
W杯王者のサプライズ選出だった。“セックステープ事件”疑惑が持ち上がった2015年10月以来、約5年半ぶりとなるカリム・ベンゼマ(通算81試合27得点)のフランス代表復帰。6月11日に開幕するEURO2020に向けて、33歳の“問題児”をメンバー入りさせた背景には何があったのか? デシャン監督やル・グラエ連盟会長、そして本人のインタビューから徐々に内情が明らかになってきた。
「諦めないで頑張ってきてよかった!」
5月18日20時20分、夜のニュース番組の中で、ディディエ・デシャン監督が来たるEURO2020に出場するフランス代表のメンバーを生発表した。GKから始まり、ストライカーの番になって、モナコ所属のウィサム・ベン・イェデルの名前がまず最初に読み上げられた後、指揮官は「カリム・ベンゼマ」の名を呼んだ。その瞬間、多くのお茶の間で「えーーーっ!?」という声が上がったことであろう。
その日は朝からソワソワして過ごしていたというベンゼマは、マドリッドの自宅で、テレビの前で電話口の両親とともに発表を待った。「あっという間の出来事だった」というその瞬間、とてつもない喜びとともに「諦めないで頑張ってきてよかった!」という思いが込み上げてきたそうだ。娘を抱きしめた後は、鳴り止まない電話の対応に追われたという。
当日の朝の『レキップ』紙は「ベンゼマの復帰もあったりして?」と書いていたが、まさか現実になると思っていた人は代表番記者の中にもおそらくほとんどいなかっただろうから、これは本当に、サプライズだった。
会長は「いつも」、監督は「半年前から」
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Profile
小川 由紀子
1992年より欧州在住。96年から英国でサッカー取材を始め、F1、自転車、バスケなど他競技にも手を染める。99年以来パリに住まうが実は南米贔屓で、リーグ1のラテンアメリカ化を密かに歓迎しつつ、ブラジル音楽とカポエイラのレッスンにまい進中。