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ハットトリックの珍記録が続々と誕生。試合球の行方は千差万別

2022.04.29

 今季の欧州サッカー界は、ハットトリックに恵まれたシーズンと呼ぶことができるだろう。

通算60回目、史上最年長、GKが達成…

 マンチェスター・ユナイテッドでは、ポルトガル代表FWクリスティアーノ・ロナウド(37歳)がキャリア通算60回目のハットトリックを達成。30歳までに30回、30歳以降に30回という偉大な記録を打ち立てた。ロナウドは30歳以降のハットトリックだけで、ルイス・スアレス、セルヒオ・アグエロ、ズラタン・イブラヒモビッチなどのキャリア通算ハットトリック数を超えているという。

 UEFAチャンピオンズリーグでは、レアル・マドリーのFWカリム・ベンゼマがラウンド16パリ・サンジェルマン戦に続き、準々決勝チェルシー戦でも1試合3ゴールを叩き出した。34歳109日でのハットトリックはCL史上最年長記録である。

 今年2月には、ギリシャ4部リーグでGKがハットトリックを達成するという快挙が生まれた。パブロス・メラスというクラブに所属する37歳のGKグリゴリス・アタナシオウは、3本のPKを決めてハットトリックを達成。リーグ戦でGKがハットトリックを決めるのは、1999年のパラグアイのホセ・ルイス・チラベルトに次いで史上2度目と言われている。

 4月9日には、PSGのキリアン・ムバッペネイマールがクレルモン戦でそれぞれ3ゴールずつを決めた。欧州5大リーグにおいて、1つの試合で同チームの2選手がハットトリックを決めたのは、2019年10月のレスター(ジェイミー・バーディ、アヨセ・ペレス)以来のこと。ちなみに、PSGが6-1で勝利したのに対し、3年前のレスターは敵地でサウサンプトンに9-0の大勝。イングランド・トップリーグ134年の歴史において、アウェイチームにおける歴代最大の勝利だった。

ボールは持ち帰るのが通例

 そんなハットトリックだが、サッカー界ではハットトリックを決めた選手が試合球を持ち帰る伝統がある。果たして全員が無事にボールを持ち帰れたのだろうか? 最も心配なのは、同じ試合でハットトリックを達成してしまったムバッペとネイマールだ。しかし、今は“マルチボールシステム”を採用するケースが多く、PSGの二人は喧嘩することなく、ボールを1つずつ仲良く持ち帰っている。

 一方で、今月16日のノリッジ戦で自身通算60回目のハットトリックを達成したロナウドは、同試合で初めてベンチ入りした17歳のアレハンドロ・ガルナチョにマッチボールを手渡した。単に控え室まで持ち帰って欲しかっただけかもしれないが、ファンはSNS上で「感動」「優しい」とロナウドの“神対応”を称えた。

 ハットトリックを決めたら試合球にチームメイトからサインをもらい、記念品として持ち帰ることが定着しているが、不慣れな選手は持ち帰ることを忘れそうになるようだ。2019年10月のバーンリー戦でハットトリックを達成したチェルシーのクリスティアン・プリシッチは、それがプロキャリア初のハットトリックだったため「ボールを持ち帰るのを忘れかけたけど、チームメイトが助けてくれた!」と明かし、何とか無事に記念品を持ち帰ったことを報告した。

ルーカスとボールの関係性

 だが、思わぬ敵が立ちはだかることもある。2015年、当時PSGに所属していたズラタン・イブラヒモビッチは、リーグ戦でハットトリックを達成して試合後に審判からボールを受け取ろうとしたのだが、断られてしまったという。後にトニー・シャプロン主審は「イブラヒモビッチは私の元へ来て、指を鳴らして『ボール』と言ったんだ。私はいつも自分の娘に『プリーズ』と言うように指導している」とボールを渡さなかった理由について説明した。

 それでもズラタンは試合後にマッチボールを手に入れたようで、シートベルトを着けて大事そうに試合球を運ぶ写真を自身のインスタグラムに投稿した。

 そんな中で、最もマッチボールと仲良く過ごした選手は、トッテナムのFWルーカス・モウラだろう。同選手は、2019年5月のCL準決勝2ndレグのアヤックス戦で、スパーズをクラブ史上初のCL決勝に導くハットトリックを達成。以来、その時の試合球をずっと大事にしているようで、試合の1年後にアップされたスポーツ専門サイト『Bleacher Report』の動画の中で、ルーカスはボールに食事を与えたり、歯磨きさせたり、一緒にカードゲームをしたりしているのだ!


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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