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「戦術的ピリオダイゼーション」の背景。 複雑系への理解を導く「イワシの群れ」

2020.03.28

戦術的ピリオダイゼーション vs Japan’s Way #7】 山口遼(東大ア式蹴球部監督)×平野将弘(FC大阪ヘッドコーチ)×荒岡修帆(RBライプツィヒU-9コーチ)前編 【座談会】

本特集のテーマの1つとなっているトレーニング理論「戦術的ピリオダイゼーション」だが、現場に立つ指導者はこの難解な理論をどう解釈し実践すべきだろうか? 日本ウェールズドイツでそれぞれ現場を知り、監督、コーチ兼アナリスト、 フィジカルコーチと立場が異なる若手指導者3人を集め、議論を通じて戦術的ピリオダイゼーションの謎を紐解いてもらった。 前編では、その背後に潜む「複雑系」に迫る。

「戦術的」が誤解を招く?

――まずは自己紹介からお願いします。

山口「山口遼です。選手としてジュニアユースから(鹿島)アントラーズでプレーしていたんですけど、高校2年生の最後か3年生の最初に辞めて一浪して東大(東京大学)に行きました。東大のア式蹴球部でまた選手をやっていましたが、4年生から学生コーチという形で指導者キャリアをスタートしました。指導者として3年目となる今年、東大ア式蹴球部の監督と東京ユナイテッドのコーチに就任しています」


荒岡「荒岡修帆といいます。高校まで選手としてサッカーをプレーした後、大学の理学療法学科に進んだのですが、2年経ったところで休学してドイツに行きました。今はライプツィヒ大学のスポーツ科学部で勉強しています。その傍らでRBライプツィヒのU-9でのサッカー指導やパーソナルトレーニングもしています」


平野「平野将弘です。中学卒業後にイギリスへ行って日本人学校でFAライセンス(イングランドサッカー協会公認の指導者資格)を取得できるコースを受講しました。レベル1とレベル2を取ったんですけどお金がなかったので、一度日本に帰って英語の勉強とバイトをしながら準備して、1年後にサッカーの指導が学べるサウス・ウェールズ大学に入学しました。トッテナム(ジョゼ・)モウリーニョの右腕を務めるジョアン・サクラメントと同じ大学ですね。ウェールズサッカー協会やカーディフ、下部リーグのクラブで分析官やアシスタントコーチとして活動しながらUEFA-Bライセンスを取得し、大学を卒業して日本に帰ってきました(編注:その後、FC大阪のヘッドコーチに就任)」


――サクラメントは戦術的ピリオダイゼーション発祥の地であるポルトガルの出身ですよね。

平野「今、ウェールズサッカー協会のテクニカルディレクターを務めているデイビッド・アダムスは、スワンジーやエバートンでヘッドオブコーチング、ミドルスブラではギャリー・モンクの右腕として働いていて、当時からすでに戦術的ピリオダイゼーションをイングランドで応用していました。サクラメントは彼から強く影響を受けていて、自分で研究しながら書いた論文をモウリーニョに見せたところ気に入られたらしいです」

トッテナムでモウリーニョの副官を務めているサクラメント。前所属のリールでは奇才マルセロ・ビエルサの下で働いたことも


――そういう経緯があってモウリーニョのトッテナム監督就任と同時にアシスタントコーチに抜擢されたんですね。そのウェールズでは戦術的ピリオダイゼーションが浸透しているのでしょうか?

平野「使っているチームと使っていないチームがあって、私は7部のマーサタウンFCのトップチームとU-19で分析官をやっていたんですけど、どっちでも採用されていなかったです。カーディフの女子チームも私がいた昨季は使われてなかったです。でも、みんな知ってはいるんですよね」


山口「スペインでも講習会でやるにはやるらしいから、1つの手段としては知られてますよね」


荒岡「ドイツでは、ドイツサッカー連盟が出している雑誌で戦術的ピリオダイゼーションが取り上げられたことがあって、そこではゲームモデルの構築からトレーニングプラン作成までの一連の流れが紹介されていました。ちなみに質問なんですが、そもそも戦術的ピリオダイゼーションって何か定義があったりするんですか?」

“戦術ブロガー”からボルシアMGのコーチまで上り詰めたレネ・マリッチを筆頭に、“ラップトップコーチ”たちが寄稿していることでも知られるドイツサッカー連盟発行の雑誌『Fußballtraining』


山口「かなり広範な理論ですが、定義はあります。まず起源から説明すると『複雑系』という分野から始まっています。『複雑系科学』や『システム思考』を基に、複雑なサッカーをどう扱っていくか。その一部がすでに広まっているゲームモデルという考え方で、それに付随するトレーニング理論まで含んでいるのが戦術的ピリオダイゼーション。かなり広義なんですけど、部分的に活用することも可能です。日本だとゲームモデルだけが活用されることが多いですね」......

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戦術的ピリオダイゼーション vs Japan's Way ラインナップ

Profile

足立 真俊

1996年、岐阜県出身。生まれもっての“人見知り”を克服するためにアメリカにあるウィスコンシン州立大学でコミュニケーション学を専攻。学業の傍らで趣味として始めた翻訳活動がきっかけとなり、翻訳を通じたサッカーに関する情報発信を模索中。2019年5月、結局“人見知り”のままfootballista編集部の一員に。