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「ペナルティエリアの魔術師」ジョアン・フェリックス、狭いスペースを苦にしない理由

2020.12.21

林陵平のマニアック技術論 Vol.10

João Félix
ジョアン・フェリックス
(アトレティコ・マドリー)
1999.11.10(21歳) 181cm / 70kg FW Portugal

海外の有名どころからマイナー選手まで幅広く網羅したゴールセレブレーションで話題になった林陵平は、自他ともに認める「JリーガーNo.1の海外サッカーマニア」だ。そんな彼が“今見ておくべき選手”のスキルを徹底解剖。今回はリーガで首位を走る好調アトレティコ・マドリーを牽引する21歳、ジョアン・フェリックスの「エリア内のオフ・ザ・ボールの動き」を解説。

 今年をもって現役を引退することになりました。とはいえ、現時点ではあと2試合残っていて、それに出場できればJリーグ通算300試合になるので、チームのために最後まで全力を尽くしたいです(編注:J2第41節岡山戦では途中出場からゴールを決めると、最終節の京都戦でも69分に投入されチームの勝利に貢献。見事ラストマッチで300試合出場を果たした)。

「止まらない」を支える技術

 さて、今回はジョアン・フェリックスです。100億円を超える移籍金でベンフィカからアトレティコにやって来たポルトガルの逸材ですね。技術と創造性があるセカンドトップタイプで、縦への推進力がすごくて、サイズもあるのでカカーを彷彿とさせる選手です。

 彼のスキルでピックアップしたのが「エリア内のオフ・ザ・ボールの動き」ですね。普通、エリア内でラストパスやシュートをしたら止まってしまうことが多い。別にこれはさぼっているわけではなくて、人が密集していてスペースがないので動ける場所がないんです。ただ、フェリックスはパス&ゴーだったり、シュートした後も常にスペースを狙って動き続けていることに注目してほしいです。

 どうしてこれができるかと言えば、1つ目は頭の回転の速さ。常に首振りをしていて味方と敵とスペースを把握しているので、判断が速くてプレーに迷いがない。無駄な動きも全然なくて、ドタバタ感がない。パスやシュートの使い分けも的確だと思います。

 2つ目は自分の体を操作するコーディネーション能力と瞬間的なスピードです。体の動きがすごく滑らかで、頭で描いたイメージに判断と技術がシンクロしていますね。あと初速がすごく速くて、2、3人の間を抜いていくプレーができます。動きの中で急に止まるストップの能力も高くて、「止まれる」ので相手の逆を突けます。

昨季のリーガ開幕節ヘタフェ戦、ハーフウェイライン手前からドリブルを開始したフェリックスは、一気に3人を突破してペナルティエリア内へ。一度トップスピードに乗れば、止める術はファウルしかなくPKを奪取。アトレティコでのデビュー戦から大器の片鱗をのぞかせていた

……

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Profile

浅野 賀一

1980年、北海道釧路市生まれ。3年半のサラリーマン生活を経て、2005年からフリーランス活動を開始。2006年10月から海外サッカー専門誌『footballista』の創刊メンバーとして加わり、2015年8月から編集長を務める。西部謙司氏との共著に『戦術に関してはこの本が最高峰』(東邦出版)がある。

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