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「戦術モドリッチ」のクロアチア。“信じる者”は救われるのか?

2021.06.25

EURO2020では大会前からチームの完成度を不安視されていたクロアチア。案の定、グループステージ初戦のイングランド戦は敗北、2戦目のチェコ戦はドローと危機的状況に。しかし最終節、チームを救ったのはこの男だった。35歳にして大会全試合フル出場、ダリッチ監督の絶大な信頼を受けたモドリッチが、今まで一度も勝てなかったスコットランド撃破の立役者になった。果たしてこれで眠れる強国は覚醒したのか。激動だったクロアチアのグループステージを長束恭行氏が総括する。

 ルカ・モドリッチのトレードマークといえば、少年時代から磨き続けた右足のアウトサイドキックだ。62分、ゴール前を8人で固めるスコットランド守備陣を揺さぶるべくアウトサイドキックで大外に送ったのち、3人を経由して再びボールはボックス外のモドリッチへ。相手GKの手が届かないコースへ狙いすまし、再びアウトサイドキックを使用したミドルシュートは完璧な軌道を描いた。これぞマエストロ(巨匠)の妙技。試合終了のホイッスルが鳴ると拳を突き上げて咆哮し、ズラトコ・ダリッチ監督を見つけて激しく抱き合うと「Tako je!」(その通り!)と何度も叫んだ。

EURO2020公式Twitterも「熟練技巧・正確無比・冷静沈着」と形容した、モドリッチらしい三拍子がそろった芸術弾

 試合直後にマイクを向けられたキャプテンは、興奮を隠せないまま一気に思いの丈を吐き出した。……

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EURO2020クロアチアズラトコ・ダリッチルカ・モドリッチ

Profile

長束 恭行

1973年生まれ。1997年、現地観戦したディナモ・ザグレブの試合に感銘を受けて銀行を退職。2001年からは10年間のザグレブ生活を通して旧ユーゴ諸国のサッカーを追った。2011年から4年間はリトアニアを拠点に東欧諸国を取材。取材レポートを一冊にまとめた『東欧サッカークロニクル』(カンゼン)では2018年度ミズノスポーツライター優秀賞を受賞した。近著に『もえるバトレニ モドリッチと仲間たちの夢のカタール大冒険譚』(小社刊)。

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