REGULAR

チームの勝利にコミットするサガン鳥栖の新キャプテン。今津佑太が証明するのはやり続けることの価値

2025.05.09

プロビンチャの息吹~サガンリポート~ 第15回

選手とスタッフの投票で選ばれた新キャプテンは、苦しんでいた。開幕戦こそスタメンを勝ち獲ったものの、その試合で思わぬ負傷離脱。復帰後も先発の座はなかなか取り戻せない。だが、第14節の徳島ヴォルティス戦で久々にスタートからピッチに立つと、自ら決めたゴールを守り切ってアウェイでの勝利を手繰り寄せ、その存在価値を証明してみせた。今津佑太。29歳。チームの大黒柱がキャプテンとイチプレーヤーの狭間で考えていることに、杉山文宣が迫る。

開幕戦以来のピッチ。勝利をつかんだキャプテンの感慨

 「やっぱり苦しかったです、苦しかったというか難しかったです」

 5月6日に行われたJ2第14節・徳島ヴォルティスとのアウェイ戦。開幕戦以来となるスタメンでピッチに立った今津佑太は、セットプレーから先制点を挙げると、守備の要として最終ラインを統率。最後まで徳島の猛攻を跳ね返し続け、勝利の殊勲者となった。しかし、試合後、今津の口から漏れ出たのは冒頭の言葉だった。

 もちろん、この試合も苦しい戦いだった。しかし、今津が「苦しかった」と振り返ったのは徳島戦に至るまでの自分の過程だ。苦しさの出発点は開幕戦だった。

 今季の鳥栖はチームキャプテンを選手、スタッフによる投票制で選出した。そのなかで最多得票を集めたのが今津だった。「これまでキャプテンをやってきたわけでもないし、自分はキャラクターというタイプでもないと思っています」と自認するだけにキャプテンという大役には「緊張したし、どうやっていこうかなとまずは考えました」と話していた。

 そんななかで今津はベガルタ仙台との開幕戦では先発メンバーに名を連ね、キャプテンマークを腕に巻いてピッチに立った。しかし、そこに落とし穴が待っていた。前半をしっかりと抑えてロッカールームに引き上げたが、後半開始のピッチに今津の姿はなかった。前半途中に足に張りを覚えるも責任感からプレーを続行。チームの選手交代でのマネジメントへの影響を最小限に抑えるために前半を何とか乗り切り、「無理をさせて大けがになることは避けたかった」(小菊昭雄監督)と予防措置的な形で退くことになった。

キャプテンとイチプレーヤーの狭間で

 ただ、そこからの回復が思わしくなかった。結果的には「肉離れ」(小菊監督)の診断でそこからリハビリがスタートする。なかなか状態が上がらない日々に「こっちが(どれくらいで復帰するのか)知りたいですよ」と軽口のようでありながら、愚痴のような本心を覗かせることもあった。その背景にあったのは今津の選手としての矜持だった。キャプテン就任の際、今津はこんなことを話していた。……

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Profile

杉山 文宣

福岡県生まれ。大学卒業後、フリーランスとしての活動を開始。2008年からサッカー専門新聞『EL GOLAZO』でジェフ千葉、ジュビロ磐田、栃木SC、横浜FC、アビスパ福岡の担当を歴任し、現在はサガン鳥栖とV・ファーレン長崎を担当。Jリーグを中心に取材活動を行っている。

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