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EURO2020閉幕。英国メディアが発表した“もう1つのアウォード”

2021.07.16

 イタリアの53年ぶりの優勝で幕を閉じたEURO 2020。大会最優秀選手(ゴールデンボール)にはイタリアを頂点に導いた守護神のジャンルイジ・ドンナルンマが選ばれたが、表彰されるべき選手は他にもいたはずだ。

 ということで、スポーツ専門サイト『The Athletic』が独自に選出した「EURO 2020のもう1つのアウォード」を紹介しよう。

不安顔のモラタ、時空を歪めたベンゼマ

 「もう1人の大会MVP」に選出されたのは、番狂わせを起こしかけたハンガリー代表のFWサライ・アーダームだ。偉大な選手たちが才能を発揮する中、クラブレベルではあまり注目されない選手にもスポットライトが当たるのがこういう国際大会だ。ということで、ドイツを敗退に追いやりかけたハンガリー代表の主将が選ばれた。

 「大会ベストゴール」はクロアチア代表MFルカ・モドリッチのスコットランド戦での右足アウトサイドでの芸術的なゴール、「大会ベストバウト」はクリスティアン・エリクセンのアクシデントを乗り越えたデンマーク代表が決勝トーナメント進出を決めたグループステージ最終節ロシア戦という妥当な選出になった。

 一方で「心理劇賞」に選ばれたのはスペインのFWアルバロ・モラタだ。『The Athletic』は同選手について「最も不可思議、もしくは最も興味深い」選手と批評し、実績があるのに「誰の目にも不安そうに見える」と指摘する。準決勝のイタリア戦では見事なゴールを決めながら、PK戦になると「誰もが絶対に外すと予想したはず」と説明し、「矛盾の塊だからこそ、特別な選手」と選考理由を締めくくった。

 「時空を歪めた賞」にはフランス代表のカリム・ベンゼマが選出された。選考理由は、6年ぶりに代表に選出されて計4ゴールを叩き出したからではない。グループステージ最終戦のポルトガル戦で、時空を歪める離れ業をやってのけたからだ。

 ベンゼマは、前半のアディショナルタイムにPKを決めると、後半の立ち上がりにもネットを揺らした。その2つのゴールのタイムは「45+2」と「47」と表記されているが、実際は2つとも「46分44秒」にあたる時間生まれている。同じ秒数に2得点という奇跡を起こしたのである。

独自目線の賞も発表

 「私たちは君と同じ賞」には、ラウンド16のフランス戦でのスイス・ファンが選ばれた。1点ビハインドで迎えた89分23秒には絶望的な表情のスタンドの男性ファンが映し出されたが、その95秒後、同じファンが上半身裸でマリオ・ガブラノビッチの同点ゴールに歓喜していたのだ。

 「タクティカル・ピリオダイゼーション賞」には北マケドニアが選ばれた。タクティカル・ピリオダイゼーションとは練習法の理論の1つで、常に試合の戦術に結びつく練習を普段から行うこと(だと思う)。ややこしい話だが、「一言で表せば常にボールを使用すること」と『The Athletic』は説明し、それを極限まで取り入れたのが北マケドニアとして、同チームのウクライナ戦でのウォーミングアップの動画を紹介した。「試合には負けたけど、楽しそうだよね」との論評だ。

 「リモコン賞」は他に選択肢がないと思うが、やはり開幕戦のキックオフ前にボールを運んできたラジコンカーが選ばれた。『The Athletic』の記者はこのラジコンカーが大のお気に入りだったようで、開幕戦の後に準決勝まで封印されていたことに憤慨。「6月11日から7月6日までラジコンカーはどにあったんだ。UEFAに情報開示を求める!」と訴えている。

 最後に「お母さん、あれはどういう意味? 賞」には決勝戦でのワンシーンが選ばれた。「Mrsグリーリッシュ」と書かれたユニフォームを掲げる女性ファンが画面に映し出されたのだが、問題はその背番号にあった。「69」。これには大半の大人が笑ってしまったと思うが、子供と一緒に試合を見ていた親御さんは気まずかっただろう。子供に「グリーリッシュは背番号7だよ。なんで69なの?」と聞かれて言葉に詰まったはずだ。

 ちなみに、この女性は一夜にして有名人になり、英紙『Manchester Evening News』でインタビューまで受けることになった。


Photo: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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