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ルベン・ネベス、超一流のキッカー。林陵平が絶賛する圧巻の技術

2019.02.21

ルベン・ネベス

林陵平のマニアック技術論 Vol.1

RÚBEN NEVES
ルベン・ネベス
(ウォルバーハンプトン)
1997.3.13(21歳)180cm / 80kg MF PORTUGAL

海外の有名どころからマイナー選手まで幅広く網羅したゴールセレブレーションで話題になった東京ヴェルディの林陵平は、自他ともに認める「JリーガーNo.1の海外サッカーマニア」だ。そんな彼が“今見ておくべき選手”のスキルを徹底解剖。今回はウォルバーハンプトンに所属するポルトガル代表MFルベン・ネベスの「キック」について。

 ルベン・ネベスはポルトで17歳、日本で言えば高2でCLデビュー、18歳でキャプテンまで務めていて、その頃から注目していました。そこからチャンピオンシップ(英2部)のウォルバーハンプトンに移籍して「あれっ」と思ったんですが、今シーズンは無事プレミアリーグに昇格してチームの中心として際立ったプレーを見せています。

 プレースタイルは典型的なボランチですね。激しい守備もできて全体的に能力が高いんですが、今回取り上げたいのが「キック」です。

押し込むような独特のインサイドキック

 利き足は右足で、インサイドキック、インステップキック、インフロントキックの3種類のキックを状況に合わせて完璧に使い分けていて、精度も強さも超一流です。

 まず「強さ」の話からしましょう。通常、インサイドキックは正確に出せるけど強さが出にくいキックなので、ショートパスで使われることが多いです。ネベスももちろん、そういう使い方もするんですが、彼はFKやシュートで力を乗せて押し込むような独特のインサイドキックを打てるんです。FKはこの蹴り方で少し落ちる軌道のボールを放ちますし、ドリブルで持ち込んでファーサイドにコントロールシュートを打つ時にも使います。キーパーの手を弾くような威力があり、なおかつ精度が高いボールが打てるのが最大のメリットですね。

 僕の経験上でも外国人選手はこういう蹴り方が得意な印象があるんですが、日本人選手にはなかなかできないキックです。おそらく内転筋が強いんだと思いますが、鍛え方の問題だけでなく、もともとの肉体の構造も関係している気がします。

林選手が「独特」と称したルベン・ネベスのインサイドキック

 サッカー選手は得意なキックがあるものですが、ネベスは3種類全部がハイレベルで、瞬時の判断で使い分けるのが見事です。例えば、ウォルバーハンプトンは押し込まれる展開が多いのでロングカウンターが多いんですが、その際はネベスのインステップキックで蹴るロングパスが起点になっています。こういう場合、緩いボールでは意味がないので、低弾道で速いキックを蹴ることが多いです。サイドチェンジにも同じキックを使います。あとは、シュートはインステップが一番蹴りやすいので、落としをダイレクトに打つとか、ニアにズドンとかは普通にインステップで蹴っていますね。

 インフロントキックは右のハーフスペースあたりから巻いて蹴るクロスで使っています。左のハーフスペースから右足でゴール方向に曲げるボールもこのキックですね。まとめると、低い位置はインステップ、クロスはインフロント、高い位置はインサイドが基本ですね。インサイドキックで出すスルーパスも質が凄く高いのでぜひ注目してほしいです。

圧巻の一振り!レスター戦の芸術アシスト

 瞬時の判断で3種類のキックを自在に使い分けられるのは「ボールの置き場所」がいいからだと思います。常に顔が上がっていて、止めた瞬間に自分の蹴れる間合いにボールがあります。FWの立場で言うと、そこから「一番遠くの選手」をまず見ているのが素晴らしい。最初に遠くを見て、ダメなら近くにパスをする優先順位なので、味方FWは彼がボールを持った瞬間に信じて動き出せますよね。実際、レスター戦(1月19日/4-3の勝利)ではネベスのロングパスからディオゴ・ジョタのチーム3点目が生まれています。このケースでは自陣から高い弾道のインステップキックを蹴って、ジョタの動き出しにピタリと合わせています。

 一言でいうと、ネベスはキックの質だけで楽しめる選手ですね。昔はデイビッド・ベッカムがそうでしたが、今は減ってきている系統で、現役では世界でも有数のキックを持っていると思います。クロスならSPALのマヌエル・ラッザリは天下一品ですし、バイエルンのヨシュア・キミッヒもトップクラスですが、ネベスはすべてにおいて最高水準ですからね。思うに彼が17歳の若さでトップレベルで活躍できたのも、キックというスペシャリティがあったからかもしれません。傑出した武器があれば、多少体ができていなくてもやれちゃいますからね。今は当たりが激しいプレミアリーグでも十分にやれるフィジカルがありますが。

 でも、個人的な希望を言えば、スペインで見てみたい選手ですね。特にレアル・マドリーなんかいいんじゃないでしょうか。バルセロナはショートパスがメインですが、レアルならロングも生きるので。トニ・クロースやルカ・モドリッチの代わりができると思います。ユベントスでも面白そうです。ウォルバーハンプトンのようなカウンターチームでも、レアルやバルサのようなポゼッションチームでもやれるので、近い将来必ずトップレベルに羽ばたいていくはずです。ウォルバーハンプトンの試合を見る際は、ぜひ彼のキックを見てほしいですね。

ルベン・ネベスのゴールセレブレーション。もしかしたら2019年シーズンに林選手バージョンが見れるかも!?

<プロフィール>
Ryohei HAYASHI
林 陵平(東京ヴェルディ)
1986.9.8(32歳)186cm / 80kg FW JAPAN

東京都八王子市生まれ。東京ヴェルディのアカデミーでジュニアからユースまで過ごした。05年に明治大へ進学して頭角を現し、07年関東大学サッカーリーグで43年ぶりの優勝に貢献した。大学卒業後、09年に古巣の東京ヴェルディに加入したが、翌年に柏へ移籍する。その柏でJ2、J1優勝、クラブW杯に出場。12年7月からはモンテディオ山形にレンタル移籍、翌13年シーズンより完全移籍した。17年に水戸へ活躍の場を移し、チーム最多の14得点を記録。プロ10年目の18年、東京ヴェルディへ復帰を果たした。2019年もマニアックなゴールセレブレーションに期待。Twitter:@Ryohei_h11 Instagram:@ryohei_hayashi

Photos: Getty Images

Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。