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永遠のテーマに決着? ベテランチームvs若手チーム、勝つのは?

2021.10.14

 チーム作りの基本はバランスだろう。攻守のバランス、左右のバランス、高さのバランス。そして何より経験値のバランスが肝になる。「若手とベテランがうまく入り混じっている」と胸を張る監督のインタビューを何度見てきたことだろうか。

 もちろんバランスは重要だ。しかし、仮にどちらかしか選べないとしたらどうだろうか。若手とベテランが対決したら、果たしてどちらに軍配があがるのか? そんな永遠のテーマに答えが出たのかもしれない。スポーツ専門サイト『The Athletic』が、今季プレミアリーグに所属する選手の中から「23歳以下」と「34歳以上」の選手だけで2チームを作って仮想対戦させているので紹介しよう。

3トップで得点王9回

 若手には勢いや活力があるので、打撃戦になれば分があるように思うが、豊富な経験と老獪なプレーでベテランが流れを渡さない、そんな構図になるのだろう。「21歳以下」ならともかく「23歳以下」となれば若手が圧倒的に有利に思えるが、今シーズンのプレミアリーグは有能なベテランぞろいだという。

 まずは「34歳以上チーム」の人選を見てみよう。選択肢が豊富なGKにはリーグ優勝経験もあるレスターの守護神、カスパー・シュマイケル(34歳)が選ばれた。DFラインは衰えの知らない“Mr.万能型”ことジェイムズ・ミルナー(35歳、リバプール)を右に置き、逆サイドは今季から古巣アストンビラに復帰したアシュリー・ヤング(36歳)。そして中央にチェルシーのチアゴ・シウバ(37歳)とレスターのジョニー・エバンスを配置。エバンスはまだ33歳なので、担当記者の勘違いか、それとも「アンダーエイジ枠」で採用されたのか……。

 今回、両チームとも「4-3-3」の布陣が採用されており、中盤は底にマンチェスター・シティのフェルナンジーニョ(36歳)が構え、インサイドハーフにはマーク・ノーブル(34歳/ウェストハム)とジョアン・モウティーニョ(35歳/ウォルバーハンプトン)が選出された。想像するだけで老獪な試合運びで、敵にペースを渡さないチームになりそうだ。

 3トップの人選に関しては議論の余地なし。左からエディンソン・カバーニ(34歳/マンチェスター・ユナイテッド)、ジェイミー・バーディー(34歳/レスター)、クリスティアーノ・ロナウド(36歳/マンチェスターU)を配置。3人合わせて欧州5大リーグの「得点王9回」という強力な3枚がそろった。

ベテランチームの前線の一角を占めるロナウド。カバーニ、バーディーとの3トップは超強力だ

有望株でチームを構成

 対する「23歳以下チーム」は最終ラインが少し不安だ。GKのイラン・メリエ(21歳/リーズ)と右SBリース・ジェイムズ(21歳/チェルシー)は申し分ないが、左SBラヤン・アイ・ヌーリ(20歳/ウォルバーハンプトン)とCBに入るキ・ヤナ・フーフェル(19歳/ウォルバーハンプトン)やマーク・グエーイ(21歳/クリスタルパレス)ではベテランの3トップを抑えるのは難しいだろう。

 経験値が求められる中盤の底も人材不足だ。これについて『The Athletic』の記者は「若い子からすれば、中盤をパトロールするのは格好悪いのかもしれない。今の子はTikTokやハンドスピナー、ポケモンで忙しいからね」と冗談を交えて理由を説明している。

 結局、中盤はブカヨ・サカ(20歳/アーセナル)、フィル・フォーデン(21歳/マンチェスターC)、カーティス・ジョーンズ(20歳/リバプール)というイングランドの有望株3名をフラットで並べた。

 3トップも5年後のイングランド代表を見ているような、ジェイドン・サンチョ(21歳/マンチェスターU)、メイソン・グリーンウッド(20歳/マンチェスターU)、そしてエミール・スミス・ロウ(21歳/アーセナル)という国内のタレントで構成されることになった。

試合は一方的な展開に?

 両チームが出そろったところで肝心の試合内容だが、メンバーを見れば一目瞭然かもしれないが、ベテランチームに一日の長がある。若手チームは中盤から前の攻撃的な才能が躍動するかもしれないが、やはりベテランチームの3トップと若手チームの最終ラインのマッチアップは一方的になる可能性がある。

 記者も「猫がネズミを捕まえる際にすぐに殺さず、いたぶり続けるような酷い展開にもなりかねない」と危惧する。

 というわけで今回は「34歳以上チーム」に軍配が上がるようだが、少し不公平に感じるのは筆者だけだろうか。『The Athletic』の記者は「23歳以下」としながら、選んだ若手は全員21歳かそれ以下なのだ。不安定とされた最終ラインだって、イブラヒマ・コナテ(22歳/リバプール)、そして何より日本代表DF冨安健洋(22歳/アーセナル)が入れば見違えるはずなのだ。

若手チームの最終ラインにはアーセナルで活躍中の冨安健洋を推したい

 若手とベテランの対決で分かったことは、どんなチームにしろ、選手を選ぶ「監督が大事」ということだ。

ベテランチーム[4-3-3]:
GK=ピーター・シュマイケル(34歳/レスター)
DF=アシュリー・ヤング(36歳/アストンビラ)、ジョニー・エバンス(33歳/レスター)、チアゴ・シウバ(37歳/チェルシー)、ジェイムズ・ミルナー(35歳/リバプール)
MF=ジョアン・モウティーニョ(35歳/ウォルバーハンプトン)、フェルナンジーニョ(36歳/マンチェスターC)、マーク・ノーブル(34歳/ウェストハム)
FW=エディンソン・カバーニ(34歳/マンチェスターU)、ジェイミー・バーディー(34歳/レスター)、クリスティアーノ・ロナウド(36歳/マンチェスターU)

若手チーム[4-3-3]:
GK=イラン・メリエ(21歳/リーズ)
DF=ラヤン・アイ・ヌーリ(20歳/ウォルバーハンプトン)、キ・ヤナ・フーフェル(19歳/ウォルバーハンプトン)、マーク・グエーイ(21歳/クリスタルパレス)、リース・ジェイムズ(21歳/チェルシー)
MF=ブカヨ・サカ(20歳/アーセナル)、フィル・フォーデン(21歳/マンチェスターC)、カーティス・ジョーンズ(20歳/リバプール)
FW=ジェイドン・サンチョ(21歳/マンチェスターU)、メイソン・グリーンウッド(20歳/マンチェスターU)、エミール・スミス・ロウ(21歳/アーセナル)


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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