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ジダン監督がたどり着いたのは、選手の顔ぶれ次第で変幻自在のスタイル。懸念だった得点力はSBの“FW化”で分担

2020.10.10

 2019-20のリーグ優勝は、攻守の団結の固さの証である。カリム・ベンゼマの21点を筆頭に11点のセルヒオ・ラモス以下の計21人が得点を挙げ、リーグ最少の25失点は全員がプレスし背走することで成し遂げたものだ。ジダンは定評のあった人心掌握術を、選手を意のままに動かすことに用いて戦術家となった。[4-3-3]、[4-4-2]、[3-5-2]といったシステムを使い分けただけではなく、同じ並びでも中身はMF5人だったり、純粋なウインガー2枚だったり、ウインガー1枚+ MF4枚だったりと、選手の顔ぶれを変えることでチームの機能を変化させ、同時に酷使による体力の消耗を避けた。

コロナ後の特別ルールを最大限活用

 選手が適応した後の采配は変幻自在だった。

 MF5人の驚きの顔ぶれでスタートし、ポジションチェンジとショートパスのサッカーで相手を翻弄して先制。後半、それに対応され始めると、残り30分でMF2枚に代えてウインガー2枚を投入、ドリブルによる単独打開に頼るオーソドックスな縦に速いスタイルに変更して止めを刺す、なんてこともしてみせた。過密日程と過酷な気象条件下での2回の給水タイムと5人交代制を最も有効に使ったのは、間違いなくジダンだった。この点、戦術的にも人選的にも変化せず心身ともに消耗していったバルセロナとは雲泥の差があった。……

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ジネディーヌ・ジダンレアル・マドリー戦術

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。

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