様々な関係団体との幾度にもわたる協議やサッカー界を大きく揺るがしたコロナ禍による数度の施行延期を経て、この新たなエージェント制度の柱となるFFARは、2022年12月16日にドーハにて開催されたFIFA カウンシルにおいて承認されこの度施行されることとなった。

クラブW杯2022年大会のモロッコ開催や同2025年大会からの出場枠32チーム拡大、そしてFIFAワールドシリーズの構想が注目を集めた昨年12月のFIFAカウンシル。その裏でFFARの導入も進められていた

FFARの重要点、RWWIとの相違点は?

 FFARの主な特徴として、以下の3点が挙げられる。……

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Profile

柳田 佑介

1977年に両親の駐在に伴いチリで生まれ、幼少期をベネズエラで過ごす。東京大学法学部を卒業後は日本貿易振興機構(ジェトロ)に就職し、日本企業の海外ビジネス支援に従事する。08年にプロサッカー選手代理人に転身し、日本サッカー協会公認代理人資格を取得。大手エージェンシーに所属して契約選手をサポートする傍ら、欧州サッカー界とのパイプを構築し、契約選手の欧州移籍やオランダ・アムステルダムでの東日本大震災チャリティマッチの開催等に携わった。13年よりドイツ・デュッセルドルフに居を移し、本格的に欧州のサッカー関係者との人脈作りに取り組む。その後は勤めていたエージェンシーを退職して独立。18年に東京とデュッセルドルフを拠点とする株式会社グロボル・フットビズ・コンサルティングを設立し現在に至る。